非致死性骨形成不全症の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究

文献情報

文献番号
201128153A
報告書区分
総括
研究課題名
非致死性骨形成不全症の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-194
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 智弘(慶應義塾大学 医学部)
  • 長谷川 高誠(岡山大学 医学部)
  • 大関 覚(獨協医科大学 越谷病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は骨形成不全症(以下本症)の包括的な診断方法を確立すること、及び内科的治療法であるビスホスホネート製剤を保険収載することである。また本研究の目的に関連して、自然歴および長期予後を念頭に入れた本症の生涯にわたるQOL低下と後遺症のチェックリストを作成する。
研究方法
1.本症の各病型について、臨床症状・骨レントゲン所見に関する情報を収集し、遺伝子診断を実施した。研究代表者がすべての情報を集積し、包括的な診断の手引き(案)を作成した。研究代表者と研究分担者が診断の手引き(案)を検討し、最終的な診断の手引きを確定した。2.ビスホスホネート製剤であるパミドロネートは国内では本症に対する適応を有さない未承認薬・適応外薬である。厚生労働省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の第2回開発要望」に非致死性骨形成不全症に対するパミドロネートを申請した。3.本症患者会である特定非営利活動団体 骨形成不全協会 (通称ネットワークOI)の意見を集約し、生涯にわたるQOL低下と後遺症のチェックリストを作成した。
なおすべての患者情報は連結不可能匿名化した。本人あるいは家族から遺伝子解析に関する書面による同意を得た。また遺伝子解析は慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認を得ている。
結果と考察
1.本症の病型別診断の手引きを国内外に先駆けて作成した。本診断の手引きは医療現場において使用可能であり、医療現場におけるニーズと直接的に合致する。なお遺伝子診断の必要性を考え、骨形成不全症全病型の遺伝子診断方法を確立し全国から検体を受け付け解析している。2.非致死性骨形成不全症に対するビスホスホネート製剤の保険収載に関して、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性を評価されるとともに、承認申請のために実施が必要な試験の妥当性や公知申請への該当性を確認すること等により、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発を促される予定である。
3.今後生涯にわたるQOL低下と後遺症のチェックリストを用いて本症の自然歴、長期予後を明らかにすることが可能となった。
結論
包括的な骨形成不全症診断の手引き、非致死性骨形成不全症に対するビスホスホネート製剤の保険収載、非致死性骨形成不全症の生涯にわたるQOL低下と後遺症のチェックリストに関して大きな成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128153B
報告書区分
総合
研究課題名
非致死性骨形成不全症の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-194
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 智弘(慶應義塾大学 医学部)
  • 長谷川 高誠(岡山大学 医学部)
  • 大関 覚(獨協医科大学 越谷病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は骨形成不全症(以下本症)の包括的な診断方法を確立すること、及び内科的治療法であるビスホスホネート製剤を保険収載することである。
研究方法
1.①本症ⅡCの臨床症状をまとめた。②本症の包括的診断の手引きを作成した。2.本症の一般向け疾患説明書を作成しインターネット上に公開した。3.①本症の有病率を算出した。②海外におけるビスホスホネート治療に関するガイドラインをまとめた。③厚生労働省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の第2回開発要望」に非致死性骨形成不全症に対するパミドロネートを申請した。4.非致死性骨形成不全症QOLチェックリストを作成した。
結果と考察
1.①ⅡCのような“非典型的”骨形成不全症も存在することを明らかにした。②今回作成した包括的な本症診断の手引きは医療現場において使用可能であり、医療現場におけるニーズと直接的に合致する。なお遺伝子診断の必要性を考え、骨形成不全症全病型の遺伝子診断方法を確立し、全国から検体を受け付け解析している。2.骨形成不全症の一般向け疾患説明書の作成により広く社会、国民に本研究の知見が発信された。3.①平成22年1月1日時点で我が国の医療機関へ通院している非致死性骨形成不全症の総症例数は1,380人(95%信頼区間 1,170-1,590),有病率は10万人当たり8.16人(6.92-9.40)と推定した。②パミドロネートについてGreat Ormond Street Hospital for Childrenに記載されているガイドラインの内容は、我々が「平成21年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) 非致死性骨形成不全症の実態把握と治療指針の作成」において、内科的治療指針として報告したものと同じであった。③「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、医療上の必要性を評価されるとともに、承認申請のために実施が必要な試験の妥当性や公知申請への該当性を確認すること等により、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発を促される予定である。4.非致死性骨形成不全症QOLチェックリストを用いて、患者会の協力のもとに、今後本症の自然歴、長期予後を明らかにする。
結論
本症の包括的な診断方法を国内外に先駆けて確立した。また内科的治療法であるビスホスホネート製剤を保険収載する道を切り開いた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128153C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.骨形成不全症に関して(1)IIC型は常染色体優性遺伝であることを世界で初めて証明した。(2)VIII型の責任遺伝子であるLEPRE1のKDEL ER配列が必須であることを世界で初めて証明した。(3)IFITM5の5’非翻訳領域の変異によるV型の本邦初例を報告した。(4)CTによるII型の出生前診断の可能性を示した。(5)COL1A1モザイクの親からの兄弟発症例を証明した。2.本邦におけるX型、XI型の存在を初めて証明した。3.I~XII型の遺伝子診断方法を確立した。
臨床的観点からの成果
1.我が国の医療機関に通院している非致死型骨形成不全症の総症例数は1,380(95%信頼区間 1,170~1,590)人、有病率は10万人あたり8.16(95%信頼区間 6.92~9.49)と推定した。2.我が国の致死型骨形成不全症の44.8%でビスホスホネート治療が行われていることを明らかにした。3.骨形成不全症の診断および内科的・外科的治療に関して、日本小児内分泌学会、日本小児整形外科学会、日本小児遺伝学会の連携基盤を確立した。
ガイドライン等の開発
1.我々が「非致死性骨形成不全症の実態把握と治療指針の作成」において、内科的治療指針として報告したビスホスホネート製剤であるパミドロネート治療は、英国Oxford University Hospitalのホームページに記載されていることを確認した。2.臨床症状、骨レントゲン所見、遺伝子診断、除外項目からなる骨形成不全症I, II, III, IV, VIII型の包括的診断の手引きを作成した。3.非致死性骨形成不全症QOLチェックリストを作成した。
その他行政的観点からの成果
1.厚生労働省に対し、日本小児内分泌学会を通じてパミドロン酸二ナトリウム(以下本剤)の小児骨形成不全症への効能の追加を求める要望書を提出した。2.厚生労働省が設置する「第12回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」は、本剤が医療上の必要性の基準に該当すると評価した。3.本剤の使用実態調査を実施した。4.平成26年5月に本剤の小児骨形成不全症のへの適応が承認された。5.平成28年5月現在小児骨形成不全症に対し、本剤としてアレディアをふくむ3製品が適応承認を受けている。
その他のインパクト
1.骨形成不全症の一般向けの疾患説明書を作成し、ホームページ上に公開した。 2.患者会である特定非営利活動団体 骨形成不全協会(通称ネットワークOI)において、研究成果を3回講演した。3.第47回日本周産期・新生児学会学術集会ミニシンポジウムで「骨形成不全症(osteogenesis imperfect:OI)の診断と予後評価」を発表した。4.平成23年9月9日に、第36回大分骨代謝研究会で骨形成不全症に関する招待講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takagi M, Hori N, Chinen Y, et al.
Heterozygous C-propeptide mutations in COL1A1: Osteogenesis imperfect type IIC and dense bone variant.
Am J Med Genet. , 155A (9) , 2269-2273  (2011)
10.1002/ajmg.a.34152
原著論文2
Takagi M, Kaneko-Schmitt S, Suzumori N, et al.
Atypical achondroplasia due to somatic mosaicism for the common thanatophoric dysplasia mutation R248C.
Am J Med Genet A. , 158A (1) , 247-250  (2012)
10.1002/ajmg.a.34358
原著論文3
Masaki Takagi, Tomohiro Ishii, Aileen M Barnes, et al.
A novel mutation in LEPRE1 that eliminates only the KDEL ER- retrieval sequence causes non-lethal osteogenesis imperfecta
PLos One , 7 (5) , e36809-  (2012)
10.1371/journal.pone.0036809
原著論文4
Akizawa Y, Nishimura G, Hasegawa T, et al.
Prenatal diagnosis of osteogenesis imperfecta type II by three-dimensional computed tomography (CT): the current state of fetal CT.
Cong Anomalies(Kyoto) , 52 (4) , 203-206  (2012)
10.1111/j.1741-4520.2011.00346.x.
原著論文5
Yamada T, Takagi M, Nishimura G,et al.
Recurrence of osteogenesis imperfect due to maternal mosaicism of a novel COL1A1 mutation.
Am J Med Genet A . , 158A (11) , 2969-2971  (2012)
10.1002/ajmg.a.35602
原著論文6
Takagi M, Sato S, Hara K, et al.
A recurrent mutation in the 5’-UTR of IFITM5 causes osteogenesis imperfecta type V with broad phenotypic spectrum.
Am J Med Genet A. , 161A (8) , 1980-1982  (2013)
10.1002/ajmg.a.36025

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128153Z