日本人長鎖脂肪酸代謝異常症の診断方法の確立、及び治療方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201128050A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人長鎖脂肪酸代謝異常症の診断方法の確立、及び治療方法の開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-089
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院 生命科学研究部)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院 代謝科 小児救急総合診療科)
  • 長谷川 有紀(島根大学 医学部)
  • 但馬 剛(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては長鎖脂肪酸代謝異常症の(1)患者数と病状の現状把握、(2)新規の診断基準の作成、(3)病態に合わせた治療指針の作成、(4)医療現場へのフィードバックに基づく今後の長期フォローアップ・支援体制の確立を目的とする。
研究方法
以下の3つの集団を対象として、インフォームドコンセントを得た後に検体を採取し、酵素診断、遺伝子診断で病像を確定する。1)タンデムマス法を用いたマス・スクリーニングで疑われた症例、2)乳児突然死症候群やライ症候群、インフルエンザ脳症などとして急性発症した症例、3) 幼児期以降に筋肉痛、脱力、肝機能障害のエピソードなど骨格筋症状で発症した症例である。平行して文献調査、アンケート調査を実施し、患者数と病状の現状把握を行う。長鎖脂肪酸代謝異常症の上記疫学調査をもとに本疾患のスクリーニングから確定診断に至る診断支援体制を構築する。それを基に長鎖脂肪酸代謝異常症の各病状に応じた治療指針の作成を試みる。これらを基に、スクリーニング→確定診断→病状・病型に応じたきめ細かな治療とフォローアップに至る、全国的なシステム作りを試みる。
結果と考察
全国の臨床医からのアンケート結果とタンデムマスパイロット研究を合わせた患者集計をまとめると、最も多い疾患が極長鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症でその頻度は1/12.8万、長鎖脂肪酸代謝異常症全体での頻度は1/5.6万と計算された。VLCAD欠損症の遺伝子解析では、K264EとK382Qが日本人症例のhot spotである可能性を示唆した。カルニチンパルミトイル-CoAトランスフェラーゼ(CPT) 2欠損症を見逃しなくスクリーニングするためには、低めの陽性基準に速やかな確定・除外診断のための酵素診断法を組み合わせることが不可欠であることも指摘した。アンケートでは、スクリーニング診断例が10例、発症後診断例が27例で、発症例の多くは急性発症例であるが、VLCAD欠損症と3頭酵素(TFP)欠損症の一部に慢性発症例(全て横紋筋融解・筋肉痛症状)が見られた。後遺症無く生存が29例(78%)であるが、死亡例も4例(11%)認められ、CPT 2欠損症と VLCAD欠損症にSIDS様突然死症例が認められた。強調すべきは、タンデムマスによるNBSで診断された10例全てが正常発育を示している点である。
結論
長鎖脂肪酸代謝異常症は、早期に診断し簡単な生活指導を行うことにより、その多くで脳症や突然死を避けることが可能である。タンデムマスを用いたNBSとその後の確定診断・フォローアップ体制、および長期追跡調査体制構築の必要性を再確認した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128050B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人長鎖脂肪酸代謝異常症の診断方法の確立、及び治療方法の開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-089
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院 生命科学研究部)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院 代謝科 小児救命救急科)
  • 長谷川 有紀(島根大学 医学部)
  • 但馬 剛(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては長鎖脂肪酸代謝異常症の(1)患者数と病状の現状把握、(2)新規の診断基準の作成、(3)病態に合わせた治療指針の作成、(4)医療現場へのフィードバックに基づく今後の長期フォローアップ・支援体制の確立を目的とする。
研究方法
以下の3つの集団を対象として、インフォームドコンセントを得た後に検体を採取し、酵素診断、遺伝子診断で病像を確定する。1)タンデムマス法を用いたマス・スクリーニングで疑われた症例、2)乳児突然死症候群やライ症候群、インフルエンザ脳症などとして急性発症した症例、3) 幼児期以降に筋肉痛、脱力、肝機能障害のエピソードなど骨格筋症状で発症した症例である。平行して文献調査、アンケート調査を実施し、患者数と病状の現状把握を行う。長鎖脂肪酸代謝異常症の上記疫学調査をもとに本疾患のスクリーニングから確定診断に至る診断支援体制を構築する。それを基に長鎖脂肪酸代謝異常症の各病状に応じた治療指針の作成を試みる。これらを基に、スクリーニング→確定診断→病状・病型に応じたきめ細かな治療とフォローアップに至る、全国的なシステム作りを試みる。
結果と考察
患者集計をまとめると、最も多いのが極長鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症でその頻度は1/12.8万、次いでカルニチン転送障害が1/25万、カルニチンパルミトイル-CoAトランスフェラーゼ(CPT) 1と2欠損症がそれぞれ1/32万で、長鎖脂肪酸代謝異常症全体での頻度は1/5.6万と計算された。次いで発見された患者を治療管理するための要件を検討し、①かかりつけ医、②近隣の救急病院、③代謝異常症専門医のいる施設の3者の連携体制構築が急務とし、それに役立てる意味も含めて“長鎖脂肪酸代謝障害のハンドブック”を作成し、全国の一線の臨床医や患者会へ配付した。最後に長鎖脂肪酸代謝異常症における長期追跡調査を検討し、既存の体制はいずれも問題を抱えていることを指摘し、新生児マス・スクリーニング(NBS)事業と先天代謝異常学会のような関連学会とが協力した新たな体制の確立が必要と考えた。
結論
長鎖脂肪酸代謝異常症は、早期に診断し簡単な生活指導を行うことにより、その多くで脳症や突然死を避けることが可能である。タンデムマスを用いたNBSとその後の確定診断・フォローアップ体制、および長期追跡調査体制構築の必要性を再確認した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人における長鎖脂肪酸代謝異常症の頻度を確定した。最も多いのが極長鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症でその頻度は1/12.8万、次いでカルニチン転送障害が1/25万、カルニチンパルミトイル-CoAトランスフェラーゼ(CPT) 1と2欠損症がそれぞれ1/32万で、長鎖脂肪酸代謝異常症全体での頻度は1/5.6万と計算された。VLCAD欠損症の遺伝子解析で、K264EとK382Qが日本人症例のhot spotである可能性を示唆した。
臨床的観点からの成果
タンデムマスによる新生児マス・スクリーニング(NBS)で診断された長鎖脂肪酸代謝異常症の症例全てが正常発育を示していることを確認し、その有用性を明らかにした。①かかりつけ医、②近隣の救急病院、③代謝異常症専門医のいる施設の3者の連携体制構築が患者管理に急務と考え、それに役立てる意味も含めて“長鎖脂肪酸代謝障害のハンドブック”を作成し、全国の一線の臨床医や患者会へ配付した。次いで長期追跡調査を検討し、NBS事業と先天代謝異常学会のような関連学会とが協力した新たな体制の確立が必要とした。
ガイドライン等の開発
【概念】【病因】【臨床像】【診断】【治療】から成る、分かりやすく簡潔にまとめた“長鎖脂肪酸代謝障害のハンドブック”を作成し、全国の一線の臨床医や患者会へ配付した。
その他行政的観点からの成果
さいたま市、埼玉県の各マススクリーニング委員会、母子保健委員会委員を歴任し講演を繰り返している(2011年12月11日、2012年1月30日、2月14日等)と共に、神奈川県、群馬県、栃木県からの相談や栃木県産婦人科医会での講演などもこなし、タンデムマスの普及を図っている。
その他のインパクト
【概念】【病因】【臨床像】【診断】【治療】から成る、分かりやすく簡潔にまとめた“長鎖脂肪酸代謝障害のハンドブック”を作成し、全国の一線の臨床医や患者会へ配付した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
日本マス・スクリーニング学会、日本先天代謝異常学会、日本小児神経学会等
学会発表(国際学会等)
5件
SSIEM(ヨーロッパ先天代謝異常学会), ASMRM(アジアミトコンドリア学会)等
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
さいたま市でのタンデムマススクリーニングの開始、埼玉県でのタンデムマススクリーニングの開始
その他成果(普及・啓発活動)
1件
長鎖脂肪酸代謝障害のハンドブック作成

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
久保田一生, 深尾敏幸, 堀友博 他
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2欠損症のろ紙血血清のアシルカルニチンプロファイルの経時的変化
日本小児科学会雑誌 , 115 , 956-960  (2011)
原著論文2
Yagi M, Lee T, Awano H, et al.
A patient with mitochondrial trifunctional protein deficiency due to the mutations in the HADHB gene showed recurrent myalgia since early childhood and was diagnosed in adolescence.
Molecular Genetics & Metabolism , 104 , 556-559  (2011)
原著論文3
Tsuburaya R, Sakamoto O, Arai N, et al.
Molecular analysis of a presymptomatic case of carnitine palmitoyl transferase capital I, (CPT I) deficiency detected by tandem mass spectrometry newborn screening in Japan.
Brain & Development , 32 (5) , 409-411  (2010)
原著論文4
Hori T, Fukao T, Kobayashi H, et al.
Carnitine palmitoyltransferase 2 deficiency: the time-course of blood and urinary acylcarnitine levels during initial L-carnitine supplementation.
Tohoku Journal of Experimental Medicine , 221 (3) , 191-195  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128050Z