先天性両側小耳症・外耳道閉鎖疾患に対する、良い耳介形成・外耳道・鼓膜・鼓室形成術の開発と両耳聴実現のためのチーム医療

文献情報

文献番号
201128147A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性両側小耳症・外耳道閉鎖疾患に対する、良い耳介形成・外耳道・鼓膜・鼓室形成術の開発と両耳聴実現のためのチーム医療
課題番号
H22-難治・一般-188
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝戸 裕貴(獨協医科大学 形成外科)
  • 竹腰 英樹(国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
われわれは、先天性小耳症・外耳道閉鎖手術症例に対して形成外科と耳科が合同で、耳介形成、外耳道形成、聴力改善手術を開発してきた。しかし初診の小耳症・外耳道閉鎖疾患の子どもを連れて受診する両親にとって、手術が9~10歳から始まると説明を受けても、どのようなことになるのかイメージを抱くことが難しい。成長して手術年齢になった子どもが、手術でどのようなことになるのか説明を受けても不安に感じる。その心配を軽減するために術前、第1段階術後、第2段階術後、その後必要に応じて耳穴型補聴器装用の4つの写真からなる説明図を作ることを目的とした。
研究方法
先天性小耳症・外耳道閉鎖のために、形成外科は獨協医科大学形成外科、耳科は東京医療センター、国際医療福祉大学三田病院の耳鼻咽喉科が担当した20症例を対象とした。術前、第1段階手術後、第2段階手術後、その後の耳穴型補聴器装用の4種類の各段階のそれぞれの症例とし、フジフィルム社製のFinePix REAL3Dカメラで撮影された50枚の写真の中から、研究目的にふさわしいものを選択し、4点を左から右に並べて、患者説明用3D写真を作成した。
結果と考察
術前から耳穴型補聴器装用までの写真を4つ並べた結果、患者説明に満足できるものに仕上がった。外来で説明に用いたところ、全例よく理解されたという印象を抱えることが出来た。小耳症・外耳道閉鎖症の形成外科と耳科の合同手術で重要な整容的なポイントは、立体的に新しい耳が健常者の耳介同様に立体的に作られることであるが、外来での説明、あるいは術前の説明でどのように出来上がるのかイメージを抱くことが難しいため、患者及び家族が不安に思うことがある。そのために3D写真撮影し、術前から術後までの経過が立体的に知ることが出来るようになった。このように3D写真による外科領域への応用は、患者教育並びに医学生、研修医、レジデント教育に大いに役立つことであろう。
結論
先天性小耳症・外耳道閉鎖症の形成外科と耳科による段階的合同手術の経過を4つに分けて3D写真で示すことは、患者及び家族に理解してもらうために満足してもられるものであることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201128147B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性両側小耳症・外耳道閉鎖疾患に対する、良い耳介形成・外耳道・鼓膜・鼓室形成術の開発と両耳聴実現のためのチーム医療
課題番号
H22-難治・一般-188
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝戸 裕貴(獨協医科大学形成外科)
  • 竹腰 英樹(国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 坂田 英明(目白大学保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小耳症・外耳道閉鎖症に対して、われわれは形成外科と耳科の合同チームで、診断、再建手術(第1段階の肋軟骨移植は形成外科単独)、第2段階の耳おこしと外耳道形成、鼓室形成術(形成外科と耳科の合同手術)、そして術後のフォローと聴覚補償に取り組んできた。この合同チームによる手術の問題と課題を明らかにして、その研究成果を年1回の市民公開講座開催とその内容を冊子にして社会へ発信する。同時に英文単行本の発行の準備を行う。
研究方法
先天性小耳症・外耳道閉鎖症の子どもを持つ両親で、われわれの研究班が年1回開催する市民公開講座に参加した人々を対象とした両側小耳症の77例。市民公開講座の内容は、研究代表者が研究分担者と協議し、全体の進行状況を分析して現在重要なテーマを選んだ。市民公開講座当日にアンケートを実施した。
結果と考察
全例骨導補聴器を装用しており、両耳装用50%であった。補聴器の両耳装用と片耳装用との比較では、「音の方向性がわかるようになった」、「言葉の数が増えてきた」などの意見があった。補聴器装用での聴こえの具合は8割が十分に聴こえるが聴こえない時もあると答え、2割が何も不自由がないと答えた。骨導補聴器に対しては、外れやすい、運動がしにくい、防水面の心配、壊れやすいなどの不具合が指摘され、骨導補聴器の装着部位や防水面などの改良を家族が求めていることを認識できた。しかし、骨導補聴器の両耳装用で、ことばの聴き取りが良くなるばかりか、音源定位についても改善しているとの回答があり、両側小耳症・外耳道閉鎖症児の早期補聴の必要性が確認できた。
結論
両側小耳症・外耳道閉鎖症は、毎年わが国では10人程度しか生まれない稀少な疾患である。そのため両親はわれわれの市民公開講座に参加し、他の両親と意見交換をし、同じ障害の子どもを持つのは自分たちだけではないことを知り励まされる。研究者のわれわれは、取り組んできた研究の成果を両親に話すことでフィードバックされ、次の研究の展開のアイデアを得ることが多く、また研究者同士の意見交流の場としても役立っている。3年間の研究の成果を英文の単行本として発行すべく翻訳を進めている。海外のこの領域の研究者でわれわれのように形成外科と耳科が共同して患者のために取り組んでいる病院は少なく、価値ある出版物になることを確信している。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128147C

成果

専門的・学術的観点からの成果
われわれは先天性両側小耳症・外耳道閉鎖症児とその家族を対象に年1回は市民公開講座(患者の会)を開催しているが、1.研究成果の社会への発信の場、2.患者の両親同士の交流の場、3.研究者同士の意見交換の場として有意義な企画となっている。本疾患に対し、われわれのような合同チームで取り組む病院は海外でも少なく、本研究の成果は英文の単行本として2013年にKarger社より発行された。
臨床的観点からの成果
われわれは小耳症・外耳道閉鎖症に対し形成外科・耳科の合同チームで機能と再建のための手術を行い良好な成績をあげている。しかし、聴力の未改善例や術後大幅に改善しながら経年変化で低下する例もあり、側頭骨HRCTを施行しその原因を検討した結果、1.鼓膜の浅在化、2.外耳道の骨増殖、3.コルメラの偏位があり、今後はこの3点克服のためにさらに術式を開発する必要があることがわかった。
ガイドライン等の開発
本研究にはガイドラインは似つかわしくないため、1.ガイドブックとして金原出版より2009年に「小耳症・外耳道閉鎖症に対する機能と形態の再建」を刊行し、現在世界に発信すべく翻訳を進めている。2.患者及び家族のために本疾患の理解と手術までのスケジュールを理解してもらうため2011年3月に「小耳症・外耳道閉鎖症の理解のために(第2版)を作成した。3.術前から形成外科、耳科の段階的合同手術の経過、耳穴型補聴器装用までの4つの3D写真を並べて示した説明図を作成し患者と家族のより深い理解に役立っている。
その他行政的観点からの成果
両側小耳症・外耳道閉鎖症が難治性疾患のリストに加えられたことは、患者及び家族がこれまで社会に見放されるほどの稀少疾患として諦めていたのが、国や社会からケアされているという認識を持ったことである。同時にわれわれが作成した説明パンフレットにより、どの年齢でどのような行政的支援が得られるか理解でき、行政に期待するようになったことである。
その他のインパクト
患者の会(青空の会)を毎年1回(1月)開催している。毎年100名近い患者・家族の参加があり、医師だけでなく家族同士の交流と情報交換の場となっている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
患者の会5件、2011.1.23、2012.1.22、2013年1月20日、2014年1月19日、2015年1月18日、2016年1月31日

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128147Z