グルコーストランスポーター1欠損症症候群の実態と診断治療指針に関する研究

文献情報

文献番号
201128215A
報告書区分
総括
研究課題名
グルコーストランスポーター1欠損症症候群の実態と診断治療指針に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-059
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小国 弘量(東京女子医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 康(東京女子医科大学 小児科)
  • 高橋 悟(旭川医科大学 小児科)
  • 夏目 淳(名古屋大学 小児科)
  • 柳原 恵子(大阪府立母子保健総合医療センター小児神経科、同研究所 免疫部門)
  • 下野 九理子(大阪大学・金沢大学・浜松医科大学連合小児発達学研究科)
  • 藤井 達哉(滋賀県立小児保健医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
GLUT1-DSは抗てんかん薬に対しては治療抵抗性であるが、グルコースに代わりケトン体をエネルギー源として供給するケトン食療法が有効かつ原因療法に近いので早期に開始できれば患者の発作予後、知的予後を大きく改善できる可能性がある。そのため日本人における本症の診断、治療指針を作成する。
研究方法
全国患者数実態調査として小児神経専門医、てんかん専門医が常駐する全国の主要な小児神経科標榜施設、大学病院、小児病院、国立療養所等に臨床調査票を送付し、GLUT1-DS例の患者数の把握と二次アンケート調査を行う。調査項目は、てんかん発症年齢、発作型、発作頻度、脳波所見、食事と発作との関連、食習慣、MRI、SPECT、PET、発達評価、治療内容、発作頻度、発達状況である。
結果と考察
本研究斑の全国実態調査において国内で57例の確定あるいは疑い例を確認しえた。確定例では全例SLC2A1(GLUT1)遺伝子のヘテロ接合性の変異あるいは赤血球3-O- methyl-D-glucose取り込み試験の低下を認めた。57例中33例の臨床所見の詳細を分析し、乳児期の初発症状として発作性異常眼球運動、無呼吸発作、(ミオクロニーを含む)けいれん発作が重要であり、その後、様々なてんかん発作(学童期より欠神発作が増加)、発達遅滞、筋緊張低下、痙性麻痺、小脳失調、ジストニアなどの神経学的異常を呈した。症状は、空腹時や食前に悪化し、食後に改善する特徴があった。髄液糖低値(髄液糖/血糖<0.45)が特徴であった。他の合併症として小頭症、低身長、精神遅滞、周期性嘔吐症や発作性不随意運動を呈した。GLUT1DS患者の臨床症状は多彩であり、必ずしも難治性てんかんのみが主体ではなかった。33例全例でケトン食療法が行われ有意な改善が得られた。早期治療により慢性の脳低血糖状態による後遺症が予防あるいは軽減される事実が明らかになったので、今後、乳児期よりの早期診断体制の整備、早期治療を普及させることが最重要事項と考えられた。
結論
GLUT1DSは乳児期より初発する例が多く、症状は、空腹時、食前に悪化し、食後に改善する特徴があった。髄液糖/血糖<0.45が特徴で、ケトン食療法で有意な改善が得られた。診断と治療指針が出されることにより、適切な早期治療法の介入が促進され、重篤な発達障害に至る小児が減少する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-03-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128215C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で日本国内においてGLUT1DS診断確定ないし疑診例が57例も存在し、潜在的に多くの未診断例があることが示唆された。乳児期より初発する例が多く、神経症状はてんかん発作のみでなく多彩であるが、空腹時、食前に悪化し、食後に改善する特徴があった。髄液糖/血糖<0.45が特徴で、ケトン食療法で有意な改善が得られた。診断と治療指針が出されることにより、適切な早期治療法の介入が促進され、重篤な発達障害に至る小児が減少する可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
乳児期の初発症状として発作性異常眼球運動、無呼吸発作、(ミオクロニーを含む)けいれん発作が重要であり、その後、様々なてんかん発作(学童期より欠神発作が増加)、発達遅滞、筋緊張低下、痙性麻痺、小脳失調、ジストニアなどの神経学的異常を呈することが判明した。症状は、空腹時や食前に悪化し、食後に改善する特徴があった。髄液糖低値(髄液糖/血糖<0.45)が特徴であった。全例でケトン食療法が行われ有意な改善が得られ、早期治療により慢性の脳低血糖状態による後遺症が予防あるいは軽減される事実が明らかになった。
ガイドライン等の開発
1.臨床徴候
乳児期:発作性異常眼球運動を伴う意識減損、チアノーゼを伴う発作、無呼吸発作、ミオクロニー発作性
重症例では筋緊張低下、発達遅滞を伴う
幼児期:空腹時に目立つけいれん発作や意識消失発作、運動性失調で食後に改善
2.検査所見
髄液検査で髄液糖/血糖比<0.45
3.診断確定検査        ↓
SLC2A1(GLUT1)遺伝子検査
赤血球3-O- methyl-D-glucose取り込み試験の低下
4.治療
修正Atkins食の導入
その他行政的観点からの成果
早期治療により正常な発育が期待されるGLUT1-DS患者の実態が明らかになり、治療乳としてのケトンフォーミュラの必要性、小児慢性特定疾患等の医療費補助や政策医療等の医療政策立案上の根拠が得られた。診断と治療指針が作成され、適切な早期治療法の介入が促進されることで、重篤な発達障害に至る小児が減少する。早期治療により後遺症が予防されうることが理解されれば、乳児期よりの早期診断体制の整備、早期治療が普及し、患児の生涯にわたる医療と福祉に要する社会経済学的負担が軽減する。
その他のインパクト
斑会議で患者会との意見交換により患者会との連携の促進がはかられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ito Y, Takahashi S, Kagitani-Shimono K, et al.
Nationwide survey of glucose transporter-1 deficiency syndrome (GLUT-1DS) in Japan
Brain Dev  (2014)
http://dx.doi.org/10.1016/j.braindev.2014.11.006

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-29

収支報告書

文献番号
201128215Z