先天性無痛症の診断・評価および治療・ケア指針作成のための研究

文献情報

文献番号
201128072A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性無痛症の診断・評価および治療・ケア指針作成のための研究
課題番号
H22-難治・一般-111
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 史郎(東京大学医学部附属病院 眼科)
  • 犬童 康弘(熊本大学医学部附属病院 小児科)
  • 久保田 雅也(独立行政法人国立成育医療研究センター 神経内科)
  • 白川 公子(東京西徳洲会病院 小児医療センター 発達心理)
  • 田中 千鶴子(昭和大学保健医療学部 看護学科)
  • 冨岡 俊也(さいたま赤十字病院 麻酔科)
  • 馬場 直子(神奈川県立こども医療センター 皮膚科)
  • 三輪 全三(東京医科歯科大学 歯学部附属病院 育成系診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性無痛無汗症(4型)及び無汗を伴わない先天性無痛症(5型)に関し、脳神経科学・医療検査技術の進歩に基づいた各領域の研究を行い、「総合的な治療・ケアのための指針」を策定すること。
研究方法
診療実態に関する調査、病態把握のための基礎・臨床研究、合併症に関する臨床研究、患者・家族の支援に関する研究を行い、「治療・ケアのための指針」を作成した。
結果と考察
1) 診療実態に関する調査:関連学会を対象に行ったアンケート調査に基づき、国内の4型の患者数を130?210名、5型を30?60名と推定した。
2) 病態把握のための基礎・臨床研究: 4・5型とHSANの病型分類について考察することで、症例の診断と評価の問題点を明らかにした。選択的な末梢神経系の刺激時の中枢神経系における感覚認識機構を調べ、従来の形態学的検討に基づく末梢神経系の変化のみでなく中枢神経系にも変化があることを明らかにした。
3) 合併症に関する臨床研究: 4型の6才女児の睡眠・覚醒リズムを記録し、気分障害との関連を検討した。また4型患者の股関節形態の特徴を明らかにし、反復性脱臼に対し装具治療に応用した。また4型患者に眼科的精査を行い、正常な視機能発達があること、若干マイボーム腺の脱落が多いことを示した。4型患者の皮膚を調査し、経時的変化に紅斑、丘疹、苔癬化、乾燥度などが改善すること、角層中にEGFは多く存在しており、その量は健常人およびアトピー性皮膚炎よりも高値であることを示した。抜去歯の歯髄神経組織を免疫染色法にて観察し、4型では陽性線維はほとんど観察されず、5型では細い線維も含めてより多く観察された。また、患者の嗅覚同定能力は良好であるが、嗅いだ経験の乏しい一部の匂いについては正答率が低いこと、カプサイシンに対する感受性について高濃度になって初めて弱い刺激性を感じることが示された。
4) 患者・家族の支援に関する研究:4型の患児・者とともに活動する人々に、疾患の理解を深め介助や支援に役立つDVDを作成した。4型の発達特性について検討し、知能障害の程度とは関係なく、言葉の遅れ、多動・衝動、こだわり、自傷など発達障害の特性が強く見られた。
結論
以上の結果を反映させ、「先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128072B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性無痛症の診断・評価および治療・ケア指針作成のための研究
課題番号
H22-難治・一般-111
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 史郎(東京大学医学部附属病院 眼科)
  • 犬童 康弘(熊本大学医学部附属病院 小児科)
  • 久保田 雅也(独立行政法人国立成育医療研究センター 神経内科)
  • 白川 公子(東京西徳洲会病院 小児医療センター 発達心理)
  • 田中 千鶴子(昭和大学保健医療学部 看護学科)
  • 冨岡 俊也(さいたま赤十字病院 麻酔科)
  • 馬場 直子(神奈川県立こども医療センター 皮膚科)
  • 三輪 全三(東京医科歯科大学 歯学部附属病院 育成系診療科)
  • 田中 信幸(群馬整肢療護園 整形外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性無痛無汗症(4型)及び無汗を伴わない先天性無痛症(5型)に関し各領域の研究を行い「総合的な治療・ケアのための指針」を策定すること。
研究方法
療実態に関する調査、病態把握のための基礎・臨床研究、合併症に関する臨床研究、患者・家族の支援に関する研究を行った。
結果と考察
1) 診療実態に関する調査:アンケート調査に基づき、国内患者数を4型130~210名、5型30~60名と推定した。検査や包括的診療は、小児科81施設、神経内科142施設で可能であった。
2) 病態把握のための基礎・臨床研究: 4型患者の感覚神経伝導域値検査よりAβ線維に関係する感覚にも障害が及んでいる可能性を示した。HSANの病型分類について考察し、症例の診断と評価の問題点を明らかにした。末梢神経刺激時の中枢神経系における感覚認識機構を調べ中枢神経系にも変化があることを明らかにした。
3) 合併症に関する臨床研究: 4型患児の睡眠・覚醒リズムを記録し、気分障害との関連を検討した。ビデオ歩行分析で、若年患者で歩行速度、歩調が大きく、踵接地から足底全体での接地までの時間が短い傾向を示した。4型患者の股関節形態の特徴を明らかにし反復性脱臼の装具治療に応用した。4型患者の眼科的精査で、正常な視機能発達があること、角膜潰瘍の発生予防と早期治療の重要性を示した。4型患者の皮膚を調査し、経時的変化に紅斑などが改善することを示した。下顎骨骨髄炎例で抜去すべき歯を決定する際、透過型光電脈波法の応用が有効であった。抜去歯の歯髄神経組織を観察し、4型では陽性線維はほとんどなく、5型では細い線維も含めてより多く観察された。嗅覚同定能力は良好であること、カプサイシンに対する感受性について高濃度になって初めて弱い刺激性を感じることが示された。
4) 患者・家族の支援に関する研究:患者の生活上の諸問題、および予防・対処法を、患者家族へのヒヤリング等で明らかにし、4型の患児・者とともに活動する人々に、疾患の理解を深め介助や支援に役立つDVDを作成した。4型の発達特性について検討し、知能障害の程度とは関係なく、言葉の遅れ、多動・衝動、こだわり、自傷など発達障害の特性が強く見られた。
結論
以上の結果を反映させ、「先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128072C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先天性無痛無汗症の感覚障害に関する臨床研究から、Aβ線維に関係する感覚にも障害が及んでいる可能性を示した。先天性無痛無汗症(4型)及び無汗を伴わない先天性無痛症(5型)患者がものをつかむ際の力に関する分析から、二次的障害につながる知見を得た。また、神経成長因子の役割について、本疾患における臨床研究と過去の研究成果から検討した。日本における疫学調査の結果、4型の患者数を130~210名、5型を30~60名と推定した。これらを英文論文で報告した。
臨床的観点からの成果
先天性無痛無汗症(4型)及び無汗を伴わない先天性無痛症(5型)に関し各領域の臨床研究を行い、「先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針(第1版)」を完成させた。小児神経科、整形外科、眼科、皮膚科、歯科といった多くの診療科医師やコメディカル・研究者が参加し、希少疾患である本疾患の臨床像や病態を多方面から明らかにした、という意味で学術的・社会的意義がある。
ガイドライン等の開発
2年間の研究成果に基づき、関係した各分野の専門家が意見を出し合い、先天性無痛無汗症(4型)及び無汗を伴わない先天性無痛症(5型)の診療に関わる医療従事者診療を行う際の指針となることを目指し、「先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針(第1版)」を完成させた。
その他行政的観点からの成果
「温痛覚の低下・消失」という病態が、全身の様々な臓器(感覚器を含む)に多大な影響を与えることを明らかにした。現時点で、「温痛覚の低下・消失」そのものだけでは身体障害者手帳の対象となっていないが、全身に及ぼす影響を最低限にするための管理の重要性が明らかとなったことから、身体障害者手帳の認定基準を含めた障害者施策に役立つ成果が得られたと考える。
その他のインパクト
2年間にわたり国内のできるだけ多くの患者を診察し、情報を収集する目的で、多くの診療科医師やコメディカル・研究者が参加し、神戸と福岡で検診会を行った。延べ約40名の患者を診察した。2年間の研究成果を患者・家族等にフィードバックする目的で、平成24年1月に、患者、家族、研究者を対象とした研究報告会を国立障害者リハビリテーションセンターにて行った。検診会はその後も継続し、平成24年11月に東京で開催した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iijima M, Haga N
Evaluation of nonnociceptive sensation in patients with congenital insensitivity to pain with anhidrosis
Childs Nerv Syst , 26 , 1085-1089  (2010)
10.1007/s00381-009-1057-6
原著論文2
Kawashima N, Abe MO, Iwaya T, Haga N
Abnormal capacity for grip force control in patients with congenital insensitivity to pain
Exp Brain Res  (2012)
10.1007/s00221-012-3050-7
原著論文3
Indo Y
Nerve growth factor, pain, itch and inflammation: lessons from congenital insensitivity to pain with anhidrosis
Expert Rev Neurother , 10 (11) , 1707-1724  (2010)
10.1586/ern.10.154
原著論文4
三輪全三、柿野聡子、上原奈緒子、他
先天性無痛無汗症児に発症した下顎骨骨髄炎―歯髄診断に透過型光電脈波法(TLP)を応用した1例―
小児歯誌 , 49 (1) , 41-46  (2011)
原著論文5
Haga N, Kubota M, Miwa Z
Epidemiology of hereditary sensory and autonomic neuropathy type IV and V in Japan
Am J Med Genet A , 161 , 871-874  (2013)
10.1002/ajmg.a.35803
原著論文6
Zhang Y, Ogata N, Yozu A, Haga N
Two-dimensional video gait analyses in patients with congenital insensitivity to pain
Dev Neurorehabil , 16 (4) , 266-270  (2013)
10.3109/17518423.2012.760117
原著論文7
Zhang Y, Haga N
Skeletal complications in congenital insensitivity to pain with anhidrosis: a case series of 14 patients and review of articles published in Japanese
J Orthop Sci , 19 , 827-831  (2014)
10.1007/s00776-014-0595-2
原著論文8
Haga N, Kubota M, Miwa Z
Hereditary sensory and autonomic neuropathy types IV and V in Japan
Pediatr Int , 57 , 30-36  (2015)
10.1111/ped.12538

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-07-19

収支報告書

文献番号
201128072Z