再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
201128049A
報告書区分
総括
研究課題名
再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立
課題番号
H22-難治・一般-088
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮澤 輝臣(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 中島 康雄(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 岡 寛(東京医科大学 八王子医療センター)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 再発性多発軟骨炎では軟骨の炎症が持続し、多彩な病態を呈する原因不明の稀な難治性炎症性疾患である。本邦における疫学調査や病態解明の研究は未だ不十分で診断・治療に難渋することも多い。
 本年度は、新規治療法の確立を目指して、我々の実施した全国疫学調査の解析結果に基づき、平成23年度の計画にそって聖マリアンナ医科大学および全国基幹医療機関・施設(再発性多発軟骨炎診療担当科)の研究者で構成される再発性多発軟骨炎の診療・治療研究チームを組織した。

研究方法
 再発性多発軟骨炎の診療・治療研究チームでは現在、治療薬(ステロイド剤、免疫抑制剤)の有効性を検証するための臨床試験を開始しており、再発性多発軟骨炎に対するステロイド+免疫抑制剤(具体的にはメトトレキサート)併用療法の有効性の評価するための症例の組入を行なっている。

結果と考察
 治療に関する基礎的データーを補充する目的で、本邦での再発性多発軟骨炎の治療法の実態を知るべく全国の主要な医療機関に、治療法に関するアンケート調査を行なった。治療法について現在まで104症例のデーターベースが出来上がった。今後、治療法の有効性に関する詳細な解析を行う。
 治療法を確立するためには、治療の前後で再発性多発軟骨炎の疾患活動性を客観的に評価するシステムが必要である。そこでフランスのARNAUD博士らとの国際共同研究に基づき、日本語版の再発性多発軟骨炎の疾患活動性評価票(RPDAI)を作成した。この評価法を用いることで、治療の有効性をより客観的に評価することが可能になった。今後、本邦の症例におけるRPDAIの有用性を評価する必要がある。
 同時に臨床的な疾患活動性を評価するため、より有用な疾患活動性マーカーが必要とされている。血清中の可溶性TREM-1濃度は再発性多発軟骨炎の病勢を反映するCRP濃度と正の相関を示すだけでなく、健常者と再発性多発軟骨炎患者を分ける感度と特異度においてCRPよりも優れていた。再発性多発軟骨炎病変部ではTREM-1が発現していることが明らかとなった。可溶性TREM-1はCRPよりも感度に優れた再発性多発軟骨炎の疾患活動性マーカーになる可能性が示唆された。

結論
 再発性多発軟骨炎に対するステロイド+免疫抑制剤併用療法の有効性の評価するための症例の組入を行なっている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201128049B
報告書区分
総合
研究課題名
再発性多発軟骨炎の診断と治療体系の確立
課題番号
H22-難治・一般-088
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮澤 輝臣(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 中島 康雄(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 岡崎 貴裕(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 岡 寛(東京医科大 八王子医療センター)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis、RP)は、原因不明で稀な難治性疾患である。認知度が低く診断が見過ごされているケースも多く、気道軟骨病変などの臓器病変を伴う患者は時に致死的であり、診断、治療法の確立を目的とする。本研究事業では新規治療法の確立を目指して、我々の実施した全国疫学調査の解析結果に基づき、聖マリアンナ医科大学および全国基幹医療機関・施設(RP診療担当科)の研究者で構成されるRPの診療・治療研究チームを組織した。
研究方法
 RPの診療・治療研究チームでは現在、治療薬(ステロイド剤、免疫抑制剤)の有効性を検証するための臨床試験を開始しており、RPに対するステロイド+免疫抑制剤(具体的にはメトトレキサート)併用療法の有効性の評価するための症例の組入を行なっている。

結果と考察
 新規治療薬開発や治療薬選択基準の策定を見据えて、基礎的研究としての病態解明を目的として、患者検体の収集・保存体制を構築した。現在までに58例のRP患者血清とほぼ同数の白血球を収集している。その網羅的解析から、単球・骨髄系細胞由来因子(TREM-1)の上昇を明らかにした。現在、TREM-1に注目した疾患活動性マーカーと治療標的候補分子の探索研究を行っている。
 French reference center for rare auto-immune diseases (Laurent ARNAUD博士)との国際多施設共同研究から、疾患活動性評価指標repalsing polychondritis disease activity index RPDAIを提唱した。現在、その有用性を評価するため、国際多施設共同の臨床前向き研究を計画している。今後の本邦における臨床試験評価に必須となる日本版のRPDAIや重症度評価基準(試案)を作成した。
 治療に関する基礎的データを補充する目的で、本邦でのRPの治療法の実態を知るべく全国の主要な医療機関に、治療法に関するアンケート調査を行なった。治療法について現在まで104症例のデータベースが出来上がった。今後、治療法の有効性に関する詳細な解析を行う。現在臨床研究としてRPに対するステロイド+免疫抑制剤併用療法の有効性の評価するための症例の組入を行なっている。

結論
 今後は、これまでの当該研究成果を基盤として、患者会と連携して患者登録ウェブサイトを構築し、コホート研究を進めながら臨床情報データベース構築、生体組織バンク化をさらに本格化させていく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128049C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 再発性多発軟骨炎(RP)は、原因不明で稀な難治性疾患である。RPの炎症病態を理解するため患者血清を用いて炎症性サイトカインの網羅的検討を行なった。我々の構築している患者検体の収集・保存体制を利用して現在までに58例のRP患者血清を収集して、単球・骨髄系細胞由来因子(TREM-1)の上昇を明らかにした。即ちRPでは血中TREM-1が著増して、炎症病態を構築する。今後TREM-1に注目した疾患活動性マーカーと治療標的候補分子の探索研究を行う。
臨床的観点からの成果
 RPの炎症病態のコントロールには難渋する場合も多く、標準的治療が確立していない。再発性多発軟骨炎の診療・治療研究チームでは治療薬(ステロイド剤、免疫抑制剤)の有効性を検証するための臨床試験を開始しており、再発性多発軟骨炎に対するステロイド+免疫抑制剤(具体的にはメトトレキサート)併用療法の有効性の評価するための症例の組入を行なっている。近い将来難治性RPに対する標準的治療法が確立されることが期待できる。
ガイドライン等の開発
 本邦における再発性多発軟骨炎の疫学調査や病態解明の研究は未だ不十分で診断・治療に難渋することも多い。我々はRPの診断・治療指針(案)を作成し、その後公表した。さらに治療法を確立するためには、治療の前後でRPの疾患活動性を客観的に評価するシステムが必要である。フランスのARNAUD博士らとの国際共同研究に基づき、日本語版のRPの疾患活動性評価票(RPDAI)を作成した。この診断・治療指針(案)とRPDAIを応用して、客観的な診断・治療が可能になる。
その他行政的観点からの成果
 再発性多発軟骨炎は一般市民のみならず、医師や医療関係者においても十分認識されていない。その結果、適切な診断治療に時間が掛かる場合が往々にして認められる。我々は本研究班のホームページの立ち上げ、リウマチ学会での啓蒙事業、市民レベルの講演会、他専門領域の学会での教育講演などを通じて、再発性多発軟骨炎の非専門医師や一般市民への啓蒙活動を行い、本疾患の認知度の向上に努めた。疫学調査とともにおこなった患者QOL研究で、多診療科にまたがる受診形態と高額な医療費等、患者の抱える問題点を浮き彫りにした。
その他のインパクト
 再発性多発軟骨炎の研究班では、再発性多発軟骨炎の患者会と密接にコンタクトをとり、新規患者の発症状況や患者目線での診断・治療ニーズの把握に努めている。研究分担者・研究協力者との班会議終了後には、患者会との相談会を行い、個々の患者の医療相談等を行い、再発性多発軟骨炎専門外来や各地の専門医の紹介を通じてより良い医療(情報)提供を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
TREM-1の再発性多発軟骨炎における診断マーカー・疾患活動性マーカー・治療標的分子としての有用性(再発性多発軟骨炎の検査方法およびそれに用いられる検査キット)
詳細情報
分類:
特許番号: 第5499405号
発明者名: 山野嘉久, 鈴木登
権利者名: 聖マリアンナ医科大学
出願年月日: 20100602
取得年月日: 20140320
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato T, Yamano Y, Ando H,et al.
Serumlevel of soluble triggering receptor expressed on myeloid cells 1 (sTREM-1) asa biomarker of disease activity in relapsing polychondritis.
Clinical andExperimental Rheumatology  (2012)
原著論文2
Oka H, Yamano Y, Shimizu J, et al.
A large-scale survey of patients with relapsing polychondritis in Japan.
Inflammation and Regeneration  (2014)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,607,695円
人件費・謝金 1,337,612円
旅費 247,010円
その他 1,807,683円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-