文献情報
文献番号
201128094A
報告書区分
総括
研究課題名
ビッカースタッフ型脳幹脳炎の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-134
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神田 隆(山口大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 楠 進(近畿大学 医学部)
- 山村 隆(国立精神神経医療センター 免疫研究部)
- 古賀 道明(山口大学 医学部)
- 中村 好一(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ビッカースタッフ型脳幹脳炎(BBE)の国内における実態を把握し、液性免疫機序の解析と先行感染因子の解析からBBEの病態を明らかにする。
研究方法
1.BBE二次調査の解析を行い、BBE診断基準を策定した。2.BBEの病態生理解明を目的とし、前年度から継続する以下の2つの基礎実験プロジェクトを施行した。(1)ガングリオシド抗体の反応性、B細胞の機能解析、血液脳関門破綻の3つの面から液性免疫機序の解明、(2)先行感染因子プロフィールの解明。
結果と考察
1.BBEの発症数は全国で年間約100人と推計された。男性にやや多く(1.3:1)、30歳代に発症のピークがあり、BBE以外の脳幹脳炎よりも若年発症であった。人工呼吸管理を要したのは約2割の症例であった。BBEは主として抗GQ1b抗体を伴う転帰良好な病態であるものの、一部は異なる病態により非定型的ながらBBEの臨床像をとり、予後不良例が含まれる疾患概念であることが明らかとなった。
2.(1a) BBEではGT1aと比べてGQ1bにより強く反応する抗体をもつ例が多かった。BBEではGQ1bそのものに特異性の高い抗体の上昇が示唆され、そのような反応性をもつ抗体の上昇が、中枢神経障害をきたす要因のひとつと考えられた。(1b) NMO末梢血でCD180陰性CD38強陽性CD27陽性CD19弱陽性細胞が有意に増加していた。この分画はプラズマブラストという特定のB細胞であり、抗アクアポリン4抗体産生能を有していた。BBEの液性免疫評価法としても有用であることが示された。(1c) BBE患者血清に併せてmatrix metalloproteinases (MMP)s の阻害剤であるGM6001を作用させるとヒトBBB構成内皮細胞のTEER値とclaudin-5蛋白量を有意に改善させた。 BBE患者血清はヒトBBB構成内皮細胞のMMP-9のmRNA発現量及び蛋白量を有意に上昇させた。 一方BBE患者血清はヒトBNB構成内皮細胞には影響を及ぼさず、MFS患者血清はヒトBBB/BNB構成内皮細胞いずれにも影響を及ぼさなかった。以上より、BBE患者血清を作用させるとBBBが破綻することが示された。BBEでは脳微小血管内皮細胞からautocrineに産生されるMMP-9がBBB機能の破綻に関与している可能性が想定された。(2) 本年度は血中抗サルモネラ抗体測定系をELISAで樹立し、BBE例で本抗体を測定したが、本菌による先行感染が示唆されたBBE例を見出すことはできなかった。
2.(1a) BBEではGT1aと比べてGQ1bにより強く反応する抗体をもつ例が多かった。BBEではGQ1bそのものに特異性の高い抗体の上昇が示唆され、そのような反応性をもつ抗体の上昇が、中枢神経障害をきたす要因のひとつと考えられた。(1b) NMO末梢血でCD180陰性CD38強陽性CD27陽性CD19弱陽性細胞が有意に増加していた。この分画はプラズマブラストという特定のB細胞であり、抗アクアポリン4抗体産生能を有していた。BBEの液性免疫評価法としても有用であることが示された。(1c) BBE患者血清に併せてmatrix metalloproteinases (MMP)s の阻害剤であるGM6001を作用させるとヒトBBB構成内皮細胞のTEER値とclaudin-5蛋白量を有意に改善させた。 BBE患者血清はヒトBBB構成内皮細胞のMMP-9のmRNA発現量及び蛋白量を有意に上昇させた。 一方BBE患者血清はヒトBNB構成内皮細胞には影響を及ぼさず、MFS患者血清はヒトBBB/BNB構成内皮細胞いずれにも影響を及ぼさなかった。以上より、BBE患者血清を作用させるとBBBが破綻することが示された。BBEでは脳微小血管内皮細胞からautocrineに産生されるMMP-9がBBB機能の破綻に関与している可能性が想定された。(2) 本年度は血中抗サルモネラ抗体測定系をELISAで樹立し、BBE例で本抗体を測定したが、本菌による先行感染が示唆されたBBE例を見出すことはできなかった。
結論
上記の成果をふまえ、BBEの病態の解明と特異的治療法の開発を行う基盤が整備できた。
公開日・更新日
公開日
2013-03-27
更新日
-