スモン

文献情報

文献番号
199700990A
報告書区分
総括
研究課題名
スモン
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
岩下 宏(国療筑後病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小長谷正明(国療鈴鹿病院)
  • 小西哲郎(国療宇多野病院)
  • 千田光一(日本大神経)
  • 早原敏之(国療南岡山病院)
  • 松本昭久(市立札幌病院)
  • 伊藤久雄(国療岩手病院)
  • 中江公裕(獨協医大公衆衛生)
  • 西條一止(筑波技術短大鍼灸)
  • 宮田和明(日本福祉大社会福祉)
  • 飯田光男(国療鈴鹿病院)
  • 明石謙(川崎医大リハ)
  • 安藤徳彦(横浜市立大病院)
  • 乾俊夫(国療徳島病院)
  • 犬塚君雄(愛知県保健予防課)
  • 内野誠(熊本大病院)
  • 岡本幸市(群馬大神内)
  • 岡山健次(大宮赤十字病院)
  • 片桐忠(山形県立河北病院)
  • 加知輝彦(国療中部病院)
  • 北川達也(国療西鳥取病院)
  • 姜進(国療刀根山病院)
  • 吉良潤一(九州大神内)
  • 黒田康夫(佐賀医大内)
  • 桑原武夫(新潟大脳研)
  • 小寺良成(岡山県健康対策課)
  • 三宮邦裕(大分医大三内)
  • 塩澤全司(山梨医大三内)
  • 渋谷統寿(国療川棚病院)
  • 島功二(国療札幌南病院)
  • 庄司進一(筑波大臨床内)
  • 新村和哉(京都府健康対策課)
  • 杉村公也(名古屋大医技短大)
  • 園部正信(大津市民病院)
  • 祖父江元(名古屋大神内)
  • 高瀬貞夫(広南病院)
  • 高橋桂一(国療兵庫中央病院)
  • 高橋光雄(近畿大神内)
  • 高柳哲也(奈良県立医大神内)
  • 高山佳洋(大阪府保健予防課)
  • 竹内博明(香川医大看護)
  • 田村正秀(北海道保健福祉部)
  • 千田富義(秋田県立リハセンター)
  • 千野直一(慶応義塾大リハ)
  • 塚田直敬(信州大保健管理)
  • 寺澤捷年(富山医薬大和漢)
  • 中川正(大阪市保健所)
  • 中瀬浩史(虎の門病院)
  • 中野今治(自治医大神内)
  • 西郡光昭(宮城県保健福祉部)
  • 長谷川一子(北里大神内)
  • 蜂須賀研二(産業医大リハ)
  • 服部孝道(千葉大神内)
  • 花籠良一(いわてリハセンター)
  • 林正男(石川県健康推進課)
  • 平山幹生(福井医大二内)
  • 廣瀬和彦(東京都立府中病院)
  • 福永秀敏(国療南九州病院)
  • 松永宗雄(弘前大脳研)
  • 丸尾泰則(市立函館病院)
  • 丸山征郎(鹿児島大臨検)
  • 三浦英男(福島県立リハ飯坂温泉病院)
  • 溝口功一(国立静岡病院)
  • 森松光紀(山口大神内)
  • 森若文雄(北海道大病院)
  • 山下元司(高知県立芸陽病院)
  • 山下順章(松山赤十字病院)
  • 山田淳夫(国立呉病院)
  • 山中克己(名古屋市立中央看護専)
  • 吉田宗平(和歌山県立医大神経)
  • 渡辺幸夫(大垣市民病院)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 臨床調査研究グループ スモン調査研究班
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
A.スモンの医療と福祉の連携 B.スモン患者のQOLの向上
研究方法
スモン患者検診活動・現状調査と連携し、新たな調査用紙「介護に関するスモン現状調査個人票(補足調査)」を作成して、全国スモン患者介護の実態を調査した。その他全国各地区のスモン患者の現状、若年発症スモン、治療、東洋医学、QOL、合併症、病態、自律神経等について調査研究した。
結果と考察
1. スモン検診結果; 北海道から九州まで全国7ブロックで、8年度より99名多い計1,141名のスモン患者が検診された。全健康管理手当受給者の32.1%に当たる。昭和63年以来の初診例89例(7.6%)、再診例1054 例(92.3%)、後者の過去受診歴は昭和63 年32.6%、平成元年42.0%、2年46.6%、3年47.8%、4年53.9%、5年56.6%、6年58.6%、7年61.7%、8年65.5%であり、最近の毎年受診例が多い。男女比1:2.66、年齢のピークは男女とも発症年齢30~50歳、現在年齢60~80歳、視力は大見出し以上の障害36.3%、要補助具以上の歩行障害41.1%、下肢筋力低下79.7%、下肢痙縮・筋萎縮約50%、深部知覚異常と異常知覚は90%以上、下肢皮膚温低下70.0%、尿失禁51.7 %、大便失禁24.7%となっている。合併症あり が91.8%、そのうち高頻度は白内障43.7%、高血圧32.9%、脊椎疾患29.2%、消化器疾患24.5%、ノイローゼ23.0%、四肢関節疾患20.7%、心疾患18.8%、うつ病15.2%等であり、その他骨折12.3%、悪性腫瘍3.2%、痴呆3.1%等となっている。
介護に関するスモン現状調査;スモン研究班で昭和63 (1988)年以来実施してきた上記全国スモン患者検診現状調査と連携し、本年度新たに「介護に関する現状個人票(補足調査)」が作成され、患者団体役員の協力も得て実施され、その結果が宮田和明らにより報告された。即ち、検診受診者1,129名、患者団体役員調査分477名、計1,606名の調査票が回収され、男401名(25.0%)、女1,205名(75.0%)、全体の4分の3以上が65歳以上、毎日介護してもらっている18.0%、必要なときに介護してもらっている32.7%、介護は必要ない41.7%、介護必要時期はスモン発症時から30.8%、主な介護者は配偶者、息子、娘、嫁に代表される家族が多く、ホームヘルパーは1~2%程度であった。家族介護者の健康状態は4分の1が悪いと答えていた。介護の不安については、全体の3分の2 が不安に思うと答え、その内容は介護者の疲労・健康状態・高齢化となっている。
以上、今回の調査からスモン介護にかかわる公的・制度的保障の整備が切実に求められている。
若年発症スモン; 花籠らは、幼児期に腸性末端皮膚炎(A D E )に罹患し若年発症スモンを併発した2名とA D E 以外からの発病3名、計5名(男4、女1、31~42歳)の現状を調査した。自覚的異常感は殆どないが、A D E 例では強度の痙性麻痺、失明が残っていた。大卒2名、高卒、盲学校卒各1名で、鍼師、看護婦、公務員、自動車整備工、農家手伝いとなっていた。障害受容感は成人スモンより悪くはないが、重症例ではかなり不満が残っていると報告した。岩下らは、昨年度に引続いて九州地区若年発症スモンを調査した。本年度新たに調査した2例(47歳・女、16歳発症、48歳・男、19歳発症)はともに盲学校進学、鍼灸師となり、障害者と結婚していた。女例では、ボランティアと一緒にコンサート、福祉協議会、婦人勤労センター等への外出を楽しみにしていた。
その他; 北海道、青森県、福島県、東京都、世田谷区、神奈川県、新潟県佐渡地方、福井県、静岡県、三重県、兵庫県、島根県、山口県等日本各地におけるスモン患者の現状・検診上の問題点等が各地医療システム委員によって報告された。中江らは、スモン患者の最近の死亡状況とリスクファクターについて、昭和60年7月現在の健康管理手当受給者を12年2ヶ月追跡調査した結果、生存者3,154名、死亡者1,175名(37.3%)、平成4年までの死亡率は横ばいで2%程度、5年度以降は平均2.52%と高値となり、ハイリスク集団として、入院・入所中、有合併症者(脳卒中、糖尿病、パーキンソン病、骨折)、歩行不能者、高度視力障害者、寝たきり者、他人からの要介護者、用便・更衣・入浴・食事の要介護者であったと報告した。その他、スモンに関する種々の各調査研究課題が発表された。
結論
1. 9年度は8年度より99名多い1,141例の全国スモン患者(男:女=1:2.66、現在年齢ピーク男女とも60~80歳)の現状が患者会、県衛生部、医療システム委員の協力による検診で調査された。このうち、昭和63年以来の初検診例は7.6%、在宅検診15.4%、神経症状は65%に軽減化がみられるが、異常知覚は90%、運動障害は70%にみられ、白内障、高血圧、四肢関節疾患、脊椎疾患、消化器疾患等の合併症が高頻度にみられた。高齢に伴う痴呆、ノイローゼの高率化が新しい問題点になった。
2. 介護調査では、日常生活の全面介助の必要な者は比較的少なく、部分介助がほとんどである。全体の1~2%のみがホームヘルパーが介護者であり、ほぼ全面的に介護は家族によって担われていた。スモン患者の高齢化とともに家族の高齢化も進んでいた。スモン患者の多くが家族による介護の将来に不安を抱いている事が明らかになった。これらから、介護に関する公的・制度的保障の整備が切実に求められた。

公開日・更新日

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