エカルディーグティエール症候群等のビオプテリン代謝異常を伴う疾患の診断方法確立および治療法開発のための横断的研究

文献情報

文献番号
201128083A
報告書区分
総括
研究課題名
エカルディーグティエール症候群等のビオプテリン代謝異常を伴う疾患の診断方法確立および治療法開発のための横断的研究
課題番号
H22-難治・一般-123
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 宏(東京工業大学 大学院生命理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 一子(独立行政法人国立病院機構 相模原病院)
  • 豊島 至(独立行政法人国立病院機構 あきた病院)
  • 平家 俊男(京都大学 大学院医学研究科)
  • 南部 篤(自然科学研究機構 生理学研究所)
  • 高田 昌彦(京都大学 霊長類研究所)
  • 一瀬 千穂(藤田保健衛生大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでに本研究班の活動を通じて、エカルディ-グティエール症候群(AGS)およびドーパ反応性ジストニアについて全国的なアンケート調査を行い、本邦における患者数を調べ、二次調査により患者の病態や診断治療の実態、さらに遺伝子診断の希望などについて調査した。平成23年度においては、各疾患に対する遺伝子診断体制を確立し、遺伝子診断を行う。さらに、AGSに関して変異遺伝子の違いに基づく病型分類や、AGSに高頻度で合併する凍瘡の有無による病型分類について検討する。また、申請者らが独自に開発したビオプテリン代謝異常モデルマウスや、パーキンソン病モデルサルを用いて、生化学的・解剖学的・電気生理学的解析を通じて、ビオプテリン欠乏による大脳基底核の情報処理システムの変化やパーキンソン病におけるビオプテリン代謝の変化を解析し、ビオプテリン代謝異常に基づく疾患の病態生理を解明する。
研究方法
臨床実態は、アンケート調査により行った。患者遺伝子の解析にあたっては、ヒト遺伝子解析研究に関する倫理指針に準拠して行った。ドーパ反応性ジストニアの発症機構の解析には、当該研究者らが独自に開発したドーパ反応性ジストニアモデルマウスなどのモデル動物を用いた。
結果と考察
小児リウマチ学会評議員に対してアンケート調査を行い、新たなAGS症例を見出すことができた。また、AGS原因遺伝子の遺伝子検査体制を確立し、AGS疑いと考えられた14家系33症例についてAGS原因遺伝子の遺伝子解析を行った。その結果、3症例でTREX1のヘテロな変異、また、1症例でRNaseH2A遺伝子のコンパウンドヘテロ遺伝子変異を同定した。TREX1変異が認められた家系では、いずれも重度の凍瘡所見がみられ、凍瘡発症とTREX1変異との密接な関連が示唆された。ドーパ反応性ジストニア患者に関しても遺伝子検査および脳脊髄液ビオプテリンの測定を実施し、新たな遺伝子変異を3例確定した。ドーパ反応性ジストニアモデルマウスの脳で神経活動を電気生理学的手法により測定し、ジストニアモデルマウスにおいて大脳皮質刺激に対する3相性の反応のうち、淡蒼球外節では抑制と遅い興奮が増強していたのに対し、淡蒼球内節では抑制の消失が見られることを明らかにした。
結論
本年度の活動から、AGSおよびドーパ反応性ジストニアに関して、新たな症例の発掘、新たな遺伝子変異の同定、脳脊髄液診断マーカーとしてのビオプテリンの有用性の確立を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128083B
報告書区分
総合
研究課題名
エカルディーグティエール症候群等のビオプテリン代謝異常を伴う疾患の診断方法確立および治療法開発のための横断的研究
課題番号
H22-難治・一般-123
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 宏(東京工業大学 大学院生命理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 一子(独立行政法人国立病院機構 相模原病院)
  • 豊島 至(独立行政法人国立病院機構 あきた病院)
  • 平家 俊男(京都大学 大学院医学研究科)
  • 南部 篤(自然科学研究機構 生理学研究所)
  • 高田 昌彦(京都大学 霊長類研究所)
  • 一瀬 千穂(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 小幡 文弥(北里大学 医療衛生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、フェニルアラニンの代謝、カテコールアミン、セロトニンやメラトニンの生合成を担っている。ドーパ反応性ジストニアは、BH4生合成第一段階の酵素であるGTPシクロヒドロラーゼIのヘテロな遺伝子変異により発症する優性遺伝性疾患である。一方、核酸分解に関与する遺伝子の変異によりウイルス感染様の免疫活性化が起こるエカルディ-グティエール症候群(AGS)において、患者脳脊髄液のネオプテリン・ビオプテリンが高値を示す。本研究班においてはBH4代謝異常を伴う上記疾患を主たる対象疾患として、本邦における患者数や病態・治療の実態を明らかにし、診断指針・診断法の確立と新しい治療法を開発することを目的とする。
研究方法
疫学調査には、アンケート方式を採用した。ドーパ反応性ジストニアの発症機構の解析には、当該研究者らが独自に開発したドーパ反応性ジストニアモデルマウスを用いた。他の類縁疾患との鑑別診断の指標として、患者脳脊髄液中のネオプテリン・ビオプテリンの測定を行った。
結果と考察
これまで我が国における実態が全く明らかになっていなかったAGSに関して全国規模の調査を行い、未診断例も含めると数十名のAGS患者が我が国にいることを推定した。AGSおよびドーパ反応性ジストニアに関して、遺伝子検査の体制を確立した。14家系33症例のAGS疑い症例について遺伝子解析を行い、3症例でTREX1のヘテロな変異、また、1症例でRNaseH2A遺伝子のコンパウンドヘテロ遺伝子変異を同定した。AGS原因遺伝子の一つであるTREX1変異が同定された患者においては、重度の凍瘡が観察され、凍瘡発症とTREX1変異との密接な関連が示唆された。遺伝性パーキンソン病PARK2とドーパ反応性ジストニアの鑑別が問題となる症例において、脳脊髄液のネオプテリン・ビオプテリンの測定および遺伝子解析を行い、解析結果を鑑別診断の一つの指針として活用した。また、モデルマウスを用いて電気生理学的解析、および、生後発達期のビオプテリン欠乏が及ぼす脳の発達への影響を解析した。
結論
本研究班のこれまでの活動から、AGSおよびドーパ反応性ジストニアに関して、新たな症例の発掘、新たな遺伝子変異の同定、脳脊髄液診断マーカーとしてのビオプテリンの有用性の確立を行うことができた。また、ドーパ反応性ジストニアの発症機構について生化学的、電気生理学的な解析を行うことにより、理解を深めることができた。今後これらの知見を生かして、これらの疾患に対する有効な治療法の開発、特にAGSに対する遺伝子治療法の開発に向けて研究を推進していく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128083C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ドーパ反応性ジストニア発症機構の解明のために、ビオプテリン欠乏モデルマウスを用いた電気生理学的解析、および、生後発達期の脳における変化を解析した。パーキンソン病におけるビオプテリン代謝の変化について、PARK8患者の脳脊髄液における解析を行い、脳脊髄液中のビオプテリン測定がドーパミンニューロンの神経変性を示す良いマーカーであることを明らかにした。我が国でのエカルディーグティエール症候群患者の全国調査結果から、本疾患と重度凍瘡が相関することを示した論文をRheumatology誌に発表した。
臨床的観点からの成果
エカルディ-グティエール症候群 (AGS)とドーパ反応性ジストニアに関する全国規模のアンケート調査を行い、患者実態・病態について解析した。AGSに関して、我が国にも数十名の患者がいることを示し、遺伝子解析の同意が得られたAGS疑い症例14家系33症例について、5つの原因遺伝子の遺伝子解析を行った。ドーパ反応性ジストニアについては、二次調査で回答のあった23症例について、遺伝子変異の有無と臨床像との相関について比較検討した。
ガイドライン等の開発
AGSに関して、原因遺伝子の一つであるTREX1変異と重度の凍瘡所見が認められ、AGSの病態と凍瘡との関連を示唆した。臨床症状からドーパ反応性ジストニアと診断された患者のうち、約半数で遺伝子変異が同定されていないことが判明し、遺伝子変異のみられない患者における発症機構の解析が必要であることを示した。我が国のAGS症例について、遺伝子変異と病態をまとめた論文を作成中である。また、ドーパ反応性ジストニアの鑑別診断のために、脳脊髄液のネオプテリン・ビオプテリンの測定が有用であることを示した。
その他行政的観点からの成果
AGSの発症機構の研究は、全身性エリテマトーデスなどの他の自己免疫疾患の発症機構にも関連するものである。ドーパ反応性ジストニアの研究も他のジストニアの発症機構の解明につながることが期待される。本研究班での活動から、これらの研究の基盤となる共同研究ネットワークを築くことができた。
その他のインパクト
「Menkes病・occipital horn症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発」に関する研究班、「小児神経伝達物質病の診断基準の作成と新しい治療法の開発に関する研究」班と、3班合同で患者家族も交えたシンポジウムを平成22年度と23年度の2回開催した。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
3班合同で患者家族も交えた公開シンポジウムを開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Homma D, Sumi-Ichinose C, Tokuoka H et al.
Partial Biopterin Deficiency Disturbs Postnatal Development of the Dopaminergic System in the Brain.
Journal of Biological Chemistry , 286 , 1445-1452  (2011)
10.1074/jbc.M110.159426
原著論文2
Koshiba S, Tokuoka H, Yokoyama T et al.
Biopterin levels in the cerebrospinal fluid of patience with PARK8 (I2020T).
Journal of Neural Transmission , 118 , 899-903  (2011)
10.1007/s00702-011-0587-8
原著論文3
Homma D, Katoh S, Tokuoka H, et al.
The role of tetrahydrobiopterin and catecholamines in the developmental regulation of tyrosine hydroxylase level in the brain.
Journal of Neurochemistry , 126 , 70-81  (2013)
10.1111/jnc.12287
原著論文4
Abe J, Nakamura K, Nishikomori R et al.
A nationwide survey of Aicardi Goutieres syndrome patients identifies a strong association between dominant TREX1 mutations and chilblain lesions: Japanese cohort study
Rheumatology , 53 , 448-458  (2014)
10.1093/rheumatology/ket372

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-06-30

収支報告書

文献番号
201128083Z