特定疾患に関する評価研究班

文献情報

文献番号
199701000A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患に関する評価研究班
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
曾根 啓一(新潟県福祉保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 高野謙二(自治医科大学学生部)
  • 照井哲(日本大学医学部公衆衛生学)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 横断的基盤研究グループ 政策的研究部門
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定疾患は原因不明で治療方法も確立されていないため、専門医が内外の文献や薬理作用に基づいて個々の患者の特性に応じた治療方針を決定している。従って、特定疾患に関する研究は、治療に直結する成果が期待されており、その計画段階から報告まで厳密な評価を受けるとともに、治療効果、QOLの改善及び医療・福祉的効果まで評価されなければならない。これらを視野に入れた包括的な評価方法の検討を目的とする。
研究方法
昨年度は米国の評価システムを中心に調査報告したが、本年度は欧州の情報を蒐集し、入手した資料から各国の特徴について検討した。さらに治療面の評価について検討し、医療・福祉的な評価については試験的に評価モデルの作成を試みた。        
結果と考察
1.特定疾患調査研究事業における研究の評価システムを構築する場合、個々の疾患に対する基礎的研究(pure science)成果に対する評価方法の検討が重要である。欧州から回答のあった幾つかの資料について評価方法を比較検討すると、昨年報告した米国のNational Institute of Health(NIH)の研究評価システムをモデルに作成していると考えられた。NIHではピアレビューによる事前評価が公開されており、各分野ごとにNIH以外のそれぞれ20~40 名の専門家から構成された約70名の評価委員会(Study Section)を設け、研究課題の採択を行っている。これらの委員会は年間に数回開催されている。我が国においては、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が平成9年8月7日に告示された。これを踏まえ、平成10年1月28日には「厚生科学の研究に係わる評価の実施方法に関する指針」が告示されている。ここでは、評価の実施体制が充実され、
?事前評価の導入、評価担当専門家による外部評価、
?評価の基準、基本方針、結果等についての積極的情報公開、
?評価結果の適切な活用、
?評価支援体制の整備、
?それぞれの研究に適った評価指標の設定、
が盛り込まれている。さらに評価方法については、事前評価の強化、中間評価の導入、事後評価の改善が行われている。ここでは、書面により専門的・学術的観点からの評点と行政的観点からの評点の両面から総合的に評価を行うものとされている。特定疾患においてもこの指針に沿って研究評価システムを構築することが必要である。
2.特定疾患患者は身体障害者福祉法の対象に該当する可能性がある。特定疾患はその難治性から医療受給証が発行されるため、対象集団の把握は比較的容易と考えられる。各研究班において、患者のプライバシィに配慮しながら症例のデータ集積化を進める必要がある。臨床現場では基礎研究の成果を踏まえて治療が行われるが、その成果については研究班の報告会や学会等で行われている。しかし、多数のコホート集団における治療効果判定の評価は実施されていないのが現状であると推察される。特定疾患患者のデータバンクを構築し、?使用薬剤の効果及び実施した理学療法等の効果、?副作用、??&?を踏まえての費用便益効果についても評価すべきである。
3.研究成果について、患者のADL及びQOLの向上にどのように寄与したかという評価(医療・福祉的な評価)wo、治療サイド及び患者サイドから行われなければならない。治療サイドでは、個々の疾患別に治療期間の推移とQOLの評価を行っていないため、当班は試験的に医療・福祉的な評価モデルを提言した。これは、的確な社会医学的評価の指標となるため、早期に導入する必要がある。患者サイドでは、Focus Group Interview Method を用いて、問題の焦点を定め、その結果に基づきアンケート調査からデータを収集し、経年的比較検討を行い、評価する必要がある。
結論
特定疾患における研究はその性質上、?基礎的研究成果の評価、?その成果を用いて患者の治療にあたった場合の臨床的評価、?患者のADL及びQOLが向上したかどうかという医療・福祉的な評価が行われなければならない。この3つの評価の中で、?について組織だって検討している研究班は少ないようである。また、?については対象者の把握が比較的容易であるにもかかわらず殆ど行われていないのが現状である。対象者のデータベース化を構築し、?&?の観点からの研究の評価も行われるべきである。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)