文献情報
文献番号
201128216A
報告書区分
総括
研究課題名
傍シルビウス裂症候群の実態調査と診断基準の作成に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-060
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 光広(山形大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 白石 秀明(北海道大学病院)
- 遠山 潤(国立病院機構 西新潟中央病院)
- 小倉 加恵子(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
- 荒井 洋(森之宮病院 診療部)
- 鳥巣 浩幸(九州大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
傍シルビウス裂症候群は、大脳シルビウス裂周辺の構造異常もしくは機能異常により、構語障害・嚥下困難・上肢優位の痙性麻痺を認めるほか、知能障害やてんかん発作・聴覚処理などを併発する難治性疾患である。基礎疾患として脳形成異常や周産期障害、感染症、脳血管障害、神経変性の他に、特発性のてんかん症候群などがある。本研究では、疾患概念を整理し、疫学調査に耐えうる診断基準を作成し、傍シルビウス裂症候群の患者数と病像を明らかにし、原因や病態に基づいた診断基準を作成する。
研究方法
疾患群の整理のために、既報告のレビューと班員施設の症例の予備調査のデータを基に、班員間の討論を繰り返した。診断基準の作成に当たっては、診断の重複や不足がないように、難病の疫学調査班と共同で作業した。患者実数把握のための一次調査を小児科、神経小児科、神経内科、脳神経外科、リハビリテーション科を対象に層化無作為抽出と患者集積が高い特別階層病院を選択し、合計3947機関に対して行った。また、3月中旬に症例の詳細調査のための二次調査を発送した。疾患概念の普及のために、滑脳症親の会と共催で班会議を行なった。多小脳回症例に対し、高感度融解曲線分析法を用いて変異スクリーニングを行った。
結果と考察
傍シルビウス裂症候群に含まれる疾患を、症状から運動障害主体群とてんかん発作主体群に分け、さらに画像異常の有無と発作の違いから①先天性もしくは後天性両側性傍シルビウス裂症候群、②先天性核上性球麻痺(ウースター・ドロート症候群)、③非定型良性小児部分てんかんABPE、④悪性ローランド・シルビウスてんかんMRSEの4疾患に整理し、それぞれの診断基準を作成した。全体の一次調査回収率は54.3%であった。第一回の班会議には、29家族80名の一般参加が得られ、研究紹介と共に班員による全体の質疑応答と個別相談を行い盛況であった。多小脳回37症例の原因遺伝子解析を行ない、1例でGPR56に疾患原因と考えられる複合ヘテロ接合変異を認めた。ABPEとMRSEは、今回の予備調査では適切な薬剤選択もしくは手術によって一部は治癒可能であることが判明した。
結論
傍シルビウス裂症候群は複数の疾患群で構成される。いずれも頻度が稀であり、疾患の認知度が低い。診断には高精度MRIと脳磁図、遺伝子解析が有効であり、一部は治癒可能である。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
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