鰓弓耳腎(BOR)症候群の遺伝子診断法の確立と診療体制モデル構築に関する研究

文献情報

文献番号
201128128A
報告書区分
総括
研究課題名
鰓弓耳腎(BOR)症候群の遺伝子診断法の確立と診療体制モデル構築に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-168
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 一誠(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 伊藤 秀一(独立行政法人国立成育医療研究センター 腎臓科)
  • 松永 達雄(独立行政法人国立病院機構 東京医療センター臨床研究センター 耳鼻咽喉科)
  • 貝藤 裕史(神戸大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
鰓弓耳腎(branchio-oto-renal, BOR)症候群は鰓原性奇形、難聴、腎尿路奇形を3主徴とする症候群である。本年度の目的は、1.BOR 症候群症例の遺伝子解析をすすめ原因遺伝子の同定および新規原因遺伝子の解明を行うこと、2.BOR 症候群の遺伝子診断指針を確立することとした。
研究方法
BOR 症候群では主に EYA1の変異が認められる。そのため、当研究班では EYA1の直接シークエンス法での検索を行うとともに、簡便で安価な multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA) 法を用いてEYA1の解析を行うこととした。BOR 症候群はEYA1のほか、SIX1、SALL1の変異でも認められることがあるため、EYA1の解析で変異が認められなかった場合は SIX1およびSALL1の直接シークエンス法による解析を行った。これらの解析でも変異が認められなかった場合はアレイ CGH解析を行うことで原因遺伝子の同定を試みた。また、これまでの検索結果をもとにBOR症候群の遺伝子診断方針を考案した。
結果と考察
遺伝子診断については 6家系11例で原因遺伝子が同定できた。既報通り、EYA1変異によるものが多かったが、簡易で安価な検査であるMLPAによるEYA 変異の同定が4家系7症例について可能であった。またEYA1変異が認められなかった1症例に対しアレイCGH検査を施行したところ、SALL1を含む 16q12.1-q12.2領域のヘテロ欠失を認めた。これまでSALL1変異によるBOR症候群は1例しか報告がなく、またヘテロ全欠失による例は本症例が初めてであった。この変異はSALL1に対するMLPA解析により確認できた。本研究により、BOR症候群におけるMLPAおよびアレイCGH法の有用性を示すことができた。
結論
BOR症候群に対する遺伝子診断指針を策定した。EYA1の直接解析をまず行い、変異が認められない場合はEYA1のMLPA検査を施行するのがよいと考えた。EYA1 の変異が認められない場合は SIX1、SALL1の解析を行う。SALL1のMLPA及びアレイCGHは有用である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128128B
報告書区分
総合
研究課題名
鰓弓耳腎(BOR)症候群の遺伝子診断法の確立と診療体制モデル構築に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-168
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 一誠(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 伊藤 秀一(独立行政法人国立成育医療研究センター 腎臓科)
  • 松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 耳鼻咽喉科)
  • 貝藤 裕史(神戸大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1.わが国におけるBOR症候群の診療実態を把握すること、2.包括的なBOR症候群の遺伝子診断システムを開発し、さらには新規原因遺伝子を同定すること、 3.BOR症候群の診療体制モデルを構築することである。
研究方法
平成22年度に医療機関、および患者本人または患者家族に診療実態に関するアンケート調査を行った。 EYA1の直接シークエンス法での検索を行うとともに、MLPA法を用いてEYA1の解析を行うこととした。EYA1の解析で変異が認められなかった場合は SIX1およびSALL1の直接シークエンス法による解析を行った。これらの解析でも変異が認められなかった場合はアレイ CGH解析を行った。また、これまでの検索結果をもとにBOR症候群の遺伝子診断方針を考案した。BOR症候群の診療体制モデルの構築を試みた。
結果と考察
医療機関からの回答から、受診の契機が難聴などの耳鼻咽喉科的異常によるものが多いことがわかった。難聴は補聴器や外科的手術により改善するものが含まれており、早期発見により難聴の対策を行うことが可能であると考えられた。患者側への調査では、病気が進行するか、遺伝するかについての不安や、難聴に対する経済的支援の要望、疾患に対する社会的理解を求める声が寄せられた。8家系13症例で原因遺伝子が同定できた。EYA1変異によるものが多かったが、MLPAによるEYA1変異の同定が5家系8症例について可能であった。うち1例はLINE1の置換挿入をともなっており、遺伝学的にも大変貴重な症例であった。またEYA1変異が認められなかった1症例に対しアレイCGH検査を施行したところ、SALL1を含む16q12.1-q12.2領域のヘテロ欠失を認めた。これまでSALL1変異によるBOR症候群は1例しか報告がなく、またヘテロ全欠失による例は本症例が初めてであった。本研究により、BOR症候群におけるMLPAおよびアレイCGH法の有用性を示すことができた。BOR症候群の診療体制モデル構築に関しては、国立成育医療研究センターの耳鼻咽喉科、腎臓・リウマチ・膠原病科及び遺伝診療科、東京医療センター臨床研究センター、神戸大学小児科による総合的診断・診療体制モデルの検討が行われ、臨床症状、家族歴聴取によるBOR症候群の早期発見、早期からの難聴対策、腎疾患の有無についての検索およびフォロー、さらに遺伝相談に対応できる体制を構築した。
結論
BOR症候群患者の診療実態を調査し、包括的な遺伝子解析システムを構築した。さらに総合的な診断・診療体制を整備した。今後も本症候群に対する研究、社会的支援を継続する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128128C

成果

専門的・学術的観点からの成果
鰓弓耳腎(branchio-oto-renal, BOR)症候群は鰓原性奇形、難聴、腎尿路奇形を 3 主徴とする症候群である。本研究班では、①BOR 症候群症例の原因遺伝子の同定および新規原因遺伝子の解明、②BOR 症候群の遺伝子診断指針を確立、③BOR症候群の総合的診断・診療体制モデルの構築を行った。
臨床的観点からの成果
BOR症候群の8家系13症例で原因遺伝子が同定できた。EYA1変異によるものが多かったが、MLPAによるEYA1変異の同定が5家系8症例について可能であった。1例はLINE1の置換挿入をともなっていた。EYA1変異が認められなかった1症例で、アレイCGH検査によりSALL1を含む16q12.1-q12.2領域のヘテロ欠失を認めた。SALL1ヘテロ全欠失による例は本症例が初めてであった。本研究により、BOR症候群におけるMLPAおよびアレイCGH法の有用性を示すことができた。
ガイドライン等の開発
BOR 症候群に対する遺伝子診断指針を策定した。EYA1 の直接シークエンスをまず行い、変異が認められない場合は EYA1 の MLPA 検査を施行するのがよいと考えた。EYA1の変異が認められない場合は SIX1、SALL1 の解析を行う。SALL1 の MLPA やゲノムワイドアレイCGHも有用である。
その他行政的観点からの成果
国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科、腎臓・リウマチ・膠原病科、遺伝診療科、東京医療センター臨床研究センター、神戸大学小児科は、本症候群の早期発見、難聴対策、腎疾患の有無の検索およびフォロー、遺伝相談に対応できる総合的な診断・診療体制を構築した。これは他地域での本症候群の診断・診療体制のモデルとなり得るものである。なお、本症候群が指定難病となるにあたり本研究班メンバーが診断基準等の作成に貢献した。
その他のインパクト
医療機関、および患者本人または患者家族に診療実態に関するアンケート調査を行ったところ、受診の契機が鰓原性奇形や難聴などの耳鼻咽喉科的異常によるものが多いことがわかった。また、難聴は補聴器や外科的手術により改善するものが含まれており、BOR症候群の早期発見により難聴の対策を行うことが可能であると思われた。また患者側への調査では、病気が進行するかどうか、遺伝するかどうかについての不安や、難聴に対する経済的支援の要望、疾患に対する社会的理解を求める声が寄せられた。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
50件
その他論文(英文等)
47件
学会発表(国内学会)
29件
学会発表(国際学会等)
57件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1


原著論文2


公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128128Z