文献情報
文献番号
201128054A
報告書区分
総括
研究課題名
有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症)、尿素サイクル異常症(CPS1欠損症・OTC欠損症)、肝型糖原病の新規治療法の確立と標準化
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-093
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
堀川 玲子(独立行政法人国立成育医療研究センター 内科系専門診療部内分泌代謝科)
研究分担者(所属機関)
- 笠原 群生(独立行政法人国立成育医療研究センター臓器移植センター)
- 重松 陽介(福井大学医学部看護学科)
- 大浦 敏博(東北大学大学院医学系研究科)
- 依藤 亨(大阪市立総合医療センター)
- 中村 公俊(熊本大学医学部付属病院小児科)
- 伊藤 秀一(独立行政法人国立成育医療研究センター器官病態系内科部腎臓・リウマチ・膠原病科)
- 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター再生医療センター)
- 宮入 烈(独立行政法人国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、有機酸代謝異常症、尿素サイクル異常症、肝型糖原病における患者の生命予後やQOL改善のために、内科的及び新規外科的治療の標準化を図ることである。また、疾病DNA・細胞バンク登録を行い、合併症進展の機序解明等臨床研究のバックアップを行う。
研究方法
(1)有機酸代謝異常症、尿素サイクル異常症、糖原病の長期予後調査の解析と尿素サイクル異常症177例の詳細質問紙調査、(2)生体肝移植自験例及び二次調査症例・文献例を検討し移植適応スコアを作成、これまでの移植例と照合し作成したスコアの妥当性を評価、(3)国立成育医療研究センターにて生体肝移植術施行患者における周術期血液浄化療法の有効性、感染学的術前・周術期リスクファクターの後方視的検討、(4)余剰肝の提供による肝細胞バンクを設立し、研究材料として有用な肝細胞及びその他の細胞の寿命延長株の樹立、を行った。
結果と考察
内科治療長期生存例の多くでQOLが著しく不良であった。一方でOTC欠損症遅発型患者は、20年間の死亡率は20%以下に改善、尿素サイクル異常症でのシトルリン・フェニル酪酸の有効性、メチルマロン酸血症で膵炎を反復する例で血液浄化療法の有効性(血中MMA除去効率約84%)を認めた。生体肝移植例は77例中5例が死亡し、生存率93.5%であった。生存例の予後は全例QOL改善、身体発育予後は良好であり、内科治療に対する優位性が示された。一方、周術期の死亡例が多かった。神経学的予後改善は60%に認めた。プロピオン酸血症3例で大脳基底核壊死の進行、メチルマロン酸血症3例 (移植後2例) において、腎の高度の間質細胞浸潤と尿細管の委縮を認め、原病による変化が肝移植後も進行していることが考えられた。
生体肝移植適応基準をスコアリング化し適応疾患分類を明らかにし、周術期感染症管理のリスクファクターと対応を示したことで、実地臨床における判断基準・管理基準の標準化が図れた。
先天性代謝異常症患者から摘出されたレシピエント肝より、肝細胞を分離し、メチルマロン酸血症とCPS1欠損症のレシピエント肝細胞の寿命延長株作製に成功した。
生体肝移植適応基準をスコアリング化し適応疾患分類を明らかにし、周術期感染症管理のリスクファクターと対応を示したことで、実地臨床における判断基準・管理基準の標準化が図れた。
先天性代謝異常症患者から摘出されたレシピエント肝より、肝細胞を分離し、メチルマロン酸血症とCPS1欠損症のレシピエント肝細胞の寿命延長株作製に成功した。
結論
先天代謝異常症における生体肝移植により従来の内科的治療で得られなかった予後の改善やQOLの向上が得られた。生体肝移植適応疾患の整理とスコアリングを策定することで治療の標準化が確立した。長期予後管理について、症例の集積と生化学的データの解析により、実情把握、現行治療にフィードバックされた。
移植施設の集約化による移植適応判定や周術期管理の向上が望まれる。
移植施設の集約化による移植適応判定や周術期管理の向上が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
-