文献情報
文献番号
201128084A
報告書区分
総括
研究課題名
非もやもや病小児閉塞性脳血管障害の実態把握と治療指針に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-124
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 享(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 冨永 悌二(東北大学 医学系研究科)
- 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
- 宝金 清博(北海道大学 医学研究科)
- 永田 泉(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
- 高橋 淳(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脳梗塞や一過性脳虚血発作を生じる小児閉塞性脳血管障害については、本邦ではモヤモヤ病がその大半を占める。しかし、検査所見がもやもや病に類似しながらも同疾患診断基準を満たさず、同疾患とは異なるものが存在する。長期的な臨床経過も異なっており、違った対応が必要であるが治療指針は確立されておらず、またこのような疫学データも存在しない。本研究は、本邦における「非もやもや病小児閉塞性脳血管障害(頭蓋内血管狭窄/閉塞)」の実態を把握し、治療指針を確立することを目的とする。
研究方法
分担研究者所属施設ならびにその関連施設における、1998年以降の「非もやもや病小児閉塞性脳血管障害」症例を渉猟し、その臨床像および予後を調査した。
結果と考察
もやもや病・片側性もやもや病・類もやもや病の診断基準を満たさない68例が報告された。このうち頭蓋外からの塞栓症の可能性が高い6例、頭蓋外内頚動脈解離1例、放射線照射後1例を除外した60例を解析対象とした。
1.5:1で男児に好発し、平均年齢は10歳であった。発症形態は完成梗塞またはTIAが約80%を占めた。50%で内頚動脈が、65%で中大脳動脈が病変に巻き込まれ、基底核梗塞が65%を占めた。また前方循環病変56例中54例が閉塞病変であり、典型的なもやもや血管高度増生例はなかった。多くは内科的治療で対応され、バイパス手術を要したものは13%にとどまった。
大半の例で急性期以後は血管形態の悪化なく、自然寛解も35%にみられた。フォローアップ期間中の神経学的イベント再発は7.7%でみられた。50%の例で何らかの後遺症を残し、障害の程度はすべて初回イベントに規定されていた。
もやもや病と異なり、初回発作を厳重な管理・治療でしのぎきれば中長期予後は比較的良好である。これは小児虚血型もやもや病の多くが進行性であり積極的なバイパス手術が勧められるのとは対照的である。従って両者の鑑別が、その後の治療方針を決定する上で極めて重要である。ただ、初回発作で重篤な後遺症を負う事例も存在し、この病態を過小評価することはできない。
1.5:1で男児に好発し、平均年齢は10歳であった。発症形態は完成梗塞またはTIAが約80%を占めた。50%で内頚動脈が、65%で中大脳動脈が病変に巻き込まれ、基底核梗塞が65%を占めた。また前方循環病変56例中54例が閉塞病変であり、典型的なもやもや血管高度増生例はなかった。多くは内科的治療で対応され、バイパス手術を要したものは13%にとどまった。
大半の例で急性期以後は血管形態の悪化なく、自然寛解も35%にみられた。フォローアップ期間中の神経学的イベント再発は7.7%でみられた。50%の例で何らかの後遺症を残し、障害の程度はすべて初回イベントに規定されていた。
もやもや病と異なり、初回発作を厳重な管理・治療でしのぎきれば中長期予後は比較的良好である。これは小児虚血型もやもや病の多くが進行性であり積極的なバイパス手術が勧められるのとは対照的である。従って両者の鑑別が、その後の治療方針を決定する上で極めて重要である。ただ、初回発作で重篤な後遺症を負う事例も存在し、この病態を過小評価することはできない。
結論
頭蓋内血管狭窄部位がもやもや病と類似していても、臨床経過が大きく異なる。外科治療の適応は限られるが、初回の厳重な管理・治療が必要でありそれにより予後が決まる。的確な治療法選択のために、もやもや病との鑑別診断が適切に行われなければならない。
公開日・更新日
公開日
2013-03-01
更新日
-