文献情報
文献番号
201128057A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人における新生児糖尿病発症原因遺伝子異常の実態把握および遺伝子変異部位による薬効変化に関する検討
課題番号
H22-難治・一般-096
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 暢也(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
研究分担者(所属機関)
- 長嶋 一昭(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学 )
- 佐々木真弓(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学 )
- 依藤 亨(大阪市立総合医療センター)
- 小泉 昭夫(京都大学 医学研究科 環境衛生学)
- 棚橋 祐典(旭川医科大学 医学部)
- 雨宮 伸(埼玉医科大学 医学部)
- 南條 輝志男(那智勝浦町立温泉病院地域医療研究センター )
- 古田 浩人(和歌山県立医科大学 医学部)
- 花房 俊昭(大阪医科大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新生児糖尿病は発症原因および頻度が詳細不明な希少疾患である。本研究は、本邦における新生児糖尿病発症頻度に関する疫学的調査、症例の集積、発症原因遺伝子の解析、遺伝子変異部位に応じたin vitroでの薬効評価および本邦における診断基準の策定を目的とする。
研究方法
新生児糖尿病に関する全国963施設へのアンケート調査「新生児糖尿病の疫学的実態把握のための全国調査」および追加調査結果を整理し、重複症例を除外し、本邦における新生児糖尿病発症頻度を推計した。新生児糖尿病の主要な発症原因遺伝子と考えられているKir6.2、SUR1およびインスリンの遺伝子変異について解析を行い、日本人症例における発症原因遺伝子に関する実態を検討するとともに遺伝子変異に伴う薬剤反応性変化について検討した。内科および小児科の糖尿病領域および遺伝学領域の専門家により討議を行い、我が国における新生児糖尿病臨床診断基準案を策定した。本研究は京都大学大学院医学研究科・医学部の倫理委員会の承認を受け実施した。
結果と考察
従来、新生児糖尿病発症頻度は30-50万人出生に1人程度と考えられてきたが、本全国アンケート調査により、本邦発症頻度は従来想定より高頻度(約9万人出生に1人程度)であることを示唆する結果を得た。新生児糖尿病発症原因遺伝子に関する検討から、欧米での報告同様、日本人においてもKir6.2遺伝子異常の頻度が最も高い結果を得た。確認された遺伝子変異に起因する経口血糖降下薬(SU薬)の薬効変化をin vitro実験で検討した。当該遺伝子変異を有する新生児糖尿病症例での薬剤反応性とin vitro事前薬効評価による薬剤反応性評価が同様な傾向を示し、遺伝子変異部位に応じたテーラーメイドの治療可能性を示唆する結果を得た。内科糖尿病、小児科糖尿病および遺伝学領域の専門家で討議し、新生児糖尿病臨床診断基準案を作成した。今後、臨床現場へのフィードバック、実地検証後の臨床現場からの再フィードバックを繰り返し、改訂を重ねることが必須であると考える。
結論
日本人新生児糖尿病発症頻度は約9万人出生に1人程度と推定されること、日本人新生児糖尿病発症原因遺伝子はKir6.2遺伝子異常の頻度が最も高いこと、さらに遺伝子変異に起因する経口血糖降下薬(SU薬)の薬効変化がin vitro解析により処方前評価が可能であることが示唆された。我が国における新生児糖尿病臨床診断基準案を策定した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
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