本邦における反復胞状奇胎症例の実態把握と確定診断法の開発

文献情報

文献番号
201128119A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦における反復胞状奇胎症例の実態把握と確定診断法の開発
課題番号
H22-難治・一般-159
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
秦 健一郎(国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 井箟一彦(和歌山県立医科大学 産婦人科)
  • 生水真紀夫(千葉大学大学院 生殖機能病態学)
  • 杉浦真弓(名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科)
  • 齋藤滋(富山大学大学院医学薬学研究部産科婦人科学)
  • 和氣徳夫(九州大学大学院生殖病態生理学)
  • 諸隈誠一(九州大学病院産科婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外の反復胞状奇胎症例で、関連遺伝子変異が同定されたが、本邦の反復胞状奇胎症例の分子遺伝学的解析は行われていない。そこで本研究計画では、全国規模で反復胞状奇胎症例を照会し、候補症例検体および臨床情報を収集するとともに、本邦の反復胞状奇胎症例に最適な確定診断法の開発と、臨床的特徴を抽出する事を目的とし、研究体制の構築と解析を進めている。
研究方法
本年度は、初年度に引き続き、反復胞状奇胎症例の収集を行った。正常(人工流産)絨毛と、異常妊娠症例の関連遺伝子配列解析(海外の反復胞状奇胎家系例で同定された関連遺伝子)の解析を行い、日本人集団で高頻度に認められる同関連遺伝子多型を同定した。また、絨毛組織の網羅的なDNAメチル化解析を行った。
結果と考察
現在国内の医療機関、関連学術団体および関連する厚労省研究班に呼び掛け、症例照会を行っている。症例の照会と並行し、対照症例となる胞状奇胎の既往の無い経産婦末梢血、正常妊娠初期絨毛、すでに形態学的診断のついている全胞状奇胎の収集を進めている。
正常例も含め、関連遺伝子に7箇所の未知の多型が見つかった。これらは、日本人集団で比較的頻度の高い多型と考えられる。海外症例で報告されている関連因子ホモ変異は同定されなかったが、これまで報告されていなかった新規のホモ変異が同定された。
今後の課題として、さらに解析対象領域を拡げた診断法の確立、分子遺伝学的診断に基づいた過去症例の検証、が重要と考えられ、これらの成果から自ずと、新たな治療管理法の提言、が導き出される。一方で、これらの成果を基にし、着床前診断、類縁疾患を含めた新たな疾患概念の検証、が将来的に求められる。
結論
本邦における反復胞状奇胎の実態を把握し、分子遺伝学的解析を駆使した確定診断法を確立することを目的とし、研究体制を確立した。全国規模の疑い症例の照会を行うと共に、分担研究者と共同研究者の医療機関あるいは関連医療機関の症例を後ろ向きに検索し、疑い症例を見出した。これらの疑い症例および妊娠分娩歴に特に異常を有さない日本人集団で比較的頻度の高いと推測される関連遺伝子多型を7箇所見出すと共に、本邦初の関連遺伝子ホモ変異症例を同定することに成功した。今後は更に解析候補領域を増やし、分子遺伝学的診断の応用範囲を広げていく。

公開日・更新日

公開日
2013-03-04
更新日
-

文献情報

文献番号
201128119B
報告書区分
総合
研究課題名
本邦における反復胞状奇胎症例の実態把握と確定診断法の開発
課題番号
H22-難治・一般-159
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
秦 健一郎(国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 井箟一彦(和歌山県立医科大学 産婦人科学教室)
  • 生水真紀夫(千葉大学大学院 生殖機能病態学)
  • 杉浦真弓(名古屋市立大学大学院医学研究科 産婦人科学教室)
  • 齋藤滋(富山大学大学院医学薬学研究部 産婦人科学教室)
  • 和氣徳夫(九州大学大学院 生殖病態生理学)
  • 諸隈誠一(九州大学病院 産科婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全胞状奇胎には、反復して発症する症例が存在し、通常の全胞状奇胎と極めて異なる病因を有することが、最近の遺伝学的研究から明らかとなった。すなわち反復胞状奇胎には、従来の形態学的診断に加え、遺伝子解析による確定診断が必須である。しかし本邦の反復胞状奇胎症例を検討した研究は見当たらない。
そこで本研究計画では、全国規模で反復胞状奇胎症例を照会し、遺伝子診断を行い、反復胞状奇胎の発症起源を分子遺伝学的に確定した。
研究方法
全国の医療機関に反復胞状奇胎症例を照会するとともに、他の厚労省研究班および関連学会である日本絨毛性疾患研究会のネットワークに協力を仰いだ。
候補症例患者(母体)の末梢血および奇胎組織標本からゲノムDNAを回収した。海外症例で同定されている関連遺伝子変異解析と併せて、多型マーカー解析により奇胎の発症起源を決定した。また、独自の手法を開発して網羅的DNAメチル化解析を行った。
結果と考察
合計5例の反復胞状奇胎候補諸例とともに、対照症例となる胞状奇胎の既往の無い経産婦末梢血を50例以上、人工妊娠中絶例の絨毛を15例、雄核発生の胞状奇胎10例を収集した。
候補症例のうち一例から、関連遺伝子のホモ変異を同定した。
本解析結果は、本邦で初の症例報告であり、またみつかった変異は、これまで報告されていなかった新規変異である。
本研究により、日本人集団で高頻度に認められる一塩基多様性および、新規のホモナンセンス変異の同定に成功したが、それでも診断不能だった症例に関しては、他の遺伝子制御領域(イントロンやプロモーター領域などを含めた合計約30,000bp)まで拡げた解析や、最近報告された新たな関連遺伝子変異の追加検討が必要である。診断法の確立に伴い、今後は着床前診断への応用展開が期待できる。また海外の報告では、同様の異常が様々な絨毛性疾患あるいは流産にも存在する可能性が指摘されており、新たな病態概念の確立と、新たな診断・治療法の開発の必要性が予想される。
結論
全国規模の反復胞状奇胎疑い症例の照会を行い、日本人集団で比較的頻度が高いと推測されるNALP7遺伝子多型を7箇所見出すと共に、本邦初の関連遺伝子ホモ変異症例を同定することに成功した。本研究で確定診断法は確立できたが、得られた知見を元にさらに候補領域を絞り込み、簡便安価なスクリーニングへと応用展開していく。

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128119C

成果

専門的・学術的観点からの成果
反復して全胞状奇胎を呈する症例は、通常の全胞状奇胎と極めて異なる分子遺伝学的病因を有することが明らかとなったが、本邦の反復胞状奇胎症例を系統的に検討解析した研究は見当たらない。本研究計画では、全国規模で反復胞状奇胎症例を照会し、候補症例検体および臨床情報を収集し、母候補関連遺伝子の変異解析を行い、反復胞状奇胎の発症起源を分子遺伝学的に確定した。その結果、関連遺伝子の海外症例では報告されていない新規ホモ変異を同定した。本研究により、本邦初の反復胞状奇胎症例の同定と診断に成功した。
臨床的観点からの成果
本研究で、本邦初の反復胞状奇胎症例の確定診断に至った。反復胞状奇胎は、従来の形態学的診断では通常の全胞状奇胎と区別できないため、本研究で確立した遺伝子解析が確定診断に必須である。既知の関連遺伝子に変異が同定され、確定診断つけば、症例ごとに治療方針の選択・決定が可能となり、直接臨床に本研究成果を還元することができる。
ガイドライン等の開発
反復胞状奇胎遺伝子診断法の開発:日本人集団で頻度が高いと考えられる一塩基多型情報を取得し、精度の高い遺伝子診断を迅速に行うことが可能となった。この診断法により、実際に本邦初の反復胞状奇胎症例の遺伝子異常同定に成功した。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128119Z