家族性大動脈瘤・解離の実態解明・効果的な進行予防・治療を目的としたレジストリー構築に関する研究

文献情報

文献番号
201128203A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性大動脈瘤・解離の実態解明・効果的な進行予防・治療を目的としたレジストリー構築に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-047
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 亨(東京大学大学院医学系研究科 ユビキタス予防医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 澤城 大悟(東京大学大学院医学系研究科 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大動脈解離・大動脈瘤の中には遺伝的要素の強い家族集積性を認める大動脈瘤・大動脈解離の症例・家系があり、発症メカニズムのモデルとしてその遺伝子異常の解析や遺伝・発症形態の解析は多くの情報をもたらすことが予想される。しかしながら日本におけるそれら症例・家系についての解析は少数の限られた症例報告が多く遺伝形態の本態や治療に対する反応、予後についての情報は得られ難い状況となっている。また各医療施設単体での年間集積症例数はそれ程多くはなく、本症候群の本態の把握には症例・家系の集積とその継続的な経過追跡・解析を行う為の共通基盤の整備が必須と考えられた。
研究方法
本研究では家族性大動脈瘤例を中心に大動脈解離・大動脈瘤のレジストリーの立ち上げを既存のデータベースの活用を図りつつ行う方針とした。また血液や手術サンプルを用いたバイオマーカーの発見・開発、遺伝子登録・解析からの病因メカニズムに繋がるデータベースの構築も目標とした。まず研究代表者・研究分担者を中心とした事務局が研究協力者と協議の上、既存の外科症例データベース(日本成人心臓血管外科手術データベース:JACVSD等)より登録をおこない日本における大動脈瘤・解離の独自レジストリー構築を開始する方針とした。
結果と考察
2011年9月に日本心臓血管外科手術データベース機構(JSVSD)に申請を行い、2011年10月認可されるに至った。術前臨床情報・施行術式・薬物療法・術後合併症の発症状況・生命予後を主に抽出しレジストリーとして症例登録を開始した。結合織疾患を背景に有する大動脈手術症例に関して、JACVSDよりの後ろ向き抽出例を対象に、主にマルファン症候群・非マルファン症候群の比較を行った。マルファン症候群では疾患の特徴上若年症例が多く、また腎機能・大動脈性状等は保たれている傾向であり、手術死亡は低頻度であった。一方、手術適応となる部位は大動脈根部や胸腹大動脈に渡る等人工心肺使用や大動脈クランプ時間が長時間となる傾向であり、術後合併症の頻度上昇をきたす要因と想定された。
結論
本研究はフィージビリティ研究であるが、将来的には日本における大動脈瘤・大動脈解離のレジストリーとして発展させ、本疾患の生命的危険に至る前での早期発見、効果的な外科的また薬物治療の選択・開発、効果的な経過観察の方法の抽出またサロゲートマーカー等の評価等に継がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128203C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全日本を網羅し、極めて信頼性・継続可能性が高い外科データベースを利用することにより、本邦初の全国的共通基盤に基づいた大動脈疾患症例登録基盤が形成された。今後の拡充により効果的に大動脈疾患全体の一元化された把握・追跡/解析・情報発信を可能にすると考えられる。また日本・アジア独自のデータベースとして既存の国際大動脈解離レジストリー(IRAD)や遺伝的胸部大動脈瘤及び心血管病態についてのナショナルレジストリー(GenTAC)等に発信・相互比較が可能となる。
臨床的観点からの成果
今回構築されたレジストリーからのデータに基づき、既に結合織疾患を背景に有する大動脈手術症例の統一基盤を基にした初の解析が施行し得え、特にマルファン症候群での大動脈手術に関しての特徴が明らかになりつつある(若年症例多い、腎機能・大動脈性状良好、非マルファン症候群症例に比して手術死亡は低頻度、等)。今後は結合織疾患のみならず一般大動脈手術症例との比較や、更に前向き検討を追加し、治療成果を向上させ得る情報・提言に繋がると考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究はフィージビリティ研究であり、今後、引き続いて平成24年度厚生労働科研費研究事業として継続される予定となっている。将来的には日本における大動脈瘤・大動脈解離のレジストリーとして発展させ本疾患の生命的危険に至る前での早期発見、効果的な外科的また薬物治療の選択・開発、効果的な経過観察の方法の抽出またサロゲートマーカー等の評価、ガイドライン等の改善に継がると期待される。
その他行政的観点からの成果
虚血性心疾患に次いで2番目に多い循環器疾患による死因である大動脈疾患(大動脈瘤・大動脈解離)は発症すれば極めて死亡率が高く、またその死亡者数は増加傾向にある。本疾患による死亡率は8.5人/10万人程度であり各医療施設単体での年間集積症例数はそれ程多くはなく、本態の把握には症例・家系の集積とその継続的な経過追跡・解析を行う為の共通基盤の整備が必須な状況であった。今回のレジストリー構築により厚生労働行政の基盤となる日本における全体的な疫学統計・実態把握が可能となることが第一の成果と考えられる。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2017-06-12

収支報告書

文献番号
201128203Z