文献情報
文献番号
201128192A
報告書区分
総括
研究課題名
表皮水疱症に有効な新たな医薬開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治・一般-036
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 片山 一朗(大阪大学 医学系研究科)
- 金田 眞理(大阪大学 医学系研究科)
- 室田 浩之(大阪大学 医学系研究科)
- 名井 陽(大阪大学 医学系研究科)
- 江副 幸子(大阪大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
栄養障害型表皮水疱症はVII型コラーゲン遺伝子異常により基底膜直下で真皮内水疱を形成し、潰瘍治癒後の著明な瘢痕形成を特徴とし、重傷例では手指の棍棒状癒着、食道粘膜剥離に伴う食道瘢痕狭窄をきたし、経過とともに瘢痕癌を多発して致死性となることも少なくない。最近我々は、VII型コラーゲン欠損マウスを用いた研究により、剥離表皮が産生するHMGB1が骨髄間葉系幹細胞を水疱部へと集積させて剥離表皮の再生を誘導しているという新たな生体内再生誘導メカニズムの存在を明らかにした。平成23年度は、HMGB1の持つ骨髄間葉系幹細胞動員活性を利用した組織再生誘導医薬開発の実現を目的として研究を進めた。
研究方法
骨髄間葉系幹細胞動員活性を持つHMGB1ペプチド断片をマイグレーションアッセイにより探索した。創薬候補ペプチドを用いて、ラット疎血性皮膚潰瘍モデルへの静脈内投与による薬効試験を行った。上記の検討により得られた結果を基にして、早期の医師主導臨床試験を実現する目的で、HMGB1ペプチドのGLP非臨床試験実施計画書を作成した。
結果と考察
HMGB1断片ペプチドK002に骨髄間葉系幹細胞遊走活性が存在することを明らかにした。K002をマウス静脈内に投与した結果、コントロール群(PBS投与群)に比較してK002投与群は優位にPDGFRα陽性間葉系幹細胞が血中に増加した。さらに、PBS投与群に比較してK002ペプチド投与群は有意に疎血性皮膚潰瘍抑制効果および潰瘍上皮化促進効果を示すことが明らかとなった。これらの結果を基にして、K002ペプチドの表皮水疱症に対する医師主導治験実施を可能にするために、GMP非臨床試験実施計画書を作成した。
K002を表皮水疱症患者に静脈内投与して本人の骨髄間葉系幹細胞を血中動員し、水疱部皮膚に集積させることにより、間葉系幹細胞の持つ抗炎症作用、抗免疫作用により局所の炎症反応を抑制的に制御し、そう痒による掻爬行動が軽減されれば臨床症状が著明に改善することが期待される。さらに、VII型コラーゲンの部分変異による中等症、軽症の表皮水疱症患者の場合は皮膚に動員された骨髄由来間葉系幹細胞が変異VII型コラーゲンを発現することにより、基底膜部位の接着機能の向上が得られると期待される。
K002を表皮水疱症患者に静脈内投与して本人の骨髄間葉系幹細胞を血中動員し、水疱部皮膚に集積させることにより、間葉系幹細胞の持つ抗炎症作用、抗免疫作用により局所の炎症反応を抑制的に制御し、そう痒による掻爬行動が軽減されれば臨床症状が著明に改善することが期待される。さらに、VII型コラーゲンの部分変異による中等症、軽症の表皮水疱症患者の場合は皮膚に動員された骨髄由来間葉系幹細胞が変異VII型コラーゲンを発現することにより、基底膜部位の接着機能の向上が得られると期待される。
結論
難治性皮膚潰瘍に有効な骨髄間葉系幹細胞血中動員医薬K002の開発に成功した。今後表皮水疱症モデル動物への有効性を確認した後に、非臨床試験、臨床試験を実施して創薬化を実現する。
公開日・更新日
公開日
2013-03-12
更新日
-