メタボローム解析による筋型糖原病の画期的な診断スクリーニング法の確立と治療推進の研究

文献情報

文献番号
201128070A
報告書区分
総括
研究課題名
メタボローム解析による筋型糖原病の画期的な診断スクリーニング法の確立と治療推進の研究
課題番号
H22-難治・一般-109
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉江 秀夫(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田冬季子(自治医科大学 医学部)
  • 西野一三(効率精神神経医療研究センター)
  • 石垣景子(東京女子医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では筋硬直、筋力低下、筋痛、横紋筋融解症など発症する一原因である筋型糖原病の新たな診断法の開発にある。そのためには初年度に,既知の筋型糖原病においてメタボロームパターンを同定した。今回は鑑別診断の重要な疾患である脂肪酸代謝異常症を取り上げて、メタボロームの違いがあるかどうかを検討し、診断に供するに足る方法化を評価する。
またあわせて今回我が国における筋型糖原病の病型の頻度を把握することにより、どのような診断システムがより効率的に機能するかを検討することが目的である。
研究方法
(1)極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症2例について鑑別疾患の主要なものとしてメタボローム解析を行った。また糖原病V型について解糖系と周辺の代謝経路(TCAサイクル、ペントースモノフォスフェートシャントについてさらに詳細に検討した。
(2)我が国における筋型糖原病の実態調査:
小児神経内科専門医(603名)および神経内科専門医(2591名)を対象に、過去10年間に筋型糖原病と診断した各疾患別の症例数および疑い症例数に関する調査用紙(資料1)を郵送し、結果を分析した。同一医療機関の所属の解答からは症例数においては症例の重複を避けて分析した。

結果と考察
VLCAD欠損症では全体的に長鎖のアシルカルニチンの増加が見られたが、特にVLCAD欠損症に特徴とされるC14:1が著明に増加していた。糖原病V型ではピルビン酸以下のTCAサイクルの中間体が全体に低下していた。我が国における筋型糖原病の実態調査では回収率は、38%(1214/3194)であった。
筋型糖原病各病型の症例数は、II型(Pompe病)76例、III型(脱分枝酵素欠損症)14例、V型(McArdle病)17例、VII型(垂井病)5例、IX型 (PGK欠損症)3例、IV型(分枝酵素欠損症)1例、LDH欠損症1例、0型(筋型グリコーゲン合成酵素欠損症)1例 合計 118例であった。
結論
網羅的に筋細胞内のメタボロームを分析する手法は、筋型糖原病の診断のみならず、筋型糖原病におこっている代謝病態の解析によい手段である。遺伝性代謝異常症の治療は、遺伝子治療が究極の方法である。しかし近年の病態解明の進歩により、病態を考慮した治療として、前駆物質の制限(restriction)、蓄積物質の除去(removal)、補充療法(replacement)、残存酵素活性の増強(reinforcement)が用いられ成果を挙げている。現状では最も安全で現実的な治療法であり、今後も治療の潮流と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128070B
報告書区分
総合
研究課題名
メタボローム解析による筋型糖原病の画期的な診断スクリーニング法の確立と治療推進の研究
課題番号
H22-難治・一般-109
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉江 秀夫(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田冬季子(自治医科大学 医学部)
  • 西野一三(国立精神神経医療研究センター)
  • 石垣景子(東京女子医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
グリコーゲン代謝異常症に起因する代謝性ミオパチー(筋型糖原病)で、現在14病型が報告されている。近年の筋型糖原病の治療に関する最も重要な進歩は、糖原病II型(Pompe病)に対する酵素補充療法である。わが国でもすでに全国で70例近くがこの補充療法を受けている。乳児型では明らかに心機能と生命予後の改善が認められているが、成人型ではその効果は限定的である。
今回の研究では新しい技術革新に伴って開発されたメタボローム解析法で、網羅的な解糖中間体を含む代謝物が一斉分析できる利点があり、本症の診断・病態解析に応用した。
我々が行った約1000例における分析では、代謝性ミオパチーが疑われた症例のうち約70%の症例で原因が同定できなかった。今後この70%の原因不明症例をいかに解明してゆくかが重要である。我々はCE-TOFMS、LC-TOFMSを用いた筋型糖原病の生検筋のメタボローム解析を行い、診断の有用性と病態の解明を試み、従来原因不明の症例に適応できないか検討した。

研究方法
(1)筋メタボロームの分析(平成22年度、23年度)
生検筋のホモゲネートで、どのような代謝物が分析可能かを検討するため、酵素診断で確定した既知の筋型糖原病の生検筋約10㎎を用いた。
(2)筋型糖原病の病型全国調査(平成23年度)
神経内科専門医(603名)および小児神経専門医(2591名)を対象に、過去10年間に筋型糖原病と診断した各疾患別の症例数および疑い症例数に関する調査用紙を郵送し、結果を分析した。同一医療機関の所属の解答からは症例数においては症例の重複を避けて分析した。

結果と考察
過去25年間に、生検筋を用いて代謝性ミオパチーを分析した経験では、検索を行ったものの70%の症例が未解明の状態であり、現状の分析手法の限界を示している。この状況を解決するブレークスルーとして網羅的に解析するメタボローム解析を応用した。 
今回の2年間にわたる研究成果として、本方法が診断及び、病態の解析、さらには病態に基づいた治療への試みにも利用できることが判明した。さらに我が国における筋型糖原病の病型が、II型、III型、V型で90%を占めることがわかり、今後筋型糖原病をスクリーニングするのに効率的な検索方法のヒントとなる。
結論
網羅的に筋細胞内のメタボロームを分析する手法は、筋型糖原病の診断のみならず、筋型糖原病におこっている代謝病態の解析によい手段である。
本方法が病態を研究する一つのツールであることが証明できたことは、今後さまざまな治療戦略への道が開け、国民の医療・福祉の上に大きく寄与する。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128070C

成果

専門的・学術的観点からの成果
網羅的なメタボローム解析を筋型糖原病の生検筋で行い、異常蓄積代謝物のパターンで代謝過程の障害部位が同定でき、診断も可能であることを証明した。本法は従来生化学的、分子遺伝学的に行っていた診断法に比較すると、少量の試料で分析でき病態を合わせて検討することができるため、今後病態を考慮した治療法の開発へ期待ができる。
臨床的観点からの成果
筋型糖原病の重篤な合併症は横紋筋融解症である。進行すると腎障害も発症し中には死の転帰をとる場合もある。本研究成果は早期診断が可能であり、患者の予後改善には極めて有用であることが推定できる。また病態を検索できることから治療法への応用も期待できる。
ガイドライン等の開発
本症の診断アルゴリズム、病態の解析結果などを日本先天代謝異常学会に報告した。筋型糖原病の診療ガイドラインの作成に寄与した。
その他行政的観点からの成果
筋型糖原病はその合併症の予防が重要である。本診断法が普及することで早期診断が可能となれば、医療的指導を行うことで合併症を予防でき、患者へのQOLの改善、医療コストの削減に寄与できうる。また食事療法による治療の普及に重要な基礎データを提供した。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128070Z