日本人特有の病態を呈する高IgD症候群に向けた新規診療基盤の確立

文献情報

文献番号
201128055A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人特有の病態を呈する高IgD症候群に向けた新規診療基盤の確立
課題番号
H22-難治・一般-094
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
平家 俊男(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究 iPS細胞研究所)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学 )
  • 小原 收(かずさDNA研究所 生物物理学)
  • 重松 陽介(福井大学医学部 小児科学)
  • 横田 俊平(横浜市立大学医学研究科 小児科学)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院 小児科学)
  • 原 寿郎(九州大学大学院成育発達医学 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本に於ける高IgD症候群診断の問題点として、1)血清IgD値が高値ではない症例が多い、2)尿中メバロン酸測定の体制が整っていない、3)酵素活性測定を海外の施設に依存している、がある。そのため、確固とした日本の高IgD症候群の把握を行い、確定診断例における臨床所見の経時的把握とともに欧米症例との比較検討にて日本における高IgD症候群の実態把握に必須である。さらに、病態解析、それに基づいた治療法開発を行う。
研究方法
H23年度において確認した6例の確定診断例について詳細な診療情報を収集し整理し、日本の高IgD症候群症例について、欧米症例と比較検討を行う。さらに、確定診断症例からiPS細胞を作製し、病態解明・治療基盤開発のための基盤を整備する。さらに、臨床研究にて、アナキンラの治療効果を判定する。
結果と考察
日本における高IgD症候群の確定診断例における臨床情報把握の結果、当初明らかではなかった血清IgD値の増加が観察された。また、日本人と欧米人における変異の相違に由来する可能性が考えられるが、腹部症状の軽症である症例を多数認めた。高IgD症候群の見落としの有無について検討するため留意する疾患として、初発臨床症状が類似するPFAPA19症例において検討したが、高IgD症候群と診断される症例は見い出されなかった。
さらに、我々は、確定診断例6例のうち5例について、保護者より同意書を取得してPS細胞を作成し、継続して研究を進めている。
一方、臨床研究として、日本における最重症例1例において、ご家族の希望、同意のもと、京都大学医の倫理委員会へ抗Il-1製剤であるアナキンラの使用について倫理申請書を提出し、医の倫理委員会からの承認を得た後、アナキンラの投与を行っている。まだ観察期間は短いが、臨床所見、検査所見の改善を認めている。今後その効果判定を踏まえ、医師主導治験等を検討している。
結論
日本人の高IgD症候群における臨床症状、検査所見は、欧米人のそれと特徴を異とする。その観点から、日本人の高IgD症候群の病態にせまる分子生物学的基盤に基づく病態解明、それに基づく治療基盤の開発が必須である。そのため、我々の研究室では、5症例からiPS細胞を作成させて頂いた。現在、iPS細胞としての品質確認中であるが、今後、臨床症状と対比しながら、その疾患基盤、および治療に向けた研究を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201128055B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人特有の病態を呈する高IgD症候群に向けた新規診療基盤の確立
課題番号
H22-難治・一般-094
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
平家 俊男(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学 )
  • 小原 收(かずさDNA研究所 生物物理学)
  • 重松 陽介(福井大学医学部 小児科学)
  • 横田 俊平(横浜市立大学医学研究科 小児科学)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院 小児科学)
  • 原 寿郎(九州大学大学院成育発達医学 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における高IgD症候群診断の問題点として、1)血清IgD値が高値ではない症例が多い、2)尿中メバロン酸測定の体制が整っていない、3)酵素活性測定を海外の施設に依存している、がある。尿中メバロン酸測定体制の整備、酵素活性測定体制の整備を行うとともにアンケート調査を行い、日本における高IgD症候群の実態把握を行う。また治療開発として、我々の把握している高IgD症候群の最重症例に対してアナキンラ投与を、臨床研究として実施する。さらなる包括的病態解析のため、疾患iPS細胞を作製する。
研究方法
1)アンケート調査を行う、2)尿中メバロン酸測定・メバロン酸キナーゼ(MK)活性測定の系を確立する、3)日本での同疾患の臨床的な特徴、プロフィールを提供する、4)PFAPA等の近縁疾患において、高IgD症候群の漏れ込みの有無について検討する、5)iPS細胞を作成して研究に供する、6)治療基盤開発に繋げる。
結果と考察
本研究にて、日本の真の高IgD症候群の症例は6例に留まる事を見い出した。当初明らかではなかった血清IgD値の増加も観察された。また、日本人と欧米人における変異の相違に由来する可能性が考えられるが、腹部症状の軽症である症例を多数認めた。
一方、乳児期発症の周期性発熱を呈するなどの臨床症状が類似する疾患であるPFAPAにおいて、高IgD症候群の見落としがないか検討した。19例において検討したが、高IgD症候群症例は確認できなかった。
また、確定診断例6例のうち5例について、保護者より同意書を取得してiPS細胞を作成した。現在、研究が進行中である。
高IgD症候群の標準的治療法については、世界的にみても発症例数が多くないため、確立されたものはない。我々はこの研究の一環として、日本における最重症例1例において、臨床研究としてアナキンラの投与を行った。まだ観察期間は短いが、臨床所見、検査所見の改善を認めている。
結論
日本人の高IgD症候群における臨床症状、検査所見は、欧米人のそれと特徴を異とする。その観点から、日本人の高IgD症候群の病態にせまる分子生物学的基盤に基づく病態解明、それに基づく治療基盤の開発が必須である。そのため、我々の研究室で作製した5症例からのiPS細胞を用いて、その疾患基盤、および治療に向けた研究を進めていく。アナキンラ投与にて一定の改善を認めているため、治療薬としての開発を進展させる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128055C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究助成により、尿中メバロン酸測定及びメバロン酸キナーゼ(MK)活性の迅速で確実な測定系を確立した。この成果により日本における高IgD症候群の診断基盤が確立した。日本における6症例中5症例について、保護者の同意を頂き、疾患特異的iPS細胞を作製した。血球系細胞への分化方法を確立し、病態解析と治療基盤開発研究を進めているところである。
臨床的観点からの成果
本研究にて把握できた真の高IgD症候群6症例から得られた知見、例えば、1)血清IgD値が正常範囲内に留まることがある、2)消化器症状、関節炎、皮疹の発症頻度が低い、などを加味した診療ガイドラインの作成を行った。一方、最重症例1例においてアナキンラ治療の臨床研究を行い、引き続いてカナキヌマブの人道的使用を行い、その有効性を確認した。現在は他の症例においてもカナキヌマブの適応拡大に向けた治験が進行中である。また次世代シーケンサーを使用した遺伝子検査体制を確立し、より迅速な診断が可能となった。
ガイドライン等の開発
高IgD症候群診療フローチャートを作成し、小児リウマチ学会での承認を経て自己炎症性疾患サイトというWEBサイトに公開した。臨床症状に加えて、尿中メバロン酸測定・メバロン酸キナーゼ(MK)活性測定・遺伝子検査を組み合わせることにより確実な診断が可能となった。今後、臨床研究や治験より得られるであろうアナキンラやカナキヌマブの使用成績を踏まえ診療フローチャートを修正していく。
その他行政的観点からの成果
高IgD症候群に対するアナキンラの治療薬としての開発において、希少疾患に対する医師主導治験の実施の可能性について多方面から問いかけがあった。 カナキヌマブに関しては、現在適応拡大に向けた治験が進行中である。患者はCAPS患者会への参加が可能となり、CAPS患者との交流の中で自己炎症性疾患に向き合える素地が成熟した。本成果は研究期間終了後も厚労省難治性政策事業においてMindsの理念に沿った診療ガイドラインの作成に引き継がれている。
その他のインパクト
臨床研究として行ったアナキンラ治療に対して、患者さんの居住地域の放送局において特集が放送されたことは報告したが、その後、経過や問題点に関しても特集が放送された。それを踏まえ、全国系列の放送局においても特集が放送された。 又、自己炎症疾患の周知を目的としたWEBサイトを開設し、高IgD症候群に関する情報の提供も開始した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
なし
詳細情報
分類:

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
酒井 秀政、平家 俊男
日本における高IgD症候群の診断と展望
日本臨床免疫学会会誌 , 34 (5) , 382-387  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128055Z