小腸機能不全の治療指針の作成に関する研究

文献情報

文献番号
201128197A
報告書区分
総括
研究課題名
小腸機能不全の治療指針の作成に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-041
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
福澤 正洋(大阪大学 大学院医学系研究科 外科学講座・小児成育外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 古川 博之(旭川医科大学 外科消化器外科 移植外科)
  • 上野 豪久(大阪大学 大学院医学系研究科 外科学講座・小児成育外科学)
  • 阪本 靖介(国立成育医療研究センター 外科系診療部 肝移植)
  • 和田 基(東北大学医学系研究科小児科学分野)
  • 星野 健(慶應義塾大学医学部小児外科)
  • 松浦 俊治(九州大学病院 小児外科)
  • 鈴木 友己(北海道大学大学院医学研究科 置換外科・再生医学)
  • 岡本 晋弥(京都大学 医学研究科 小児外科)
  • 貞森 裕(岡山大学消化器腫瘍外科 肝胆膵外科・移植外科)
  • 佐藤 好信(新潟大学 消化器・一般外科)
  • 大西 康晴(名古屋大学医学部附属病院 移植外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、小腸機能不全において、重症群で移植適応と判別された症例に対しては小腸移植の推進を行う一方、中軽症と判別された症例に対しては治療の簡素化・軽減化を図るべく、全国調査を行った上に重症度の判定を行った上で重症度別治療指針を作成して治療の層別化を行うことである。
研究方法
過去5年の後方視的観察研究とする。日本小児外科学会認定施設、 日本静脈経腸栄養学会、日本小腸移植研究会の会員施設に対して、多施設共同研究としての症例登録を行う。対象は、高カロリー輸液を必要とする、小腸機能不全と診断された全症例を対象とする。(目標症例数:100例以上)最終生存(または死亡)確認日、高カロリー輸液離脱、中枢静脈ルートする所見、臓器合併症の所見(肝障害、腎障害)、などについて観察研究を行なった。
結果と考察
45施設より147症例の小腸機能不全に対して検討を加えることができた。生存は126例で、21例が死亡していた。生存例のうち81例(64%)が中心静脈栄養から6ヶ月以上離脱できず、不可逆的小腸機能不全と判断した。現在生存している不可逆性小腸機能不全患者のうち1.黄疸を伴った肝障害 8例 2.中枢ルートが2本以上閉塞 27例 の合計35例は重症群と判断し、小腸移植の適応だと考えられる。
結論
今回初めて小腸機能不全の全国調査が行われた。また、今回の調査によって、初めて全国の小腸機能不全の患者の症例数が把握できた。不可逆的小腸機能不全を重症度別に層別化した重症群に対しては小腸移植が適応となる。現在、小腸移植は保険適用となっていないため少なくとも35例の小腸移植適応患者が存在することを考えると、早急な保険適用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128197C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では小腸機能不全の患者を取り扱っている3学会・研究会を網羅した大規模な全国調査を行うことができた。63施設、354症例の報告は今までになく本疾患を救い上げることができたと考えられる。71例の不可逆的小腸機能不全が存在するとのデータは、一次調査で報告された症例数の68%の回答を得たことと合わせると、100例程度の不可逆的小腸機能不全が存在すると考えられる。本研究では従来より100例程度の不可逆的小腸機能不全が存在するといわれてきたが、今回の調査にてこのデータをはじめて裏付けることができた。
臨床的観点からの成果
中枢ルートが2本以上詰まった場合には、近い将来的に中枢ルートを失う可能性の高い重症群と考えられるがそのような症例が23例もあることが明らかになった。また、黄疸がある症例も8例あり。この35症例は絶対的重症群と考えられる。また、死亡した症例21例も重症群と考えられるため56例(37%)が最終的に重症群と考えられる。小腸機能不全の重症群に対する治療は小腸移植になるが、重症群への小腸移植の適応と、調査施設の認識の乖離も小腸移植の実施数が少数にとどまっている理由であると考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究に基づいて小腸機能不全の治療指針を現在作成を行っている。日本小腸移植研究会 臨床小腸移植推進委員会にて、腸管不全患者への登録事業を行い。重症群については移植施設に速やかに紹介できるような、腸管不全の登録システムの開発を行っている。
その他行政的観点からの成果
今回の調査では今まで考えられていたよりも多くの重症群の小腸機能不全患者が存在することが判明した。今後、この重症群の患者に標準治療である小腸移植を適応するために、早期の保険適用と、患者を治療している施設への啓蒙活動が必要であると考えられる。
その他のインパクト
今回の調査については日本小腸移植研究会、小児外科学会において発表された。また、日本国内にのみならず国際移植学会でも発表される予定である。また、今回の発表についてはメディカルトリビューンにて取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201128197Z