文献情報
文献番号
201128219A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性慢性膿皮症に関する調査研究と病因の解明
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治・一般-063
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
清水 宏(北海道大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 秋山 真志(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 乃村 俊史(北海道大学 北海道大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性膿皮症は、頭頸部、腋窩、臀部、外陰部などに、慢性再発性に細菌感染による炎症性病変と瘢痕、瘻孔形成を繰り返す難治性疾患である。本症のほとんどは孤発性に発症するが、一部の症例では常染色体優性遺伝し、家族性に発症する(家族性慢性膿皮症)。本症の病因はこれまで不明であったが、最近、中国人家系の遺伝子解析により、γセクレターゼ遺伝子変異により発症することが明らかになった。本研究の目的は、本邦における慢性膿皮症と同遺伝子変異の全容を解明することである。
研究方法
日本全国の主な皮膚科診療施設、形成外科診療施設を対象に、家族性慢性膿皮症患者についてのアンケート調査を行い、末梢血の採取を依頼した。患者から遺伝子検査への十分な同意が得られた後にDNAを抽出し、γセクレターゼ遺伝子解析を行った(9家系)。γセクレターゼ遺伝子は、presenilin enhancer-2遺伝子、nicastrin遺伝子、presenilin-1遺伝子、presenilin-2遺伝子、anterior pharynx defective 1a遺伝子、anterior pharynx defective 1b遺伝子から成っており、それぞれの遺伝子のすべてのエクソン領域、エクソンイントロン境界領域についてシークエンス解析を行った。また、同様の方法で、家族歴を持たない孤発例の慢性膿皮症についてもγセクレターゼ遺伝子変異解析を施行した(18人)。
結果と考察
家族性慢性膿皮症の2家系にnicastrin遺伝子変異(新規ナンセンス変異とc.582+1delG)を認めた。また、それらの変異について正常コントロール50人のDNAをスクリーニングしたが、いずれの変異も正常コントロールでは1例も認めなかった。残りの患者にはγセクレターゼ遺伝子に病的変異を認めなかった。
結論
今回の我々の研究により、日本人においても家族性慢性膿皮症は稀ではない頻度で存在し、その一部がγセクレターゼ遺伝子変異で発症することが明らかになった。一方、慢性膿皮症の家族例の一部と孤発例ではγセクレターゼ遺伝子変異を認めなかった。このことは、本症ではγセクレターゼ遺伝子以外の病因遺伝子が存在する可能性を示唆しており、今後の症例の蓄積と遺伝子解析により、新たな病因遺伝子が同定されるものと期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
-