中性脂肪蓄積心筋血管症の発見 -その疾患概念の確立、診断法、治療法の開発

文献情報

文献番号
201128101A
報告書区分
総括
研究課題名
中性脂肪蓄積心筋血管症の発見 -その疾患概念の確立、診断法、治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-141
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
平野 賢一(大阪大学大学院 医学系研究科循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 植田 初江(国立循環器病研究センター 臨床検査部病理)
  • 財満 信宏(近畿大学農学部 )
  • 加藤 誠也(琉球大学大学院医学研究科 細胞病理学講座)
  • 廣江 道昭(国立国際医療研究センター病院  循環器内科学)
  • 橋本 守(大阪大学大学院基礎工学研究科)
  • 長澤 康行(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科)
  • 小林 邦久(福岡大学筑紫病院内分泌・糖尿病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中性脂肪蓄積心筋血管症 (Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV) は、申請者らが我か国の心臓移植症例より見出した新規疾患単位であり、中性脂肪が心筋、冠状動脈硬化巣などに蓄積する結果、重症心不全、不整脈、虚血性心疾患などを来す難病である。2009 年からのTGCV研究班の活動により、本症は原発性の他に、糖尿病などに関連して発症する続発性TGCVの存在を明らかにした。本研究では続発性TGCVに関して、その病態の解析、診断法の開発、診断基準作成、治療法の開発を目的とする。
研究方法
1. TGCV症例の探索、集積:移植摘出心、剖検心、心筋生倹の病理学的解析、TGの生化学的定量を行った。進行糖尿病例の冠状動脈硬化について病理学的特徴を詳細に検討した。糖尿病モデルマウスを用いた検討も行った。
2. 診断法の開発:質量顕微鏡、ラマン散乱顕微鏡などを検討し、特にCTやMRIを用いた統合的アプローチによる画像診断法の確立を目指した。
3. 続発性TGCV の原因、病態の解明:各分担研究者による解析を行う。
4. 続発性TGCV の診断基準の作成:診断基準作成のための検討を行う。
5. TGCV 治療法の開発:原発性TGCVのために開発した栄養療法を、続発性TGCVに応用できるかどうかを検討した。
6. 国際シンポジウムの開催:国内外の状況を把握すると同時に、国際的コンソーシアムを形成する。
結果と考察
ATGL欠損症である原発性に加え、糖尿病に関連する続発生TGCVを発見した。続発性TGCVは求心性狭窄病変を持つ動脈硬化となることを明らかにし、質量顕微鏡によりコレステロールと中性脂肪の空間分布の違いを明瞭に可視化することに成功した。
続発性TGCVに対する栄養療法について、糖尿病モデルマウスにおいての検討を開始し分析している。
TGCV国際シンポジウムを開催し、国内外の研究者と研究協力体制を構築した
結論
病態の解析や検体の分析の結果から原発性の他に、糖尿病に関連した続発性TGCVを発見した。求心性の動脈硬化などの特徴を持ち、コレステロール蓄積型の動脈硬化症とは明らかに異なる病態であった。今後はさらに検討を重ね、簡便な診断方法や、栄養療法の確立を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128101B
報告書区分
総合
研究課題名
中性脂肪蓄積心筋血管症の発見 -その疾患概念の確立、診断法、治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-141
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
平野 賢一(大阪大学大学院 医学系研究科循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 植田 初江(国立循環器病研究センター 臨床検査部病理)
  • 財満 信宏(近畿大学農学部)
  • 加藤 誠也(琉球大学大学院医学研究科 細胞病理学講座)
  • 廣江 道昭(国立国際医療研究センター病院  循環器内科学)
  • 橋本 守(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
  • 長澤 康行(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科)
  • 小林 邦久(福岡大学筑紫病院内分泌・糖尿病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中性脂肪蓄積心筋血管症 (Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV) は、申請者らが見出した新規疾患単位であり、中性脂肪が心筋、冠状動脈硬化巣などに蓄積する結果、重症心不全、不整脈、虚血性心疾患などを来す難病である。本研究班は、原発性の他に糖尿病などに関連して発症する続発性TGCVの存在を明らかにした。本研究では続発性TGCVに関して、その病態の解析、診断基準作成、診断法や治療法の開発などを目的とする。さらに、既知の遺伝子変異を持たないTGCV疑い例の家系も見出したので、その原因を明らかにしたいと考えている。
研究方法
1. TGCV症例の探索、集積:移植摘出心、剖検心、心筋生倹の病理学的解析、TGの生化学的定量を行った。進行糖尿病例の冠状動脈硬化について病理学的特徴を詳細に検討した。糖尿病モデルマウスを用いた検討も行った。
2. 診断法の開発:質量顕微鏡、ラマン散乱顕微鏡などを検討し、CTやMRIを用いた統合的アプローチによる画像診断法の確立を目指した。
3. TGCV の原因、病態の解明:各分担研究者による解析を行う。
4. TGCV の診断基準の作成:原発性および続発性TGCV診断基準作成のための検討を行う。
5. 治療法の開発:原発性TGCVのための栄養療法の開発、改良に加え、続発性TGCVの栄養療法の検討。
6. 国際シンポジウムの開催:国内外の状況を把握すると同時に、国際的コンソーシアムを形成する。
結果と考察
ATGL欠損症である原発性TGCVの診断基準の作成および診断方法を開発した。原発性TGCVに対する栄養療法について、モデルマウスにおいての検討を行い効果を確認した。
既知の遺伝子変異を持たないTGCV疑い例の家系も見出した。
また、糖尿病に関連する続発生TGCVを発見し、診断基準や診断方法について検討している。
TGCV国際シンポジウムを開催し、国内外の研究者と研究協力体制を構築した。

結論
原発性性TGCVの診断基準、診断方法を開発した。続発性TGCVの診断基準、診断方法も開発しているので、今後はさらに国内外に情報発信を行って、本症の病態解明、簡便な診断方法や、栄養療法を確立し、TGCVの一日でも早い克服を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128101C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 原発性および続発性中性脂肪蓄積心筋血管症 (TGCV) の病態を解析・分析することで、心血管におけるエネルギー代謝の解明や、糖尿病に関連する心血管病の病態解明に寄与する。これらを基に、新しい観点から心不全や心筋症、糖尿病における心血管疾患に対する新しい治療法の開発を可能にすることが期待される。
臨床的観点からの成果
 糖尿病に関連する心血管病変の機序については、いまだ十分に解明されておらず、糖尿病合併症の大部分を占めるが、原発性TGCVや続発性TGCVの病態の解明、診断法や検査法の開発、中鎖脂肪酸を用いた特異的栄養療法の開発がなされれば、原発性TGCV患者に加えて、糖尿病患者の予後の改善に大きく寄与することができる。
ガイドライン等の開発
 原発性TGCVの診断基準および、診断フローチャートを作成した。中鎖脂肪酸を用いた特異的栄養療法のレジメを作成した。これにより、他施設や遠隔地に居住する症例にも標準化した特別食の提供に対応可能となった。また、特異的栄養療,の臨床試験を行うための準備として、財団法人 臨床研究情報センターと協力し、「原発性TGCVに対する特異的栄養療法の有効性、安全性に関する介入前後比較試験」のプロトコール作成を行った。
その他行政的観点からの成果
 我が国の糖尿病に罹患する890万人(推定)に対して、中鎖脂肪酸を用いた特異的栄養療法を行い、糖尿病合併症のほとんどを占める心血管障害を抑制しえる場合、糖尿病の予後の改善に大きく貢献し、医療経済上の効果は大きいと考える。
その他のインパクト
 2011年11月26日京都大学にて「The first international symposium on triglyceride deposit cardiomyovasculopathy and neutral lipid storage disease」を開催し、国内外50名の研究者と情報交換を行った。TGCVの国際的研究協力体制を構築し、症例の国際登録システムの構築を目指すコンセンサスを得た。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
33件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
2011年08月26日出願
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128101Z