遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)に関する遺伝疫学的検討と診療ガイドラインの作成

文献情報

文献番号
201128108A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)に関する遺伝疫学的検討と診療ガイドラインの作成
課題番号
H22-難治・一般-148
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
塩谷 隆信(秋田大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 勝敬(秋田大学 大学院医学系研究科環境保健学講座)
  • 橋本 学(秋田大学 大学院医学系研究科放射線医学講座)
  • 佐竹 將宏(秋田大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 佐野 正明(秋田大学 大学院医学系研究科呼吸器内科学講座)
  • 藤本 圭作(信州大学 医学部保健学専攻検査技術科学専攻)
  • 小泉 昭夫(京都大学 大学院医学系研究科環境衛生学講座)
  • 井上 博雅(鹿児島大学 大学院医歯学系研究科呼吸器内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,日本におけるオスラー病の発生頻度・有病率について検討し,さらに,「オスラー病に関する診療ガイドライン」を作成し,オスラー病の致死的合併症の予防,治療,さらに将来的には,本疾患の分子標的治療および遺伝子治療の足がかりを探ろうというものである.
研究方法
オスラー病と肺動静脈奇形(PAVM)の合併に関して全国疫学調査を行なった.全国の呼吸器内科専門医,指導医に対して第一次および第二次アンケート調査を行った.アンケート調査結果をもとに,全国のオスラー病の専門医による委員会により,オスラー病に関する診療ガイドラインを作成した.
結果と考察
全国の呼吸器内科専門医,指導医4,409名に対して, PAVMに関して,オスラー病合併•非合併について第一次アンケート調査を行なった.その結果,PAVM202例中,合併例は50例(20.7%)であった.次に,第一次調査で返信のあった専門医,指導医338名に対して第二次アンケート調査を行った.その結果は以下のとおりであった.オスラー病合併PAVMでは性差はみられないが,非合併PAVMでは女性が多い.オスラー病合併PAVMでは約80%に鼻出血が合併する.PAVMに起因する奇異性脳膿瘍は,殆ど脳に発症するが,脳以外にも生じる.オスラー病合併PAVMは多発例が多く,合併,非合併ともに下葉に多く分布する.PAVMの治療の多くはコイル塞栓術が施行されたが,約20%では外科的肺切除が行なわれた.オスラー病に関する診療ガイドラインとして,「オスラー病の診療マニュアル」を作成し,オスラー病の定義と診断,疫学,病院,臨床所見,治療と管理を明らかにした.
結論
日本においては,肺動静脈奇形の約20%にオスラー病が合併する.オスラー病のガイドラインとして「オスラー病の診療マニュアル」を発行した.

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128108B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)に関する遺伝疫学的検討と診療ガイドラインの作成
課題番号
H22-難治・一般-148
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
塩谷 隆信(秋田大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 勝敬(秋田大学 大学院医学系研究科環境保健学講座)
  • 橋本 学(秋田大学 大学院医学系研究科放射線医学講座)
  • 佐竹 將宏(秋田大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 佐野 正明(秋田大学 大学院医学系研究科呼吸器内科学講座)
  • 藤本 圭作(信州大学 医学部保健学科検査技術科学専攻)
  • 小泉 昭夫(京都大学 大学院医学系研究科環境衛生学講座)
  • 井上 博雅(鹿児島大学 大学院医歯学系研究科呼吸器内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,日本におけるオスラー病の発生頻度・有病率について遺伝疫学的に検討し,さらに,「オスラー病に関する診療ガイドライン」を作成し,オスラー病の致死的合併症の予防,治療,さらに将来的には,本疾患の分子標的治療および遺伝子治療の足がかりを探ろうというものである.
研究方法
オスラー病の原因遺伝子を連鎖解析と遺伝子配列決定により特定する.次に,オスラー病の事例研究を行い,秋田県における遺伝疫学調査を行う.オスラー病と肺動静脈奇形(PAVM)の合併に関して全国疫学調査を行なう.さらに,これらの結果を踏まえて,オスラー病に関する診療ガイドラインを発行する.
結果と考察
共通して連鎖の認められる染色体領域について,候補遺伝子の配列決定を行なった結果,オスラー病5家系において,HHT1(endoglin)の候補遺伝子としてIntron3,Exon7,Exon8,Exon11の4領域に変異を見いだした.秋田県における遺伝疫学調査の結果,その有病率は8,000-5,000人に1人と推定された.事例研究では,家族性PAVM家系を見いだし,本家系がHHT家系であることを確認した.全国の呼吸器内科専門医,指導医4,409名に対して第一次および第二次アンケート調査を行なった.その結果,PAVM202例中,オスラー病合併例は50例(20.7%)であった.オスラー病合併PAVMでは性差はみられないが,オスラー病非合併PAVMでは女性が多い.オスラー病合併PAVMでは約80%に鼻出血が合併する.PAVMに起因する奇異性脳膿瘍は,殆ど脳に発症するが,脳以外にも生じる.オスラー病合併PAVMは多発例が多く,オスラー病合併,非合併ともに下葉に多く分布する.PAVMの治療の多くはコイル塞栓術が施行されたが,約20%では外科的肺切除が行なわれた.オスラー病に関する診療ガイドラインとして,「オスラー病の診療マニュアル」を作成し,オスラー病の定義と診断,疫学,病因,臨床所見,治療と管理に関して明らかにした.
結論
日本におけるオスラー病の有病率は,遺伝疫学調査の結果,8,000-5,000人に1人と推定される,肺動静脈奇形の約20%にオスラー病が合併する.オスラー病のガイドラインとして「オスラー病の診療マニュアル」を発行した.

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128108C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本におけるオスラー病の責任遺伝子として,HHT1(endoglin)の候補遺伝子としてIntron3,Exon7,Exon8,Exon11の4領域おける変異を明らかにした. 次に,責任遺伝子調査も含めた疫学的調査を行い,日本におけるオスラー病患者の有病率を明らかにした.
臨床的観点からの成果
全国の呼吸器内科専門医,指導医4,409名に, 肺動静脈奇形(PAVM)のオスラー病合併,非合併について第一次および第二次アンケート調査を行なった.結果,PAVM202例中,合併例は50例(20.7%)だった.合併例では性差はないが,非合併例では女性が多い.合併例では約80%に鼻出血が併発する.PAVM起因の奇異性脳膿瘍は,脳に多く発症し,治療は,多くはコイル塞栓術が施行されたが,約20%で外科的肺切除が行なわれた.日本におけるオスラー病と肺動静脈奇形の関連,診療状況が明らかになった.

ガイドライン等の開発
遺伝子配列の解析,秋田県疫学調査,事例研究,全国疫学調査からオスラー病に関する診療ガイドラインを作成した.診療ガイドラインとして,「オスラー病の診療マニュアル」を発刊し,オスラー病の1.定義と診断,2.疫学,3.病因,4.臨床所見と画像診断,5.治療と管理,6.臨床マネージメントとフォローアップに関して明らかにした.
その他行政的観点からの成果
オスラー病診療ガイドラインの普及することにより,オスラー病患者の診断と治療レベルが向上し,オスラー病患者の予後が大きく改善されるのみならず,患者HRQOLおよびADLが飛躍的に向上し,国民の医療・福祉の発展に大きく寄与することが期待される.
その他のインパクト
平成22年度日本内科学会総会において,「日本におけるオスラー病の遺伝子疫学的検討」という演題が,plenary sessionに推薦され,口述発表を行った.
平成22年オスラー病患者会が設立された.平成25年オスラー病に関する臨床研究会であるHHTJAPANが設立された.

発表件数

原著論文(和文)
2件
塩谷隆信,他.家族性肺動脈奇形を合併したオスラー病.日内会誌 99(10):141-143, 2010 塩谷隆信.オスラー病.呼吸.33(9): 845-855, 2014.
原著論文(英文等)
2件
Nakayama,M.PAVM in Japan. Int Med 51:1677,2012. Komiyama,M.HHT in Japan.J Hum Genet59:37-41,2014.
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
Shioya, T, et al. A. Genetic epidemiology of HHT complicated with PAVM. Eur Respir J 38; 55S, 2011.
学会発表(国内学会)
2件
塩谷隆信,佐藤一洋,他.オスラー病の診断規準・治療方法.日呼吸誌,京都,2011. 佐藤一洋,塩谷隆信,他.肺動静脈奇形に対して塞栓術を行なったオスラー病の効果.日呼吸誌,京都,2011
学会発表(国際学会等)
2件
Shioya,T.Epidemiology of HHT in Japan.ERS,2011. Shioya,T.Genetic epidemiology of HHT.ATS,2013.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
塩谷隆信,佐竹將宏,中野真理子,他.
家族性肺動脈奇形を合併した遺伝性出血性末梢血管拡張症(0sler病)
日本内科学会雑誌 , 99 (10) , 141-143  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128108Z