文献情報
文献番号
201128130A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓錯位症候群の疫学と治療実態に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-171
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(学校法人 東京女子医科大学 医学部循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
- 松岡 瑠美子(東邦大学 小児科第1講座)
- 白石 公(国立循環器病センター 小児循環器診療部)
- 山岸 敬幸(慶應義塾大学 医学部小児科)
- 小川 俊一(日本医科大学 小児科学)
- 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器科)
- 松裏 裕行(東邦大学医療センター大森病院 小児循環器学)
- 竹島 浩(京都大学 大学院薬学研究科)
- 石川 司朗(福岡市立こども病院 感染症センター循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
無脾症と多脾症からなる内臓錯位症候群は、複雑心奇形に内臓異常や免疫低下を合併する症候群である。希な原因不明の疾患で、未だ効果的な治療方法は未確立、予後不良である。我が国の内臓錯位症候群患者を診療している主要施設による多施設共同疫学研究を行い、内臓錯位症候群の病態把握、自然歴の把握、手術法と手術時期、感染予防や予後、疾患関連遺伝子の検索に関するデータ分析を行い内臓錯位症候群における治療、管理のための指針を作成することを目的とする。
研究方法
先天性心疾患を伴う内臓錯位症候群の小児の病歴簿を調べ、病態、診断方法、心奇形の組み合わせ、手術法、手術成績、予後、内臓奇形の頻度、重症細菌感染症の頻度、罹患歴、抗生剤投与、ワクチン接種の有無、重症感染からの死亡率等のデータを多施設共同で調べるため、142項目からなる調査票を作成した。これを各施設の研究分担者に配布し、本症候群の実態把握を行った。
結果と考察
無脾症患者における重症感染症の罹患率は、内臓錯位症候群を伴わない先天性心疾患患者に比べて、有意(p<0.05)に高い罹患率を示した。また本症候群の原因遺伝子解析に関し、本疾患34症例について、HIVEP2遺伝子の全エクソンの遺伝子解析の結果、エクソン5にミスセンス変異が2カ所、認められた。更にACVRIIB、Lefty A-B、WNT11、DHTX遺伝子のSSCP法を用いた遺伝子検索を行った結果、1例について、WNT11の非翻訳領域の塩基番号1209番のGがAへ変異していた。さらに1例で、ACVRIIBのイントロン2の+7部位でCがGへ変異していた。さらに疾患候補遺伝子と考えられるZIC3、CFC1、NODALの全エクソンの遺伝子変異の検索を本症候群86例について行った結果、1例にCFC1遺伝子のExon4内の338番塩基が、AからGへ変異する点突然変異をHomozygosityで認めた。この変異は新規の遺伝子異常であり、アミノ酸113番がTyrからCysに置換される。このアミノ酸置換は公開されているSNPデータベース(dbSNP、1000 Genomes)でもSNPとしての登録はなかった。この遺伝子変異が機能異常を引き起こすか否かのさらなる検討が必要である。
結論
予想以上に無脾症患者における重症感染症の罹患率が高いことが解った。このデータは、世界でも初めて得られたデータである。重症感染症の治療、予防が重要であるが、感染症治療予防の改善法については、さらなる検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2013-03-10
更新日
-