文献情報
文献番号
201128209A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性後天性全身性無汗症の病態解析及び治療指針の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治・一般-053
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 貴浩(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 )
- 片山 一朗(大阪大学 医学部)
- 朝比奈 正人(千葉大学 医学部)
- 岩瀬 敏(愛知医科大学 医学部)
- 渡邉 大輔(愛知医科大学 医学部)
- 中里 良彦(埼玉医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
特発性後天性全身性無汗症は後天的にほぼ全身の発汗機能が失われる原因不明の疾患である。患者は体温調節に障害を生じ、運動や暑熱環境で容易に熱中症に陥るためQOLが著しく損なわれる。しかしその臨床的特徴は十分には明らかでなく、また診断基準もない。本研究では患者数や症状の特徴を明らかにし、さらに適切な診断基準と治療指針の確立を目指した。
研究方法
皮膚科・神経内科において本疾患の治療に精通した専門医を主体に診療ガイドライン作成委員会を発足させ特発性後天性全身性無汗症診療ガイドラインを作成を試みた。また日本神経内科学会、皮膚科学会に所属する計185施設を対象にアンケート調査を実施。さらに本疾患患者の後ろ向き調査を実施して臨床的特徴、治療経過等を解析した。病態の解明に関わる研究として、患者血清中の抗アセチルコリン受容体(M3)抗体の有無を解析した。
結果と考察
ガイドライン作成委員会にて特発性後天性全身性無汗症の診断基準、重症度分類、治療アルゴリズムなど策定することができた。また疫学調査によって、過去5年間の患者数が145例であること、圧倒的に男性に多いこと、好発年齢が10歳代から30歳代であることなどが明らかになった。さらに臨床所見、経過の詳細な分析から、特発性後天性全身性無汗症患者の約半数にコリン性蕁麻疹の合併がみられたこと、生検組織で半数の症例に汗腺周囲の炎症細胞浸潤が観察されたこと、多くの症例でステロイド全身投与が有効であったものの発症年齢が若い例、コリン性蕁麻疹合併例、発症から治療開始までの期間が長い例では治療後に再燃したり、治療に抵抗する傾向がみられたことなどが明らかにされた。さらに、CHO細胞に機能的なM3受容体を発現するシステムを開発して、12名の特発性後天性全身性無汗症患者の血清中の抗M3受容体自己抗体の有無を測定したところ、1例の陽性患者が確認された。
結論
本疾患の頻度は稀であるが、個々の患者にとっては大きな精神的・肉体的苦痛をともなう疾患である。今回策定された診療ガイドラインにより治療効果に関するエビデンスが明らかになったこと、また臨床的特徴や病態の一部が解明されたことなどにより、今後多くの患者を苦痛から解放することに寄与できると考える。
公開日・更新日
公開日
2013-03-27
更新日
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