軟骨無形成症の病態解明と治療法の開発

文献情報

文献番号
201128154A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨無形成症の病態解明と治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-195
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部運動機能外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院リハビリテーション科)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部附属病院整形外科)
  • 奥住 成晴(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター肢体不自由児施設)
  • 高村 和幸(福岡市立こども病院・感染症センター整形外科)
  • 長谷川 奉延(慶応義塾大学 医学部小児科)
  • 親泊 政一(徳島大学 疾患ゲノム研究センター生体機能分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軟骨無形成症(ACH)の診断基準を満たさない非定型例につき遺伝子解析を行い、遺伝子型と表現型の関連につき解析を行った。ACHの中にはFGFR3遺伝子のG380R変異を認める症例でも上記診断基準を満たさない非定型例が含まれることが明らかとなった。
研究方法
160例のACHのうちFGFR3遺伝子のG380R変異を確認したのは計35例である。FGFR3遺伝子のN540K変異が確認された軟骨低形成症(HCH)は計8例であった。その他の骨系統疾患で別の原因遺伝子が確定されたものは6例であった。これらにつき①身長、②指極/身長比、③鞍鼻の有無、④三尖手の有無、⑤腓骨長/脛骨長、⑥大腿頚部長/転子間距離、⑦椎弓根間距離、⑧椎体後方陥凹の有無、⑨水平の臼蓋の有無、の9項目につき解析した。
結果と考察
計160例のACHのうち診断規準を満たさないACHが27例(17%)存在することがわかった。そのうち鞍鼻を呈さないものが8例(5%)、三尖手を呈さないものが27例(17%)あった。三先手を呈する症例はそれ以外のACH診断規準を全て満たしていた。X線計測は骨端核の出現時期により変化するため、年齢の要素を考慮する必要があると考えられた。ACH診断規準を満たさない非定型例でも、遺伝子検査の結果ACHと診断すべきと考えられる症例が6例あった。
結論
ACHの表現型は均質性が高く、身体所見とX線所見を組み合わせれば臨床診断は難しくない。ACH診断規準としてあげた9項目を全て満たせば間違いなくACHと診断してよいと考える。一方HCHの重症度は様々であり、軽症例では正常の低身長との鑑別が、重症例ではACHとの鑑別が問題となる。今回調査したHCH患者には鞍鼻や三尖手を呈した例はなかった。しかしACHの非定型例にも三尖手や鞍鼻を呈さないものがあることが判明し、中にはX線計測でも診断基準を満たさないものがある。臨床的には非定型例でもFGFR3遺伝子にG380R変異が認められればACHと診断すべきと考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128154B
報告書区分
総合
研究課題名
軟骨無形成症の病態解明と治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-195
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部運動機能外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院リハビリテーション科)
  • 松井 好人(富山大学 大学院医学薬学研究部(医学))
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部附属病院整形外科)
  • 奥住 成晴(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター肢体不自由児施設)
  • 高村 和幸(福岡市立こども病院・感染症センター整形外科)
  • 長谷川 奉延(慶応義塾大学 医学部小児科)
  • 親泊 政一(徳島大学 疾患ゲノム研究センター生体機能分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成21年度に作成した軟骨無形成症(ACH)の臨床診断基準を検証し、非定型例につき遺伝子診断を行い、非定型例の遺伝子解析を行うことが目的である。
研究方法
臨床的にACHと診断した160例、軟骨低形成症(HCH)と診断した20例、その他の骨系統疾患24例、対照(正常者)50例につき身体所見とX線像を解析した。測定項目は①身長、②指極/身長比、③鞍鼻の有無、④三尖手の有無、⑤腓骨長/脛骨長、⑥大腿頚部長/転子間距離、⑦椎弓根間距離、⑧椎体後方陥凹の有無、⑨水平の臼蓋の有無、の9項目につき解析した。非定型例には遺伝子検査を追加した。FGFR3遺伝子のG380R変異を確認したACHは計35例、N540K変異が確認されたHCHは計8例であった。その他の骨系統疾患で別の原因遺伝子が確定されたものは6例であった。
結果と考察
①身長が正常の-5SD 以下、②指極/身長比が0.96以下、③鞍鼻あり、④三尖手あり、⑤腓骨長/脛骨長>1.1、⑥大腿頚部長/転子間距離<0.8、⑦椎弓根間距離L4/L1<1.0、⑧椎体後方陥凹(posterior scalloping)あり、⑨水平の臼蓋あり、の9項目を満たせばACHと診断して良いと考えられた。ACHと診断した患者160例のうち128例(80%)に三尖手を認めた。三尖手や鞍鼻の有無の判断は主観的であり、専門家の間でも不一致がみられた。ACHの身体所見としては鞍鼻のほうが三先手より陽性率が高かった。三先手を認めた128例全例がそれ以外の身体所見を備えていた。診断基準を満たしていなくてもFGFR3遺伝子にG380R変異を認めればACHと診断すべきである。
結論
ACHの表現型は均質性が高く、身体所見とX線所見を組み合わせれば臨床診断は難しくない。ここに診断規準としてあげた9項目を全て満たせば間違いなくACHと診断してよいと考える。一方HCHの重症度は様々であり、軽症例では正常の低身長との鑑別が、重症例ではACHとの鑑別が問題となる。今回調査したHCH患者には鞍鼻や三尖手を呈した例はなかった。しかしACHの非定型例にも三尖手や鞍鼻を呈さないものがあることが判明し、中にはX線計測でも診断基準を満たさないものがある。臨床的には非定型例でもFGFR3遺伝子にG380R変異が認められればACHと診断すべきと考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128154C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床的に重症型の軟骨無形成症(ACH)と診断された男児にFGFR3の遺伝子解析を行った。hot spot解析ではG380R変異が陰性であったため全翻訳領域を解析したところ、致死型骨異形成症1型のcommon mutationであるR248C変異が同定された。血液および毛根由来のDNAで変異型と野生型の比率が異なり、体細胞モザイクであることが証明された。ACHの非定型例ではFGFR3の全翻訳領域解析を行う必要がある。
臨床的観点からの成果
軟骨無形成症(ACH)ではリガンド非依存性にFGFR3シグナルが活性化され、軟骨細胞の増殖が阻害される。抗ヒスタミン剤であるdrug XはFGFR3シグナルをブロックすることにより軟骨細胞の増殖阻害を救出する。この薬剤はACHに対する治療薬となる可能性がある。
ガイドライン等の開発
ガイドラインの作成は行っていません。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
1件
56th annual meeting of Orthopaedic Research Society. (New Orleans)
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
第28回つくしの会全国集会(東京)で講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
芳賀信彦
骨系統疾患(骨関節X 線像 のみかた)
J Clin Rehabil , 19 , 1158-1163  (2010)
原著論文2
松井好人
軟骨異形成症と遺伝子異常
CLINICAL CALCIUM , 20 (8) , 34-41  (2010)
原著論文3
Takagi M, Kaneko-Schmitt S, Hasegawa T et al.
Atypical achondroplasia due to somatic mosaicism for the common thanatophoric dysplasia mutation R248C.
Am J Med Genet A [Epub ahead of print]  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128154Z