ペリツェウス・メルツバッハー病の診断及び治療法の開発

文献情報

文献番号
201128097A
報告書区分
総括
研究課題名
ペリツェウス・メルツバッハー病の診断及び治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-137
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田上 昭人(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山内 淳司(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部)
  • 宮本 幸(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部 )
  • 鳥居 知宏(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PMDおよびPMLDの病態分子機構の解明とそれを基盤とした治療薬開発を目的とする。
研究方法
(1) PMDを模倣するin vitro病態共培養系
神経細胞は、ラットおよびマウスの後根神経節から単離した。オリゴデンドロサイトは、胎児ラット大脳から精製した。PMDを模倣する病態共培養系は、オリゴデンドロサイト前駆細胞に、PLP1をコードするレトロウィルスを感染させた。
(2) PLP1による細胞変性度の判定
オリゴデンドロサイトと神経細胞の共培養を行ったのち、抗ミエリン塩基性蛋白質(MBP)抗体を用いて染色を行った。
(3)治療薬標的分子のスクリーニングとその候補分子の同定
病態共培養系を用いて、化合物ライブラリーをPLP1レトロウィルス感染時にオリゴデンドロサイト前駆細胞に同時に添加し分化誘導を行った。PLP1によるミエリン形成不全を改善する効果の得られた共培養に関してRNAを抽出し標的分子候補を同定した。
(4) 標的分子の機能が阻害された遺伝子改変動物の作製
髄鞘形成グリア細胞特異的に標的キナーゼを阻害するトランスジェニックマウスの作製を行った。
(5) PMLD原因遺伝子の機能解析
グリア細胞特異的なプロモーター下流に変異を有するHyccin遺伝子を挿入したベクターを作製した。
(6) PMLDを模倣する病態共培養系の構築
Hyccinによる病態共培養系を構築するための準備段階として、Hyccin蛋白質がオリゴデンドロサイトのミエリン形成に及ぼす影響について解析を行った。
結果と考察
(1) PMDによる細胞変性を改善する標的分子であるキナーゼの生体内での検証
現在までに標的分子の機能阻害型トランスジーンの作製を行った。
(2) PMLD原因遺伝子の点変異型トランスジェニックマウスの作製
トランスジーンの作製を終了し、一般的なトランスジェニックマウスの作製法に従い、マウス受精卵へのインジェクションを行った。
(3) PMLD原因遺伝子の細胞内局在の解析
Hyccin野生型および変異型の細胞内局在を観察した結果、野生型と比較し変異型Hyccinが主に小胞体に多量に蓄積していることが判明した。
結論
in vitro病態共培養系を独自に開発しそれを用いて同定された治療標的因子候補の薬物効果を再び試験管内で実証することに成功した。今後、この系を応用し、PMLDを含む他のミエリン形成不全疾患を改善する薬物スクリーニング系の開発を行い、脱ミエリン疾患全般の病態機構解明を行う。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

文献情報

文献番号
201128097B
報告書区分
総合
研究課題名
ペリツェウス・メルツバッハー病の診断及び治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-137
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田上 昭人(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山内 淳司(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部 )
  • 宮本 幸(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部 )
  • 鳥居 知宏(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 薬剤治療研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PMDおよびPMLDの病態分子機構の解明とそれを基盤とした治療薬開発を目的とする。
研究方法
(1) PMDを模倣するin vitro病態共培養系を構築する。
(2)治療薬標的分子のスクリーニングとその候補分子を同定する。
(3) 標的分子の機能が阻害された遺伝子改変動物の作製を行う。
(4) PMLD原因遺伝子の機能解析をおこない、 PMLDを模倣する病態共培養系を構築する。
結果と考察
(1)共培養法およびPMDをin vitroで再現する簡便・迅速かつ独自の病態模倣共培養系を構築した。
(2)スクリーニングにより、標的分子候補を数個同定することに成功した。さらにその後、標的候補分子に対するshRNAをコードする発現ベクターを作製し、病態共培養モデルに還元することで、その効果を検証した。
(3)標的分子の機能阻害型トランスジーンの作製した。今後マウス受精卵へのインジェクション行う。
(4)変異型Hyccinが主に小胞体に多量に蓄積していた。またHyccin蛋白質をオリゴデンドロサイトに過剰発現させた結果、野生型、変異型共にミエリン形成能には影響を与えないことが明らかとなった。
今回同定した治療標的分子の中には、これまで治療候補として挙げられていない新規の分子も含まれているため、PMDやPMLD以外のミエリン形成不全を伴う疾患に応用できる可能性が考えられる。
結論
本研究では、in vitro病態共培養系を独自開発に成功し、治療標的因子候補のスクリーニングと同定を行い、さらに同定された候補分子を再びそのモデル系に還元することで、PMDを模倣する本病態モデル系の有効性を確認した。in vitroの病態共培養系とin vivo遺伝子改変動物を組み合わせることによって、迅速な治療薬開発研究の推進が可能となり、脱ミエリン疾患に対する治療薬候補の提示に少なからず貢献できるものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128097C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PMD病を含む神経変性疾患の薬物療法の開発には時間を要し、特に神経疾患の場合は他の疾患に比べて薬物療法の開発は困難とされている。本研究ではin vitroの系で神経変性疾患のメカニズムの解明や治療法の開発に結びつく培養系の開発、さらには化合物のスクリーニング報の開発及び化合物のスクリーニングに成功したことは学術的には意義が大きいと考えている。今後in vitroの系での評価を行うことにより臨床応用が可能なような化合物の同定が望まれる。
臨床的観点からの成果
in vitro病態共培養系を独自開発に成功し、それを用いて治療標的因子候補のスクリーニングと同定を進めてきた。その後、同定された候補分子を再びそのモデル系に還元することで、PMDを模倣する本病態モデル系の有効性を示すことができた。このように、in vitroの病態共培養系とin vivo遺伝子改変動物を組み合わせることによって、迅速な治療薬開発研究の推進が可能となり、脱ミエリン疾患に対する治療薬候補の提示に少なからず貢献できるものと考える。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128097Z