腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成

文献情報

文献番号
201128061A
報告書区分
総括
研究課題名
腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成
課題番号
H22-難治・一般-100
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神崎 晋(鳥取大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田晋一(鳥取大学 医学部)
  • 花木啓一(鳥取大学 医学部)
  • 難波栄二(鳥取大学)
  • 五十嵐隆(東京大学 医学部)
  • 根東義明(日本大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の腎性尿崩症の頻度、治療法、遺伝子変異、合併症および予後について検討し、その結果を基に、新しい診断法、治療指針、病態生理について提案する.
研究方法
アンケート調査をもとに、わが国の腎性尿崩症について、治療法、遺伝子変異、合併症、また部分型(軽症)腎性尿崩症の特徴を解析した。アンジオテンシン変換酵素阻害剤あるいはアンジオテンシン受容体拮抗薬の母体による胎児病(腎性尿崩症を含む)を医薬品医療機器情報提供ホームページおよび医学中央雑誌から検索した。鳥取大学および日本大学で行ったV2R遺伝子解析はそれぞれの大学の倫理委員会の承認を得て施行した。
結果と考察
1)1例にAVPR2遺伝子のG12E、R113Wの2つのミスセンス変異、1例にAQP2遺伝子のA130Vに変異をホモ接合体で認めた。部分型腎性尿崩症に遺伝子変異p.Phe178Leuを見出した。2)173例中59例(34.1%)に成長発達障害を、94例(54.3%)に腎泌尿器系の合併症を認め腎不全に至ったものが11/173 (6.4%)存在した。この合併症予防のために、指針を作成し、水分摂取困難による急激な脱水に対処する患者カードを作成した。3)多飲、多尿といった特徴的症状を示しながら、水制限試験、デスモプレシン負荷試験のいずれかの検査で尿浸透圧が300 mOsm/kg以上となる症例でも、血漿AVP値が基準値~高値を示す場合、部分型と診断でき、それをもとに部分型の診断基準を策定した. 4)腎性尿崩症の薬物療法としてはサイアザイド系利尿薬、NSAIDs等が用いられ、治療の有効性は,サイアザイド系利尿薬が高い。5)ARB fetopathyでは腎乳頭の形成が障害されているために髄質におけるNaの再吸収が障害されていることが腎性尿崩症発症の本態である。
結論
1.長期合併症予防のために、腎性尿崩症の合併症予防のための指針を作成し、水分摂取困難による急激な脱水に対処する患者カードを作成した。2.部分型腎性尿崩症の診断基準を策定した.4.腎性尿崩症の治療指針を作成した.5.ARB fetopathyではNaの再吸収が障害されていることが腎性尿崩症発症の本態である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128061B
報告書区分
総合
研究課題名
腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成
課題番号
H22-難治・一般-100
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神崎 晋(鳥取大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田晋一(鳥取大学 医学部)
  • 花木啓一(鳥取大学 医学部)
  • 難波栄二(鳥取大学)
  • 五十嵐 隆(東京大学 医学部)
  • 根東義明(日本大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における腎性尿崩症(NDI)の実態を把握し、NDIの治療・フォローの指針および軽症NDIの診断指針を作成することを目的とした。
研究方法
医師を対象に、アンケートを施行し、わが国のNDIについて、頻度、治療法、遺伝子変異および合併症について解析した。V2R遺伝子およびアクアポリン-2(AQP2)遺伝子解析を各大学の倫理委員会の承認を得て施行した。
結果と考察
1)頻度: 173例のNDIが確認された。リチウム製剤の内服に起因する二次性NDIが15例報告されていた。2)遺伝子異常: V2R遺伝子の異常が75.3%、AQP2遺伝子異常8.2%に見出された。3)長期合併症: 54.3%に水腎症、水尿管、膀胱尿管逆流などの腎泌尿器系の合併症を認め、腎不全に至ったものが6.4%存在した。また、精神発達遅滞が15.6%に見られた。この長期合併症予防のために、NDIのフォローアップ指針が不可欠と思われる。4)急性合併症:NDIでは、水分摂取が制限される場合、極めて早期に脱水とそれに伴う高Na血症をきたし、その結果、重篤な中枢神経障害をきたす。水分補給の必要性を示す患者カードを作成した。5)部分型(軽症)NDI:完全型NDIの診断基準に当てはまらない軽症NDIが存在する。軽症NDIの診断基準を作成した。6)治療法:サイアザイド系利尿薬(有効性92%)、NSAIDs(67%)、抗アルドステロン薬(50%)、デスモプレシン(DDAVP)(33%)が用いられている。7)ACEI/ARB fetopathy:妊婦にARBを投与すると児にバソプレッシン不応の塩類喪失性の尿濃縮能低下とGFRの低下が生じる。7年間に発生したARBによるACEI/ARB fetopathyの症例数は合計で28例であった。
結論
本邦のNDIの頻度、合併症、治療法を解明し、予防のためのフォローアップ指針、患者カードを作成した。ACEI/ARB fetopathyに起因するNDIを見いだした。妊婦へのACEI/ARB投与は危険である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128061C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)疾患頻度を明らかにした:173例の腎性尿崩症(NDI)が確認され、先天性NDIが多くを占めたが、リチウム製剤に起因する二次性NDIが15例報告されていた。診断(発症)年齢は1歳未満が半数以上を占めているが、1?4歳で診断されている例も1?2割程度みられた。2)遺伝子変異の部位と頻度を明らかにした:抗利尿ホルモン受容体(V2R)遺伝子の異常が73例(75.3%)に見出され、アクアポリン(AQP)2遺伝子の異常が7例(8.2%)に見出された。
臨床的観点からの成果
1)長期合併症:54.3%に水腎症、水尿管、膀胱尿管逆流などの腎泌尿器系の合併症を認め、腎不全に至ったものが6.4%存在した。また、精神発達遅滞が15.6%に見られた。2)急性合併症:NDIでは、水分摂取が困難(嘔吐下痢症等)あるいは制限される(全身麻酔等)場合、極めて早期に脱水とそれに伴う高Na血症をきたす。その結果、重篤な中枢神経障害をきたすことを明らかにした。3)部分型(軽症)NDI:遺伝子診断で確認出来た従来のNDIの診断基準に当てはまらない軽症NDI存在することを示した。
ガイドライン等の開発
1)NDIのフォローアップ指針:本症は多くの例に腎泌尿器系の合併症や精神発達遅滞がみられるので、それを早期に発見・予防するために、長期合併症予防のフォローアップ指針を作成した。2)部分型(軽症)NDIの診断基準:完全型NDIの診断基準に当てはまらない軽症NDIを見逃さないために、軽症NDIの診断基準の目安を作成した。3)治療法:文献やアンケート調査から、本症に有効な高い治療(薬)法とその用法、更にそれらの有効性をまとめた。
その他行政的観点からの成果
1)患者カード:NDIは水分摂取困難や制限は極めて危険なため、水分補充を促す患者カードを作成して所持させる。2)リチウム製剤:二次性NDIの多くがリチウム製剤に起因する。その使用に十分な注意が必要である。3)母体へのアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)あるいはアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を投与は、児にACEI/ARB fetopathyを発症し、その結果NDIを来す。妊娠母体へのこれらの薬剤投与は危険である。
その他のインパクト
腎性尿崩症の患者の会において、これらの成果を報告し、合併症予防の重要性を述べた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
腎性尿崩症の患者の会において、これらの成果を報告し、合併症予防の重要性を述べた。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128061Z