外胚葉形成不全免疫不全症の実態調査と治療ガイドラインの作成

文献情報

文献番号
201128048A
報告書区分
総括
研究課題名
外胚葉形成不全免疫不全症の実態調査と治療ガイドラインの作成
課題番号
H22-難治・一般-087
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 雅史(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 成育遺伝研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 布井 博幸(宮崎大学医学部 生殖発達医学講座 小児科学分野)
  • 有賀  正(北海道大学大学院 医学研究科 小児科学分野)
  • 蓮井 正史(関西医科大学 小児科)
  • 平島 光臣(香川大学医学部 免疫病理学)
  • 小林 正夫(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 小児科学)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
  • 瀧本 哲也(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 臨床研究センター 臨床研究推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 外胚葉形成不全免疫不全症は、NF-κBシグナルを伝える細胞内分子異常により発症する難治性疾患で、X連鎖遺伝形式をとるNEMO異常症がその主体をなす。本班では、昨年、我が国のNEMO異常症12名の詳細な実態を行い、その半数で炎症性腸炎が合併することを報告した。本年度は、同様の自然免疫異常により発症する慢性肉芽腫症において炎症性腸炎を合併した症例を全国アンケート調査により詳細に解析し、同時に臨床および基礎研究からその病態についても検討を行った。
研究方法
 本研究では、各医療機関における症例報告、全国医療機関へのハガキによる一次調査と症例の掘り起こし、そして、これら結果を基とした詳細なCGD腸炎患者実態調査を行った。同時に、CGD腸炎における腸内細菌叢の検討、CGDマウスを用いた硫酸デキストラン誘発大腸炎の解析などを行った。
結果と考察
1. 全国実態調査のアンケートからCGD 36例(男34例、女2例)中、腸炎を発症したのが25例(男23例、女2例)で、その発症年齢は1歳5ヶ月?39歳9ヶ月(生存者の中央値 4歳8ヶ月)であった。
2. 20症例で肉芽腫形成、炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、杯細胞の減少が見られ、特に、臨床症状が軽微の場合でも内視鏡的に異常があった。
3. 治療としてはメサラジン、ステロイド、プロバイオティクス、サラゾスルファピリジンが使用され、10名で幹細胞移植が行われた。
4. キャリアー(母親)と健常人、既往と非既往例において腸内細菌叢に相違を認めなかったが、罹患例ではその腸内細菌種は減少していた。また、罹患例の腸内細菌種は治療後に増加傾向を示した。
5. 大腸への炎症細胞の集蔟、杯細胞の消失、大腸上皮の剥離ともにCGDマウスの方が早期に観察された。集蔟した炎症細胞の一部は好中球とマクロファージであり、大腸炎患部のKC, MIP-2, TNF-αの産生量はCGDマウスの方が高値を示した。
結論
1. CGDでは約7割で炎症性腸炎が発症している。
2. 臨床症状が軽微でも、病理的変化をきたしており、早期のCF施行にて適切な治療を開始すべきである。
3. 便中細菌のT-RFLPを用いた多型解析は炎症性腸炎の早期診断および効果判定に役立つ。
4. CGDマウスを用いた硫酸デキストラン誘発大腸炎の解析から、炎症性腸炎の進行はCGDにおいて早期に進むことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-03-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201128048B
報告書区分
総合
研究課題名
外胚葉形成不全免疫不全症の実態調査と治療ガイドラインの作成
課題番号
H22-難治・一般-087
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 雅史(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 成育遺伝研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 布井 博幸(宮崎大学医学部 生殖発達医学講座 小児科学分野)
  • 有賀  正(北海道大学大学院 医学研究科 小児科学分野)
  • 蓮井 正史(関西医科大学 小児科)
  • 平島 光臣(香川大学医学部 免疫病理学)
  • 小林 正夫(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 小児科学)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
  • 瀧本 哲也(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所 臨床研究センター 臨床研究推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 外胚葉形成不全免疫不全症は、NF-κBシグナルを伝える細胞内分子異常により発症する難治性疾患で、X連鎖遺伝形式をとるNEMO異常症がその主体をなす。本研究では、我が国のNEMO異常症の実態を明らかにするために、全国の医療機関に対しアンケート調査を行い、EDA-IDの実態調査を行った。同時に、これらEDA-IDでは炎症性腸炎を発症することが多いことから、同様の自然免疫異常症である慢性肉芽腫症(CGD)に対しても実態調査を行い、これら疾患に対する治療ガイドランの策定を目指した。
研究方法
 全国1196の医療機関に対しEDA-ID患者の診療有無に関するハガキよる一次アンケート調査を行い、回答が得られた612施設と小児免疫不全症を専門とする医師への掘り起こし作業依頼にて最終的にNEMO異常症と診断可能であった男性患者12名の実態調査票を入手した。CGDに関しては、回答が得られた国内36例(男性34名、女性2名)のCGD患者のうち、腸炎を発症した25名(男性23名、女性2名)を解析の対象とした。
結果と考察
 NEMO異常症に関しては診断時期が2ヶ月~12歳2ヶ月で、歯牙欠損、発汗以上、毛髪異常など外胚葉形成不全を認め、肺炎球菌、抗酸菌などの易感染性をした。炎症性腸炎は約半数での発症し、発症時期が1歳~9歳3ヶ月で、その症状としては食欲不振、腹痛、体重増加不良などがあり、CFの所見として潰瘍形成、偽ポリポーシス、病理所見として炎症細胞の浸潤、陰窩膿瘍などを認めた。治療としてはステロイド、メサラジン、抗TNFα抗体などであった。
 CGD炎症性腸炎の発症時期は4歳2ヶ月~42歳4ヶ月で、その症状としては発熱、腹痛などであり、CFの所見としては粘膜浮腫、びらんで、病理所見としては炎症細胞の浸潤、陰窩膿瘍であった。治療としては、ステロイド、メサラジン、プロバイオティクスであり、抗TNFa抗体の使用例はなかった。移植例は10例で、うち寛解6名であった。
結論
1. NEMOで約半数、CGDで約7割の患者が炎症性腸炎を発症している。
2. 症状は類似するところが多いが、CGDでは軽微のものが多かった。
3. NEMO異常症では抗TNFα抗体が著効したが、CGD腸炎の使用されていない。
4. 両疾患で臨床症状が軽微でも、病理的変化をきたしており、早期のCF施行にて適切な治療を開始すべきである。

公開日・更新日

公開日
2013-03-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128048C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 小児稀少難病である外胚葉形成不全免疫不全症(EDA-ID)の全国実際調査を行い、確定診断に至った12名のEDA-IDが全てNEMO異常症であり、その遺伝子変異、臨床症状、治療法が明らかになった。また、その約半数で炎症性腸炎を発症していることが示され、これにより同様の自然免疫異常により発症する慢性肉芽腫症(CGD)に関しても全国実態調査を行ったところ36名のCGD患者のうち25例で炎症性腸炎を発症していることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
 NEMO異常症に併発する炎症性腸炎ならびにCGD腸炎の実態調査から、その症状は類似しており、特に軽微な臨床症状でも大腸ファイバー(CF)等にて病的所見を呈していることが多く、早期のCF施行による早い段階の適切な治療が必要と思われた。治療に関しては、両疾患ともメサラジン、ステロイド、プロバイオティクス、免疫抑制剤などが使用されており、特にNEMO異常症に関しては抗TNFα抗体が著効していた。ただ、CGDにおいてはその使用経験は無かった。
ガイドライン等の開発
外胚葉形成不全免疫不全症の診断へのガイドラン 
生下時より次の症状を呈した場合には本疾患を疑い、確定診断のための遺伝子診断(NEMO遺伝子、IkB遺伝子)を行う。
1. 歯芽欠損(歯が生えない)
2. 発汗異常(汗をかかない)
3. 毛髪異常(毛が薄い、生えない)
4. 易感染性(結核、非定型抗酸菌、ヘルペスウイルス)
5. 炎症性腸炎 など
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
70件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128048Z