肥厚性皮膚骨膜症における遺伝子診断と生化学的検査を踏まえた新しい病型分類の提言と既存治療法の再評価に関する研究

文献情報

文献番号
201128133A
報告書区分
総括
研究課題名
肥厚性皮膚骨膜症における遺伝子診断と生化学的検査を踏まえた新しい病型分類の提言と既存治療法の再評価に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-174
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
新関 寛徳(独立行政法人 国立成育医療研究センター  皮膚科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 虎之(独立行政法人 国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 関 敦仁(独立行政法人 国立成育医療研究センター 整形外科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学医学部遺伝子医学研究室)
  • 石河 晃(東邦大学医学部第1皮膚科)
  • 大塚 篤司(京都大学医学部皮膚科)
  • 桑原 理充(奈良県立医科大学皮膚科・形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当該研究班は、pachydermoperiostosisにおいてHPGD遺伝子変異発見を踏まえ、新しい病型分類と治療法の検討を行うために発足した。しかし、平成21年度、当該班が渉猟した5症例ではHPGD遺伝子変異は見いだされなかった。そこで、本邦の患者の実態を明らかにし、新規責任遺伝子を発見するための症例集積のために、平成22年度に全国調査(1次)に続き、全国調査(2次)を実施した。
研究方法
平成23年度はその結果を受け、全国調査(2次)を実施した。倫理審査承認後、97施設へ調査票を郵送した。
調査で渉猟した症例について新規原因遺伝子発見のためのエクソーム解析による新規原因遺伝子を探索した。
結果と考察
2次調査では43例の回答を得た。重複などを除き、33例が検討可能であった。33例の臨床亜型は完全型21例、不全型11例、3主徴のうち頭部脳回転様皮膚単独症例2例であった。集計の結果、本邦ではじめて3主徴の発症順番が明らかになった。脳回転様皮膚の発症が一番遅いので、完全型、不全型の判定は確定診断時に皮膚肥厚が進行性であればすぐに判定するべきではないと結論された。治療効果では、NSAIDs有効例が投与症例の半数以上で有効であり、原因遺伝子が判明した現在、プロスタグランジン合成阻害効果の再検討が期待される。2次調査の集計結果は一般向けに再編集し、ホームページに収録した。

エクソーム解析では完全型患者1人、不全型患者2人の計3人がプロスタグランジントランスポーター(PGT)遺伝子SLCO2A1(solute carrier organic anion transporter family, member 2A1)に突然変異をコンパウンドヘテロ接合で有していることを発見し、常染色体劣性遺伝形式の新規の原因遺伝子と判定した。見出した遺伝子変異は計5種類(ナンセンス変異、イントロン7のスプライスドナーサイト変異、4アミノ酸欠失、2種類のミスセンス変異)であった。SLCO2A1遺伝子変異は不全型、完全型を超えて発見され、今後の臨床分類の再検討や既存治療の再検討に大きく貢献すると期待される。
結論
現時点では当該疾患は遺伝子診断により完全型と不全型を原因別に分類することはできないが、今後症例の集積によりphenotype-genotype correlationに置き換えるまでは、現在の臨床分類は有用な分類と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128133B
報告書区分
総合
研究課題名
肥厚性皮膚骨膜症における遺伝子診断と生化学的検査を踏まえた新しい病型分類の提言と既存治療法の再評価に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-174
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
新関 寛徳(独立行政法人 国立成育医療研究センター  皮膚科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 虎之(独立行政法人 国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 関 敦仁 (独立行政法人 国立成育医療研究センター 整形外科)
  • 工藤 純(慶應義塾大学医学部遺伝子医学研究室)
  • 石河 晃 (東邦大学医学部第1皮膚科)
  • 椛島 健治 (京都大学医学部皮膚科)
  • 大塚 篤司(京都大学医学部皮膚科)
  • 桑原 理充(奈良県立医科大学皮膚科・形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当該研究班の目的はPachydermoperiostosis(PDP、肥厚性皮膚骨膜症)の病型分類について、遺伝子診断や生化学検査を導入することにより再検討を行なうことである。  

研究方法
1)全国調査(1次、2次)を実施した。2次調査の実施前に倫理審査で承認をうけた。
2)皮膚生検組織標本について特殊染色を交えて検討した。
3)原因遺伝子の検索では、HPGD遺伝子変異を見出さないことを確認したうえで、エクソーム法を実施した。
4)血清プロスタグランジン(PG)E2濃度を測定した。
結果と考察
当該疾患では本邦初めて第一次全国調査を実施し、推定患者数42.9であった。2次調査では43症例について返答があり、重複例、記入辞退などを除き、33例(完全型21例、不全型11例、3主徴のうち頭部脳回転様皮膚単独症例2例)を集計に用いた。
集計の結果、3主徴の発症順番では脳回転様皮膚の発症が一番遅かった。完全型、不全型の臨床亜型の診断は確定診断時に皮膚肥厚が進行性であればすぐに判定するべきではないことが明らかになった。治療効果では、NSAIDs有効例が投与症例の半数以上で有効であり、原因遺伝子が判明したPG合成阻害効果の再検討が期待される。2次調査の集計結果は一般向けに再編集し、ホームページに収録した。
生化学検査では、完全型でPGE2高値であった。新規原因遺伝子発見のためのエクソーム解析による新規原因遺伝子探索を実施したところ、完全型患者1人、不全型患者2人の計3人がPGトランスポーター(PGT)遺伝子SLCO2A1に計5種類(ナンセンス変異、スプライスドナーサイト変異、欠失変異、2種類のミスセンス変異)の突然変異をコンパウンドヘテロ接合で有していることを発見し、常染色体劣性遺伝形式の新規原因遺伝子と判定した。SLCO2A1遺伝子変異は不全型、完全型を超えて発見され、今後の臨床分類の再検討や既存治療の再検討に大きく貢献すると期待される。  
5例の皮膚病理組織学検討では、不全型症例でも完全型症例と共通の機序として、脂腺・汗腺の上皮系である皮膚付属器の増殖と、膠原線維の増生と弾力線維の消失がみいだされた。
結論
以上より、現時点では完全型と不全型を原因別に分類することはできないが、変異の性質、皮膚病理所見、合併症に特徴があることから本邦のPDPについては未だTouraineの完全型、不全型の分類は臨床的に有用である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128133C

成果

専門的・学術的観点からの成果
原因遺伝子としては2つめの新規原因遺伝子を見出した。1つめの原因遺伝子の変異は日本人では未だみつかっていないので、事実上日本人では初めての原因遺伝子変異を明らかにした。
臨床的観点からの成果
世界的に普及している完全型、不全型の臨床分類を超えて、1つの原因遺伝子に突然変異が見いだされた。したがって、この臨床分類は、将来的には遺伝子型と表現型の関係として認識されうることを示した。したがって、完全型、不全型ともにプロスタグランジンE2が過剰であることにより生じることを強く示唆した。
ガイドライン等の開発
患者数が少ないことより2次調査と遺伝子診断は未だ十分な症例数を検討したとはいえない状態である。しかし、今後調査が進み症例が集積されることによりガイドライン作成へとつなげる礎を築いた。
平成25年度に診断基準の策定を行った。
その他行政的観点からの成果
稀少疾患であり、患者の通院診療科も多岐にわたるため、複数症例を診療している医療機関は皆無に等しかった。班会議を立ち上げたことにより医療連携が促進され、最寄の班員の所属施設に来院、診療データを集積することが可能になった。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
1件
ほか、班員の報告した関連論文1件
原著論文(英文等)
5件
2件追加あり
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
重松由紀子、新関寛徳、他:Pachydermoperiostosisの1例、第826回日本皮膚科学会東京地方会、2009.9.12 他1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
疾患ホームページ(医療従事者用、一般向け):http://www.pdp-irp.org/

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
重松由紀子、新関寛徳、野崎誠、佐々木りか子、他
完全型Pachydermoperiostosisの1例
臨床皮膚科 , 64 (3) , 221-224  (2010)
原著論文2
Kyoko Nakahigashi, Atsushi Otsuka, Hiromi Doi, Satsuki Tanaka,et al
Prostaglandin E2 increase in pachydermoperiostosis without 15-hydroprostaglandin dehydrogenase mutations, in press
Acta Dermato-Venereologica , 93 (1) , 118-119  (2013)
原著論文3
Sasaki T, Niizeki H, Shimizu A, et al
Identification of mutations in the prostaglandin transporter gene SLCO2A1 and its phenotype-genotype correlation in Japanese patients with pachydermoperiostosis.
J Dermatol Sci , 68 (1) , 36-44  (2012)
原著論文4
Niizeki H, Shiohama A, Sasaki T, et al
The novel SLCO2A1 heterozygous missense mutation p.E427K and nonsense mutation p.R603* in a female patient with pachydermoperiostosis with an atypical phenotype.
Br J Dermatol , 170 (5) , 1187-1189  (2014)
10.1111/bjd.12790
原著論文5
Niizeki H, Shiohama A, Sasaki T, et al
The complete type of pachydermoperiostosis: A novel nonsense mutation p.E141* of the SLCO2A1 gene
J Dermatol Sci , 75 (3) , 193-195  (2014)
10.1016/j.jdermsci.2014.05.008.
原著論文6
Nakazawa S, Niizeki H, Matsuda M, et al
Involvement of prostaglandin E2 in the first Japanese case of pachydermoperiostosis with HPGD mutation and recalcitrant leg ulcer
J Dermatol Sci , 78 (2) , 153-155  (2015)
10.1016/j.jdermsci.2015.02.002.

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-06-29

収支報告書

文献番号
201128133Z