日本人脆弱X症候群および関連疾患の診断・治療推進の研究

文献情報

文献番号
201128086A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人脆弱X症候群および関連疾患の診断・治療推進の研究
課題番号
H22-難治・一般-126
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 生命機能研究支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 有波 忠雄(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 杉江 秀夫(自治医科大学 小児神経学)
  • 後藤 雄一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 分子遺伝学)
  • 佐々木 司(東京大学 大学院教育学研究科 )
  • 大野 耕策(鳥取大学 医学部)
  • 中島 健二(鳥取大学 医学部)
  • 石塚 文平(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 松浦 徹(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年までの研究で、日本人脆弱X症候群の臨床治療研究を推進するための体制を作ることが課題として浮かび上がった。そのために、大規模な実態調査研究を中心に研究を進めた。
研究方法
実態調査と遺伝子診断:小児神経学会小児神経専門医1,022名、日本児童青年精神医学会および日本小児精神神経学会の医師会員2451名、さらに全国の保健所653施設に所属する保健師に対するアンケート調査をまとめた。また、遺伝子診断を進めた。
(倫理面への配慮)
鳥取大学ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査委員会の承認ならびに関係機関の倫理審査委員会の承認を得ておこなった。
結果と考察
小児神経学会小児神経専門医1,022人中287名(28.1%)の回答を得た。脆弱X症候群の例は、わずか7件(13例)であった。日本児童青年精神医学会および日本小児精神神経学会の調査では、475人(26%)と270人(44%)から有効回答を得た。本症の検査をした事がある医師は、それぞれ44人(9.5%)と62人(23%)であった。有効回答を行った医師が現在担当している広汎性発達障害当事者はそれぞれ、36,839人および15,645人であり、このうち脆弱X症候群の検査は各244例(0.66%)と127例(0.81%)とわずかであった。検査で診断が確定した人数は、各々31人、16人であった。検査方法では、染色体検査が各々8.8%、22.2%に対して、遺伝子検査は1%と6%にしか過ぎなかった。保健所保健師に対する調査では、309施設(回収率47.3%)から391通の回答を得た。脆弱X症候群という病気の名前を聞いたことがある保健師は391人中47人(12.0%)にとどまった。遺伝子診断は、226例で実施した。Full mutation 4名(4家系)、Premutation 3名の異常に加え、Intermediate 4名が新たに明らかになった。本研究により、4家系の脆弱X症候群が明らかになり、今までに42例の患者さんが把握できた。さらに新しい患者さんの発掘とともに、治療研究のための二次調査を進めてゆく。忙しい医師に対して二次調査の協力が得られにくい状況があり、専門の研究者などの派遣を今後考えてゆく必要がある。外国で治験されているmGluR5阻害剤などが検討できる体制を早急につくりたい。
結論
小児神経学会、日本児童青年医学会、日本小児精神神経学会、および保健所の保健師に対する大規模な実態調査研究を行った。実態調査では脆弱X症候群の患者は非常に少なく、小児神経学会の支援なども得て遺伝子診断などの普及し患者の診断を普及させることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128086B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人脆弱X症候群および関連疾患の診断・治療推進の研究
課題番号
H22-難治・一般-126
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 生命機能研究支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 有波 忠雄(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 杉江 秀夫(自治医科大学 小児神経学)
  • 後藤 雄一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 分子遺伝学)
  • 佐々木 司(東京大学 大学院教育学研究科)
  • 大野 耕策(鳥取大学 医学部)
  • 中島 健二(鳥取大学 医学部)
  • 石塚 文平(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 松浦 徹(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人脆弱X症候群と関連疾患(脆弱X症候群関連振戦/失調症候群(FXTAS)、早期卵巣不全(POI))の研究を行い、臨床治療研究を推進するための体制を作ることを目的とした。
研究方法
関連学会への調査、スクリーニングためのスコア、鳥取大学脳神経小児科、東京大学医学部附属病院こころの発達診療部への調査などを行った。226例の遺伝子検査を実施した。薬物療法の検討も行った。パーキンソン病111例を対象にFXTASを検討した。117例のPOIでCGG繰り返し配列を検討した。さらに、病態の検討のために、人工染色体技術を用いた研究、関連疾患である脊髄小脳変性症(SCA10,36)のリピート延長メカニズムの検討を行った。
(倫理面への配慮)
鳥取大学ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査委員会の承認ならびに関係機関の倫理審査委員会の承認を得ておこなった。
結果と考察
小児神経学会小児神経専門医1,022人中287名(28.1%)の回答では、患者はわずか7件(13例)であった。日本児童青年精神医学会および日本小児精神神経学会の調査では、それぞれ44人(9.5%)と62人(23%)の医師が本症の診断に携わった。保健所保健師では病気の名前を391人中47人(12.0%)が聞いたに過ぎなかった。小児期発症の本症にとって比較的使いやすいチェックリストを作成した。13例(男性11例、女性2例)患者の25年間の経過を観察したが、IQ等特に大きな問題がなかった。鳥取大学の検討では、有病率は人口10万対0.68人、女性保因者は人口10万対0.85人となり患者の把握は不十分と考えられた。遺伝子診断からFull mutation 4名(4家系)、Premutation 3名、Intermediate 4名が明らかになった。1例であるが、リスペリドンが有効な例があった。パーキンソン病111例の中にはFXTASはいなかった。POIでは40以上の伸長したCGGリピートを有する割合が多かった。保因者由来X染色体ならびに患者由来X染色体を1本導入した細胞を作成した。SCA10、36のRNA fociの局在を明らかにした。患者をさらに発掘し、治療法や病態の解明を進め、臨床治療研究推進を推進する必要がある。
結論
関連学会への大規模調査などから、日本では遺伝子検査が不十分であることが明らかになった。POIとCGGリピートの関連を明らかにした。今後、臨床治療研究を推進することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128086C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 日本人での脆弱X症候群の調査研究を実施し、65名程度の患者を把握し、7例の症例登録を行った。日本人の脆弱X症候群関連振戦/失調症候群を明らかにした。また、日本人の卵巣機能不全の原因の一つとして、FMR1のCGG繰り返し配列が関連していることを明らかにした。さらに病態解明のために、保因者由来X染色体ならびに患者由来X染色体を1本導入した細胞を作成した。今後、この細胞をもつモデルマウスが作成されるとリピート延長の病態を明らかにすることが可能となる。
臨床的観点からの成果
 脆弱X症候群の遺伝子診断を確立し395名の検体の診断を行った。その結果、Full mutation 20名(11家系)、Premutation 16名、Intermediate 3名を明らかにした。25年に渡り日本人脆弱X症候群患者を調査し、その経過を詳細に検討した。鳥取県での詳細な検討から患者の頻度が低いことが明らかになり、遺伝子診断の重要性が浮かび上がった。リスペリドンの有効性が示唆された。
ガイドライン等の開発
臨床診断の基準を作成した。また、スクリーニングのためのスコアを検討した。今後、小児神経学会などで、さらに診断基準を検討し普及させてゆく予定である。
その他行政的観点からの成果
日本では脆弱X症候群の患者の把握が不十分であり、さらに遺伝子診断を普及させ患者の診断を推進させる必要がある。世界的にはmGluR5阻害剤などによる臨床治療研究が開始されており、日本でも臨床治療研究が推進できる体制をさらに整える必要がある。
その他のインパクト
2012年2月10日東京医科歯科大学において、岡澤均(東京医科歯科大学)、Paul Hargerman、Randi Hargerman、難波栄二による公開国際シンポジウム「脆弱X症候群、自閉症、知的障害の最前線」を開催し、成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
公開国際シンポジウム「脆弱X症候群、自閉症、知的障害の最前線」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishii K, Hosaka A, Adachi K, Nanba E, et al.
A Japanese case of Fragile-X associated tremor/ataxia syndrome (FXTAS).
Internal Med , 49 (12) , 1205-1208  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128086Z