優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する調査研究

文献情報

文献番号
201128146A
報告書区分
総括
研究課題名
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-187
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工 穣(信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 熊川 孝三(虎ノ門病院 耳鼻咽喉科・聴覚センター)
  • 東野 哲也(宮崎大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 耳鼻咽喉科学講座 )
  • 長井 今日子(群馬大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
  • 武市 紀人(北海道大学 医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 石川 浩太郎(自治医科大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院 )
  • 福島 邦博(岡山大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 鎌谷 直之(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性難聴は新出生児1000人に1人に認められる頻度の高い先天性障害のひとつである。優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の場合、罹患者数が少なく希少であり、家系ごとに原因遺伝子や臨床経過が大きく異なるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない。また、進行性の難聴である場合が多く、長期に渡って生活面に支障を来たすことより、診断法・治療法の開発が期待されている。本研究では、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報治療実態の調査を行いデータベース化することで、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者の実態把握と治療法確立のための基盤整備を目的としている。
研究方法
本研究では、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報および治療実態の調査を全国10施設と共同で実施し、従来の資料377例に新規資料を加えた約600例のデータを基に、疾患の臨床的特徴を明らかにした。また、対象患者に対して、十分な説明を行った後書面で同意を取得の上DNAを採取した。本年度は優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者200名を対象にKCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子の全エクソン領域およびスプライシング領域をPCR法で増幅し、直接シークエンス法にて解析を行った。
結果と考察
平成23年度は昨年度に引き続き臨床情報および遺伝子サンプルの収集を行い、臨床情報のまとめを行った。その結果、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の患者の臨床的な特徴として、軽度?中等度難聴の頻度が高く、難聴発見時期が遅れる傾向にあること、また、進行性の難聴が多い事などが明らかとなった。
また、原因遺伝子の解析として、平成23年度はKCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子の解析を行い、新規遺伝子変異を含む複数の原因遺伝子変異を見出した。
結論
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報および治療実態の調査を行った。その結果、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の患者の臨床的な特徴として、軽度?中等度難聴の頻度が高く、難聴発見が遅れる傾向にあること、また、進行性の難聴が多い事などが明らかとなった。また、原因遺伝子としてKCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子の解析を行い、新規遺伝子変異を含む複数の原因遺伝子変異を見出した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201128146B
報告書区分
総合
研究課題名
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-187
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工 穰(信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座 )
  • 熊川 孝三(虎ノ門病院 耳鼻咽喉科・聴覚センター)
  • 東野 哲也(宮崎大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 耳鼻咽喉科学講座 )
  • 長井 今日子(群馬大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
  • 武市 紀人(北海道大学 医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 石川 浩太郎(自治医科大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科学講座)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院耳鼻咽喉科科学 )
  • 福島 邦博(岡山大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 鎌谷 直之(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性難聴は新出生児1000人に1人に認められる頻度の高い先天性障害のひとつである。優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の場合、罹患者数が少なく希少であり、家系ごとに原因遺伝子や臨床経過が大きく異なるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない。また、進行性の難聴である場合が多く、長期に渡って生活面に支障を来たすことより、診断法・治療法の開発が期待されている。本研究では、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報治療実態の調査を行いデータベース化することで、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者の実態把握と治療法確立のための基盤整備を目的としている。
研究方法
本研究では、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報および治療実態の調査を全国10施設と共同で実施した。情報収集を開始する前に研究班全体で臨床情報調査項目に関する検討を行い、全国共通のフォーマットで調査を行い、疾患の臨床的特徴を明らかにした。また、対象患者に対して、十分な説明を行った上で書面で同意を取得して実施した。遺伝子解析はKCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子を直接シークエンス法にて解析を行った。
結果と考察
研究期間を通じて臨床情報調査を実施した結果、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の患者の臨床的な特徴として、軽度?中等度難聴の頻度が高く、難聴発見時期が遅れる傾向にあること、また、進行性の難聴が多い事などが明らかとなった。また、原因遺伝子の解析では、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子の解析を行い、新規遺伝子変異を含む複数の原因遺伝子変異を見出した。また、以上の結果を踏まえて、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する診療ガイドラインの改定を行った。
結論
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報および治療実態の調査を行った。その結果、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の患者の臨床的な特徴として、軽度?中等度難聴の頻度が高く、難聴発見が遅れる傾向にあること、また、進行性の難聴が多い事などが明らかとなった。また、原因遺伝子としてKCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子の解析を行い、新規遺伝子変異を含む複数の原因遺伝子変異を見出した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128146C

成果

専門的・学術的観点からの成果
優性遺伝形式をとる難聴患者の遺伝子解析を行い、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子の解析を行い、新規遺伝子変異を含む複数の原因遺伝子変異を見出した。これらの遺伝子変異による難聴患者は臨床的に特徴的な聴力像を有することを見出しており、今後難聴のメカニズムに関する研究の基盤となることが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究では優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報および治療実態の調査を行いデータベース化することで、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者の実態把握と治療法確立のための基盤整備を行った。その結果、従来より経験的に指摘されていた優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の患者では難聴の程度が比較的軽度であり、かつ進行性の難聴である場合が多いために、相対的に難聴発見年齢がおくれるという特徴を科学的に明確にすることができた。
ガイドライン等の開発
本研究では優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者を対象に、難聴の経過や随伴症状などの臨床情報および治療実態の調査を行いデータベース化することで、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者の実態把握と治療法確立のための基盤整備を行った。その結果、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の臨床的特徴を科学的に明確にすることができた。本研究の成果を踏まえて、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴に関する診療ガイドライン(試案)の改定を行った。
その他行政的観点からの成果
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の罹患頻度は、非症候群性難聴患者(の約10%程度と推定されているが、日本における実態把握はほとんど行われていないため、本当の頻度は不明確である。本研究により、日本人難聴患者に占める優性遺伝形式をとる遺伝性難聴患者の割合は12%であり、海外の報告の10%とほぼ同程度であることが明らかとなった。また、治療の中心は補聴器であり、人工内耳装用者は全体の4%であった。本データは、今後の社会保障などの基盤とデータとなると考えられる。
その他のインパクト
本研究により、原因遺伝子の解析を実施した、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、WFS1遺伝子では、原因遺伝子の種類および遺伝子変異の部位により臨床像が異なる事が明らかとなってきた。今後の研究の進展により、本研究の成果は今後の遺伝子診断の基盤情報となることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の診療ガイドライン(試案)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Moteki H, Naito Y, Fujiwara K et al.
Different cortical met abolic activation by visual stimuli possibl y due to different ti me courses of hearin g loss in patients wi th GJB2 and SLC26 A4 mutations.
Acta Oto-Lar yngol. , 131 , 1232-1236  (2011)
原著論文2
Usami, S. Nishio, S. Nagano, M et al.
Simultaneous Screening of Multiple Mutations by Invader Assay Improves Molecular Diagnosis of Hereditary Hearing Loss: A Multicenter Study.
PLoS One. , 7 , 31276-  (2012)
原著論文3
Usami S, Miyagawa M, Nishio S et al.
Patients with CDH23 mutations and the 1555A>G mitochondrial mutations are good candidates for electric acoustic stimulation(EAS).
Acta Otolaryngol. , 132 , 377-384  (2012)
原著論文4
宇佐美真一
難聴の遺伝子診断
日本臨床 , 69 , 357-367  (2011)
原著論文5
宇佐美真一
難聴の遺伝子診断
Audiology Japan , 54 , 44-55  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2017-06-28

収支報告書

文献番号
201128146Z