Li-Fraumeni症候群とその類縁症候群の実態調査及び悪性腫瘍の発症予防法と治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201128225A
報告書区分
総括
研究課題名
Li-Fraumeni症候群とその類縁症候群の実態調査及び悪性腫瘍の発症予防法と治療法の確立に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-069
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
舩戸 道徳(岐阜大学医学部附属病院小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 小島勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 鶴澤正仁(愛知医科大学 医学部)
  • 水谷修紀(東京医科歯科大学)
  • 金子英雄(国立病院機構長良医療センター 臨床研究部)
  • 長船健二(京都大学 iPS細胞研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、Li-Fraumeni症候群(LFS)とLi-Fraumeni様症候群(LFL)に関して
① 本邦での実態調査
② 正確な診断システムの構築
③ 発癌予防及び癌治療に関する指針の確立
④ 患者家族の支援システムの確立
の4つを目指し、本症候群のQOLや予後の改善に繋げることである。
研究方法
①本邦での実態調査
小児科専門医研修施設の517小児科と日本小児外科学会認定施設の90小児外科、さらには都道府県がん診療連携拠点病院51施設及び地域がん診療連携拠点病院338施設のLFS関連悪性腫瘍(肉腫,乳癌,脳腫瘍,副腎皮質癌,または白血病)を治療すると考えられる2309診療科を対象にアンケート形式で実態調査を行う。
②正確な診断システムの構築
患者及びその家族を対象にTP53遺伝子の解析をする。
③発癌予防及び癌治療に関する指針の確立
指針の確立に向けて、患者解析と基盤研究を行う。基盤研究ではLFS患者から疾患特異的iPS細胞を樹立し、悪性腫瘍発症の試験管内モデルを構築する。
④患者家族の支援システムの確立
上記の全2916診療科を対象に遺伝に関する専門医の有無と癌治療の専門カウンセラーの有無をアンケート調査する。さらに、本症候群の患者のカウンセリングの状況を調査し、指針の作成に繋げる。
結果と考察
①本邦での実態調査
全国2916診療科中1486診療科(回答率50.9%)より回答があり、これまでにLFS21家系とLFL17家系が診断されていた。このうち現在までにLFS2家系とLFL5家系の詳細な解析を行うことが可能であった。発端者の発癌年齢は1~20歳までと広範囲で、癌種は3例が副腎皮質癌、4例が肉腫であった。家系内の解析では40歳までに約45%、70歳までに約90%の人が悪性腫瘍を発症していた。
②正確な診断システムの構築
TP53遺伝子の解析においてはLFS1家系とLFL4家系でいずれもDNA結合サイトの異常を認めたが、現在も生存する発端者2例はスプライス変異であった。
③発癌予防及び癌治療に関する指針の確立
LFLの患者から疾患特異的iPS細胞の樹立を開始した。
④患者家族の支援システムの確立
遺伝に関する専門医と癌治療の専門カウンセラーの調査においては、双方が在籍すると答えた施設は都道府県がん診療拠点病院のわずかに34%であった。
結論
今回の調査により本症候群とその類縁症候群の高い悪性腫瘍の発症リスクと極めて予後不良であることを再確認した。その一方で、本症候群の患者家族の支援体制の早急な整備が必要であることを痛感した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128225C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1991年から2013年までに日本人39家系にTP53変異が同定され、家族歴にて132名の家系員に183件の癌の発症を認めた。うち50名は生殖細胞系列のTP53変異が確認された。50名の平均初発癌年齢は21.3歳で、これまでに93件の癌が発症し、内訳はそれぞれ、骨肉腫17、胃癌10、副腎皮質癌9、肺癌9、乳癌9、造血器腫瘍8、脳腫瘍6、大腸癌5、軟部肉腫4、肝腫瘍3件等であった。これらの結果を国際比較したところ、本邦では乳癌が少なく、胃癌や肺癌、肝腫瘍が多いことが判明した。
臨床的観点からの成果
現在までのところ、TP53遺伝子検査が発癌リスクの軽減に繋がるというエビデンスはなく、TP53遺伝子保有者の標準化されたサーベイランスの方法もない。研究班では、これまでの本研究の成果を基に、最近報告されたトロント小児病院のサーベイランスと本邦のがん検診を参考にして本邦用のTP53遺伝子保有者のためのサーベイランス・プロトコールを作成した。すでに1施設において、倫理審査委員会の承認を得て通院患者1名に施行している。
ガイドライン等の開発
全国2309診療科にアンケートを送付し、Li-Fraumeni症候群の支援体制を調査した。遺伝に関する専門医と癌治療の専門カウンセラーが共に在籍する病院は、都道府県がん診療拠点病院においてもわずか34%の病院であった。こうした現状を踏まえて、今後、この20年間に行われてきたLi-Fraumeni症候群の家系支援の困難性や遺伝カウンセリングのあり方などを分析し、診断・診療ガイドラインの策定を目指している。
その他行政的観点からの成果
Li-Fraumeni症候群患者1例(20代女性、TP53遺伝子p.Gly245Ser変異同定済)から同意のもとに皮膚線維芽細胞を作製し、エピゾーマルベクターによる初期化誘導6因子(OCT3/4. SOX2, KLF4, L-MYC, LIN28, p53shRNA)の遺伝子導入にてiPS細胞株を樹立した。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
第54回日本小児血液・がん学術集会 第19回日本家族性腫瘍学会学術集会 第117回日本小児科学会学術集会 第56回日本小児血液・がん学術集会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
舩戸道徳、近藤直実
Li-Fraumeni症候群の新知見
癌と化学療法 , 40 (2) , 148-153  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2018-07-04

収支報告書

文献番号
201128225Z