前庭機能異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
201128176A
報告書区分
総括
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
H23-難治・一般-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 衞(東京医科大学 耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池園哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 伊藤壽一(京都大学・耳鼻咽喉科学講座)
  • 柿木章伸(東京大学・耳鼻咽喉科学講座)
  • 北原 糺(大阪労災病院・耳鼻咽喉科)
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学・耳鼻咽喉科学講座)
  • 将積日出夫(富山大学大学院医学薬学研究部)
  • 高橋克昌(群馬大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 工田昌也(広島大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 武田憲昭(徳島大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 土井勝美(近畿大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 山下裕司(山口大学 耳鼻咽喉科講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性のメニエール病と他の前庭疾患の診断と治療の確立を目的として、疫学、基礎、臨床の三部門において研究を遂行する。
研究方法
1.疫学的研究
メニエール病の高齢発症と難治化との関連を解明するために3年間継続した疫学調査を実施する。
2.基礎的研究
メニエール病の実態に可及的近い動物モデルを作成する。新規薬剤による難治性前庭疾患の治療法を確立する。ストレス遺伝子とメニエール病難治化との関連を検索し、遺伝子診断の有用性を研究する。
3.臨床的研究
メニエール病の診断や予後判定に必要な新検査を開発する。とくに内リンパ水腫の画像診断を重点的に推進する。中耳加圧装置とゲンタマイシン鼓室内注入療法など新治療法の標準化を検討する。
結果と考察
1.疫学的研究
メニエール病の有病率は人口10万人対50人と推定され、女性優位、高齢患者の増加傾向が確認された。難治例の割合は約30%であった。
2.基礎的研究
マウス前庭器のアクアポリン、バゾプレッシン受容体や前庭神経節のタンパクTRPV1がメニエール病発症に関与していることが分かった。内リンパ管閉鎖術と抗利尿ホルモン作動薬の併用で著明な内リンパ水腫が形成され、メニエール病の動物モデルが作成できた。光コヒーレンストモグラフィーによって動物の蝸牛内部の描出が可能となった。
3.臨床的研究
患者自身が発作時の眼振を記録できる携帯型眼球運動記録装置を開発した。Square Drawing Testをコンピュータ解析し、パラメータの異常で中枢性めまいと末梢性めまいが鑑別できた。アスタキサンチンが前庭感覚細胞障害を軽減し、メニエール病の新しい治療薬の候補となった。ステロイドホルモン、鼓膜マッサージ、ゲンタマイシン鼓室内注入療法、前庭神経切断術は難治性めまい発作のコントロールに有用であった。機械的振動負荷が難治性のクプラ結石症に対して有用であった。
抗利尿ホルモン値と画像検査の所見から急性低音障害型感音難聴のメニエール病への移行が検出できた。 MRIによって内リンパ水腫が高率に検出できた。
月単位の平均めまい発作回数にめまい程度を加えたメニエール病の重症度評価法が提案された。
結論
疫学調査と基礎的研究からメニエール病難治化の要因が明らかになりつつある。メニエール病のモデル動物作成と内耳形態の画像による評価が特記すべき成果である。臨床的にはめまい抑制に有効な治療法が複数報告され、今後これらの適応の標準化が必要となる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128176Z