Mowat-Wilson症候群の診断法の確立と成長発達に伴う問題点とその対策に関する研究

文献情報

文献番号
201128074A
報告書区分
総括
研究課題名
Mowat-Wilson症候群の診断法の確立と成長発達に伴う問題点とその対策に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-113
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
若松 延昭(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 遺伝学部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋田 誠一(徳島文理大学健康科学研究所 生活習慣病部門)
  • 片上 秀喜(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科(臨床研究部))
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 黒澤 健司(神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 小崎 里華(国立成育医療研究センター 遺伝診療科)
  • 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 平木 洋子(広島市こども療育センター 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Mowat-Wilson症候群の診断法を確立し、成長発達に伴う問題点を明らかにし、その対策を行う。
研究方法
1)病因遺伝子ZEB2の変異解析。
2)ZEB2の高感度測定法の開発。
3)レポーターノックインマウス脳における病因タンパク質Zeb2の発現解析。
4)成長障害に関与するGH関連因子群の測定。
5)身体測定と発達指数の分析。
6)成長に伴う発達や情緒・行動面への実態調査。
7)フォローアッププロトコールの作成。
8)MWS家族会の設立。
結果と考察
1)本年度、新たに9症例のZEB2変異解析依頼があり、5例に遺伝子異常(2例のナンセンス変異と3例の欠失)を同定した。
2)ZEB2のN-末側とC-末側の二種類の抗体を用いたサンドイッチ測定系の開発は達成できなかったが、N-末を用いた競合測定法では、0.1pgのZEB2の測定が可能となった。
3)新生仔の脳においては大脳皮質、海馬にZEB2発現が高く、8週齢の脳の解析でも海馬における発現量が増加していた。
4)本症候群7例のGHの血中濃度はコントロールと優位な差を認めず、本症における低身長はIGF-1情報伝達系あるいは形態形成に関与するタンパクの発現異常に基づく可能性が示唆された。
5)発達指数は、数値ではDQ8から53まで幅はあったが、発達の遅れは全員に共通しており、その障害の程度は重度のレベルであった。また、身体の発達指標である成長曲線の作成は、現在作成中である。
6)16名全員に発語がみられないなど表出能力は低いものの、環境を理解・把握し事態を予測する能力は相対的に高かった。
7)フォローアッププロトコール作成した。これは、各医療機関において本症候群の合併症の早期診断、早期治療に役立つと考えられる。
8)患者・家族会が設立され、第一回総会が東京で開催された。本研究班の代表者が講演し、参加した家族と活発な話し合いが行われた。
結論
1)本症候群の出生時診断を目指してZEB2の高感度測定法の開発を行った。
2)本症候群の重度知的障害の病因に海馬でのZEB2の発現量の低下が示唆された。
3)身体測定や発達指数に加え、長尾式やFIMなどの調査研究を行い、成長に伴う発達や情緒・行動面への実態が明らかになった。
4)フォローアッププロトコール作成した。
5)本研究班が母体となり、MWS家族会が設立された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128074B
報告書区分
総合
研究課題名
Mowat-Wilson症候群の診断法の確立と成長発達に伴う問題点とその対策に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-113
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
若松 延昭(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 遺伝学部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋田 誠一(徳島文理大学健康科学研究所 生活習慣病部門)
  • 片上 秀喜(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科(臨床研究部))
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 黒澤 健司(神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 小崎 里華(国立成育医療研究センター 遺伝診療科)
  • 岡本 伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 平木 洋子(広島市こども療育センター 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Mowat-Wilson症候群の診断法を確立し、成長発達に伴う問題点を明らかにし、その対策を行う。
研究方法
1)病因遺伝子ZEB2の変異解析。
2)神奈川県の発症頻度調査。
3)ZEB2の高感度測定法の開発。
4)レポーターノックインマウス脳における病因タンパク質Zeb2の発現解析。
5)成長障害に関与するGH関連因子群の測定。
6)身体測定と発達指数の分析。
7)成長に伴う発達や情緒・行動面への実態調査。
8)フォローアッププロトコールの作成。
9)MWS家族会の設立。
結果と考察
1)19症例のZEB2変異解析依頼があり、ナンセンス変異2例、フレームシフト変異7例と欠失6例を新たに同定した。
2)神奈川県の発症頻度は11万出生に1例であり、一昨年の愛知県の調査とほぼ同じであった。
3)ZEB2のN-末側を用いた競合測定法で、0.1pgのZEB2の測定が可能となった。
4)新生仔の脳においては大脳皮質、海馬にZEB2発現が高く、8週齢の脳の解析でも海馬に強い発現量が見られた。
5)本症候群7例のGHの血中濃度はコントロールと優位な差を認めず、本症における低身長はIGF-1情報伝達系あるいは形態形成に関与するタンパクの発現異常に基づく可能性が示唆された。
6)発達指数は、数値ではDQ8から53まで幅はあったが、重度の発達の遅れが見られた。また、身体の発達指標である成長曲線の作成は、現在作成中である。
7)16名全員に発語がみられないなど表出能力は低いものの、環境を理解・把握し事態を予測する能力は相対的に高かった。
8)フォローアッププロトコール作成した。これは、各医療機関において本症候群の合併症の早期診断、早期治療に役立つと考えられる。
9)患者・家族会が設立され、第一回総会が東京で開催された。本研究班の代表者が講演し、参加した家族と活発な話し合いが行われた。
結論
1)本症候群の出生時診断を目指してZEB2の高感度測定法の開発を行った。
2)発症頻度は11万出生に1例であった。
3)本症候群の重度知的障害の病因に海馬でのZEB2の発現量の低下が示唆された。
4)身体測定や発達指数に加え、長尾式やFIMなどの調査研究を行い、成長に伴う発達や情緒・行動面への実態が明らかになった。
5)フォローアッププロトコール作成した。
6)本研究班が母体となり、MWS家族会が設立された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128074C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Mowat-Wilson症候群(以下、MWS)は、重度精神運動発達遅滞、特徴的な顔貌、小頭症を3主徴とする症候群であり、ZEB2(ZFHX1B)の機能喪失型突然変異が病因である。平成22-23年度の本研究班では、Zeb2のC末端にGFPがfusionタンパクとして発現されるレポーターノックインマウスを用いた解析では、新生仔から8週齢のマウス脳の海馬に強い発現を同定した。本研究成果は、海馬のZEB2の発現量の低下がMWSの重度知的障害に関与することを示唆する重要な研究である。
臨床的観点からの成果
成長に伴う発達や情緒・行動面への実態調査では、言語発達については16例全員に発語はみられなかったが、指差し/身振りといったシンボル機能の獲得まで到達している症例が2例に見られた。長尾式言語評価において表出能力は低かった(0ヵ月から11ヵ月;歴年齢3歳から12歳)が、人とのコミュニケーションの形成、さらに人への働きかけ、環境を理解・把握し事態を予測する能力は相対的に高い傾向があり(5ヵ月から18ヵ月;歴年齢3歳から12歳)、本能力を生かした療育が重要である。
ガイドライン等の開発
診断のガイドラインは平成21度の本研究班で作成している。平成22-23年度の本研究班では、MWSの自然歴を把握し、QOLの向上にむけた、フォローアッププロトコールを作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究班が主催したMWSグループ外来(愛知県心身障害者コロニー中央病院で開催)が母体となり「モワット・ウィルソン症候群家族会」(略称:MWS家族会)が設立され、2012年3月10日には家族会・第一回総会が都立東部療育センターで開かれた。今後、本研究班で作成したMWSのホームページ上で研究成果を発表するとともに、正確な診断に基づき、患者家族および家族会とその診断、医療、療育に携わる医療スタッフが早期より積極的に治療に参加できる体制作りが重要である。
その他のインパクト
MWSの出生時診断を目指したZEB2の高感度測定法の開発を行い、測定感度が0.1pgまでの測定系を初めて確立した。今後、引き続いて研究を行い、測定系の感度を上げることが重要である。本研究成果は、出生時診断による早期診断とそれに引き続いて治療を開始するような医療を行う上で、治療法が開発されていないわが国の重度知的障害分野の研究の第一歩として重要である。新規40症例を含む本邦のMWSのZEB2遺伝子変異と臨床所見をまとめて海外の学術雑誌(Am J Med Genet A)に発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
若松延昭,平木洋子:Mowat-Wilson症候群.別冊 日本臨床 神経症候群Ⅳ-その他の神経疾患を含めて(第2版)」, pp 613-616, 2014.09.20.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
1)MWSフォローアッププロトコール作成。2)「MWS家族会」準備会、第一回患者・家族会(2011年11月、都内)。 3)「MWS家族会」第一回総会(2012年3月、都立東部療育センター)
その他成果(普及・啓発活動)
1件
1)ホームページ「モワット・ウィルソン症候群の理解のために」(http://www.mowat-wilson.jp/)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamada Y, Nomura N, Yamada K, et al
The Spectrum of ZEB2 Mutations Causing the Mowat-Wilson Syndrome in Japanese Populations.
Am J Med Genet A , 164A (8) , 1899-1908  (2014)
10.1002/ajmg.a.36551.
原著論文2
57. Takagi T, Nishizaki Y, Matsui F, Wakamatsu N, Higashi Y.
De novo inbred heterozygous Zeb2/Sip1 mutant mice uniquely generated by germ-line conditional knockout exhibit craniofacial, callosal and behavioral defects associated with Mowat-Wilson syndrome.
Hum Mol Genet , 24 (22) , 6390-6402  (2015)
10.1093/hmg/ddv350. Epub 2015 Aug 28.

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128074Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,909,376円
人件費・謝金 1,914,233円
旅費 314,460円
その他 863,347円
間接経費 3,000,000円
合計 13,001,416円

備考

備考
支出が1416円、増加している。内訳は、自己資金(840円)、利息(576円)である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-