二分脊椎の予防指針作成:二分脊椎の病因探索と葉酸情報の伝達システムの研究

文献情報

文献番号
201128206A
報告書区分
総括
研究課題名
二分脊椎の予防指針作成:二分脊椎の病因探索と葉酸情報の伝達システムの研究
課題番号
H23-難治・一般-050
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 厚生(津島リハビリテーション病院泌尿器科)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 博美(愛知教育大学 教育学部)
  • 松尾 拓哉(近畿大学 医学部)
  • 篠崎 圭子(川崎医療福祉大学 医療技術学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
英国から報告された無作為比較試験により、二分脊椎は葉酸内服で防止可能なことが判明した 。本邦における二分脊椎発症の病因を解明し二分脊椎患児を防止するため、二分脊椎の予防指針を立案すること。


研究方法
二分脊椎の病因を探索するため、症例対照研究と、二分脊椎患児を出産した母親の MTHFR(メチールテトラハイドロ葉酸還元酵素)遺伝子多型(677TT=ホモ接合体遺伝子)を調査する。
教育の現場において、葉酸に関する教育がどれほど実施されているか、実施可能か調査する。大学の女学生を対象として、葉酸認知率(葉酸が妊娠で果たす役割の認知)を調べ、教育効果を検討する。若い女性に葉酸サプリメントを内服させ、MTHFRの遺伝子多型に応じた血中濃度の変化を測定する。
結果と考察
1. 症例対照研究により「葉酸サプリメントを内服しないこと」は二分脊椎の発症に有意に相関することが判明した(ロジスティック回帰分析;オッズ比=1.6:95%信頼区間=1.05 - 2.46)。「葉酸サプリメントを併用することなく抗てんかん薬(AED)を内服」することは、二分脊椎の発生と有意に相関した(カイ2検定法、Fisherの直接法;p=0.0394)。
2. 母親115名中の12名(10.4%)がMTHFR 677TTと判明した。遺伝子多型の分布状況はコントロール群のそれと有意差なく(p=0.231)、677TTの遺伝子多型は二分脊椎の発生リスクではない。
3. インターネット上にホームページを開設した( http://yousan-labo,jp/)。日本二分脊椎症協会(患者会)の会員交流会(13都道府県)へ参加し、1000名の患者・家族へ葉酸情報を提供した。
4. 葉酸の授業をしている教諭は、現時点で極めて少ない。教諭養成課程、免許更新時、研修会などで、葉酸に関する情報を教育学部の学生と教諭へ伝えるべきである。
5. 葉酸に関する学習機会を増やすことは、女学生の葉酸認知率上昇に結び付いた
6. 成人女性52名の血清葉酸濃度基準値は3-5 ng/mlと低値であったが、葉酸サプリメントを内服させると有意に上昇した(15-24ng/ml)。ホモ接合体遺伝子型を有する女性でも、葉酸サプリメントの内服は有効である。

結論
二分脊椎の病因を探索した。妊婦が食事から葉酸を充分に摂取することは極めて困難である。妊娠可能期の女性と妊娠を計画する女性には、葉酸の大切な役割を伝達することが肝要である。今回の研究成果に基づき、8項目の予防指針を提案した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128206C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 二分脊椎の病因は多因子が関与するが、本邦における系統的な研究報告はない。今回初めて我々は「葉酸を内服しない女性は、内服している女性に比べて二分脊椎の発症オッズ比が1.6倍」となること、および「葉酸サプリメントを併用しないで、抗てんかん薬を内服する女性」は、二分脊椎の発生と有意に相関することを確認した。一方、MTHFR(メチールテトラヒドロ葉酸還元酵素)の遺伝子多型、糖尿病、肥満、不妊治療などは、二分脊椎の発生リスクにならないことを確認した。 
臨床的観点からの成果
 妊婦が食事から葉酸量を充分に摂ることは、極めて困難である。従って妊娠を計画する女性と妊娠可能期の女性は葉酸サプリメント(400マイクログラム/日)を内服することが重要である。
 抗てんかん薬が葉酸を併用することなく処方され、二分脊椎が発生していた。てんかん患者は葉酸サプリメントを併用するべきである。
 妊婦が葉酸情報を入手するのは、マスメディア、医療職などである。医師、看護師、助産師、栄養士、薬剤師などへ,葉酸情報を繰り返し発信することが大切である。
ガイドライン等の開発
その予定はない
その他行政的観点からの成果
 厚生労働省:母子健康手帳には、葉酸サプリメントと先天性奇形との関連が記載されている。しかしこの手帳を入手するのは妊娠10週頃であり、二分脊椎を防止するには時期的に遅すぎる。より早期に情報を伝達するシステムを構築してください。
葉酸サプリメントを必要とする女性には、無償配布のシステムを構築してください。
文部科学省:学校教育の場で、葉酸が妊娠で果たす大切な役割を伝達することは、最適の機会である。学習指導要綱を改変して葉酸の重要性を教育したり、性教育と関連してこの情報を提供してください。 
その他のインパクト
その予定はない

発表件数

原著論文(和文)
1件
日本医事新報
原著論文(英文等)
1件
J Obstet Gynaecol Res 2011;37:331-6.
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
日本二分脊椎研究会、日本産科婦人科学会、日本学校保健学会、日本栄養・食糧学会など。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
web siteを開設した(葉酸は赤ちゃんのビタミン、http://yousan-labo.jp/) ここから二分脊椎の病因と予防法について情報提供している。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本二分脊椎症協会(患者会)の会員交流会/勉強会(13都道府県)へ出席し、葉酸情報を提供した。療育相談会にも出席した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kondo A, Asada Y, Shibata K, et al.
Dietary folate intakes and effecs of folic acid supplementation on folate concetrations among Japanese pregnant women
J. Obstet Gynaecol Res , 37 (4) , 331-336  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128206Z