文献情報
文献番号
201128217A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉性異形成胎盤の臨床的・分子遺伝学的診断法の開発を目指した基盤研究
課題番号
H23-難治・一般-061
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
副島 英伸(国立大学法人佐賀大学 医学部 分子生命科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 片渕 秀隆(熊本大学大学院医学薬学研究部産婦人科学)
- 大場 隆(熊本大学大学院医学薬学研究部産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
間葉性異形成胎盤(placental mesenchymal dysplasia, PMD)は、超音波断層法にて胎盤の嚢胞状変化を呈するが、組織学的にはトロホブラストの異常増殖を認めない形態異常である。早産、胎児発育不全、胎児死亡を高率に合併するほか、奇胎妊娠と診断されると無用の人工流産を招く。本研究では、系統的臨床病理学的解析および網羅的ゲノム・エピゲノム解析を行うことにより、原因遺伝子を同定し、臨床的診断と分子遺伝学的診断開発のための基盤確立を目的とした。
研究方法
2000年から2010年の間に国内で経験され、論文あるいは学会報告された症例について論文検索を行った。検索した症例について、各医療機関に情報提供を依頼し、その臨床像を検討した。収集した症例のインプリント遺伝子CDKN1C免疫染色、ゲノム・エピゲノム解析を行った。
結果と考察
収集した24例の系統的臨床病理学的解析から、2008年以降報告数が増加しており、疾患概念が徐々に周知されていることが示唆された。臨床的特徴として、これまでに報告と同様に、女児に多く、早産、SFD、IUFD、BWSとの強い関連がみられた。96%の症例で胎盤胎児重量比が平均値+1.5SDを超えており、PMDを疑うよい指標となりえることが考えられた。一方、21%の症例で胞状奇胎様の画像所見が認められず、診断基準および遺伝子診断の重要性が明らかとなった。免染では、基本的に絨毛の間質細胞で陰性、細胞性栄養膜細胞層で陽性像を呈した。ゲノム解析では、ゲノムワイドpatUPDがPMD発生に関与することが示唆されたが、原因とまでは断定できなかった。一方、エピゲノム解析でメチル化異常を示す有力候補遺伝子15個を見いだした。
結論
PMD症例の臨床的特徴を明らかにした。女児に多く、早産、SFD、IUFD、BWSとの関連が強いこと、胎盤胎児重量比がPMDの指標になる可能性があることがわかった。一方で、胞状奇胎様の画像所見が認めらない症例が21%存在することから、診断基準および遺伝子診断の重要性が明らかとなった。ゲノム解析では、ゲノムワイドpatUPDがPMD発生に関与することが示唆されたが、原因とは断定できなかった。しかし、エピゲノム解析でメチル化異常を示す有力候補遺伝子を見いだした。今後の症例解析を行うことにより原因遺伝子を同定できる可能性が高いと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2013-03-10
更新日
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