多発性内分泌腫瘍症1型および2型の診療実態調査と診断治療指針の作成

文献情報

文献番号
201128066A
報告書区分
総括
研究課題名
多発性内分泌腫瘍症1型および2型の診療実態調査と診断治療指針の作成
課題番号
H22-難治・一般-105
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 晃洋(信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 眞一(福島県立医科大学 )
  • 内野 眞也(野口病院)
  • 小杉 眞司(京都大学大学院 医学研究科)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学 )
  • 今井 常夫(名古屋大学 医学部)
  • 河本 泉(関西電力病院)
  • 花崎 和弘(高知大学 医学部)
  • 清水 一雄(日本医科大学)
  • 山田 正信(群馬大学 医学部)
  • 梶 博史(近畿大学 医学部)
  • 三浦 大周(虎の門病院)
  • 福嶋 義光(信州大学 医学部)
  • 今村 正之(関西電力病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多発性内分泌腫瘍賞の診療実態を集積したデータバンクを構築して日本人患者の特徴を明らかにするとともに,得られた情報を検索可能な形に整理し,多くの医療者が利用できる情報発信基盤を整備・提供すること,最終的に蓄積されたデータを海外のそれと比較検討した上で,関連学会との連携のもとに,わが国の実情に即した診療指針を作成する.
研究方法
患者登録データベースを構築し,関連学会に広報してデータ登録を進めた.最終的には約1,000例の世界最大級のデータバンクを構築した.このデータについて解析を進めた.さらに患者・家族を対象としたアンケート調査も行い,当事者が求めている支援を調査した.平成22年度以降は集積されたデータの解析と,海外データとの比較を通じて日本人患者の病態や診療実態とその成績を明らかにし,平成23年度には医療者が利用しやすい形での情報発信を行う.最終的にこうしたデータをもとに,MENの診療指針を作成,公開する.
結果と考察
データベースの解析により,欧米患者とは異なる臨床像が明らかとなり,これに基づいて診断アルゴリズムの作成を行った.また遺伝子解析を積極的に進め,未報の変異を同定するとともに,病原性の不確実な変異については,タンパク安定性試験によって病原性を評価するシステムを構築した.さらに患者・家族や一般市民を対象としたシンポジウムを開催し,本疾患の認知の拡大,患者・家族支援に取り組んだ.
結論
 本研究班では日本内分泌学会をはじめとした関連学会の支援を受け,世界最大級のMEN臨床データベース構築,遺伝子解析の推進を順調に遂行できた.稀少疾患といえども科学的根拠に基づいた診療指針を提示することが重要であり,こうした成果を診療アルゴリズムに反映させることができた.また本症の啓発を目的としたシンポジウムの開催や患者・家族会との連携など,いずれも順調に推進することができた.今後は患者の経過を長期的に追跡し,長期予後を明らかにしていくとともに治療アルゴリズムの作成が課題である.

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128066B
報告書区分
総合
研究課題名
多発性内分泌腫瘍症1型および2型の診療実態調査と診断治療指針の作成
課題番号
H22-難治・一般-105
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 晃洋(信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 眞一(福島県立医科大学)
  • 内野 眞也 (野口病院)
  • 小杉 眞司(京都大学大学院 医学研究科)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学)
  • 今井 常夫(名古屋大学 医学部)
  • 河本 泉(関西電力病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多発性内分泌腫瘍症の国内における診療実態を明らかにし,標準的な診療法を提案する.医療者や一般市民に対して本症の認識を高めるための啓発活動を行うとともに,患者・家族への支援体制を構築する.
研究方法
日本内分泌学会,日本甲状腺外科学会,日本内分泌外科学会の協力を得て学会員に症例調査票を送付した.一次調査では患者診療経験の有無とその人数の報告を依頼した.また研究班のホームページにも症例登録エリアを設置し,症例を経験した場合の報告を依頼した.
患者を登録した医師のうち本研究班に参加していない医師を対象に,現在の診療の実際や問題点・課題を質問紙により調査した.
研究班内に診療指針作成委員会を設け,文献検索はNPO法人日本医学図書館協会に一括依頼した.検索データベースはPub-Medおよび医中誌WEBである.各委員はこの検索結果を参照し,さらに各自が二次情報源も含めたハンドサーチにて十分な検索を行った.
患者・家族会と合同で医療関係者,患者・家族,さらに一般市民を対象とした公開シンポジウムを開催した.
結果と考察
患者データバンクの構築と解析:関連学会の協力のもと,国内の医療者から得た多くの登録症例について,その臨床的特性について解析を進めた.
診療実態調査:現在のMEN診療の実際や問題点・課題を質問紙により調査した.
遺伝学的検査:MEN1,MEN2の原因遺伝子について,患者からの承諾,検体の搬送と解析の流れを構築した.国内の変異データベース構築を目標にMEN1およびMEN2の原因遺伝子であるMEN1とRETについて,積極的に解析を進めた.
新規原因遺伝子の検索:MEN1に関して最近報告された原因遺伝子につき,解析を進めた.
診療指針の作成:臨床現場での利便性を重視し,本症の診療指針を簡便なアルゴリズムの形で作成した.
情報ネットワーク構築:ホームページを整備するとともに,医療関係者がメール上で情報交換や討論ができるメーリングサイトを構築した.
啓発活動:患者・家族会と合同で医療関係者,患者・家族,さらに一般市民を対象とした公開シンポジウムを開催した.
患者・家族支援,患者会との連携:患者・家族が求める支援について,患者と配偶者を対象とした調査を行った.
結論
関連学会の支援を受け,世界最大級のMEN臨床データベース構築,遺伝子解析の推進を順調に遂行でき,それらを反映した診断アルゴリズムを作成した.
また本症の啓発を目的としたシンポジウムの開催や患者・家族会との連携など,いずれも順調に推進することができた.

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128066C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班で構築したデータベースの解析により,日本人患者の臨床的特徴,特に欧米人患者との違いが明らかとなった.また積極的な遺伝子解析の結果,未報の変異を多数同定した.これらには病原性の不明確な変異もあったが,タンパク安定性試験の導入によって,病原性評価を行う流れを構築した.
臨床的観点からの成果
患者支援において患者・家族のニーズを把握するため,患者会を中心にアンケート調査を行った.これにより,患者のみならず血縁者,配偶者にもそれぞれのニーズがあることが明らかとなった.また患者会との連携を強化する目的でシンポジウムを開催するとともに,患者が自身の健康状態を把握し,医師の診療にも役立てられる患者手帳を作成した.
ガイドライン等の開発
診断について単一病変からMENを拾い上げるための診断アルゴリズムを作成した.これについては日本内分泌学会の臨床重要課題委員会での評価を経て最終的に公開される.
研究代表者が国際MEN1診療ガイドラインの作成に参画した.このガイドラインは2012年に公開された.
その他行政的観点からの成果
なし.
その他のインパクト
以下の公開シンポジウムを開催した.
多発性内分泌腫瘍症勉強会 平成22年4月10日 松本
多発性内分泌腫瘍症シンポジウム「診療ネットワーク・情報ネットワークの構築のために」9月25日 京都
市民公開講座「長寿県日本一を目指す高知県民が知っておくと得する癌のお話」10月2日 高知
「稀少内分泌腫瘍症候群の症例登録について考えるシンポジウム」 11月27日 東京
多発性内分泌腫瘍症勉強会 平成23年4月9日 安曇野

発表件数

原著論文(和文)
42件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakurai A, Suzuki S, Kosugi S et al.
Multiple endocrine neoplasia type 1 in Japan: establishment and analysis of a multicentre database.
Clinical Endocrinology , 76 (3) , 533-539  (2012)
原著論文2
Nagamura Y, Yamazaki M, Shimazu S, et al.
Novel splice mutation of the MEN1 gene identified in a patient with primary hyperparathyroidism.
Endocrine Journal , 59  (2012)
原著論文3
Yamazaki M, Suzuki S, Kosugi S, et al.
Delay in the diagnosis of multiple endocrine neoplasia type 1: typical symptoms are frequently overlooked.
Endocrine Journal , 59  (2012)
原著論文4
Sakurai A, Yamazaki M, Suzuki S, et al.
Clinical features of insulinoma in patients with multiple endocrine neoplasia type 1: analysis of a database of MEN Consortium of Japan.
Endocrine Journal , 59  (2012)
原著論文5
Sakurai A, Imai T, Kikumori T, et al.
Thymic neuroendocrine tumor in multiple endocrine neoplasia type 1: female patients are not rare exceptions.
Clinical Endocrinology , 76  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128066Z