文献情報
文献番号
201128047A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性特発性関節炎の遺伝的要因の実態
課題番号
H22-難治・一般-086
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松本 直通(横浜市立大学 医学研究科 環境分子医科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 横田 俊平(横浜市立大学 医学部 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis, JIA)は、16歳未満で発症する関節を主病変とする慢性炎症性疾患で、その原因は未解明である。その発症には自己免疫が関与し、小児膠原病としては頻度が高い。発症率は年間小児人口10万人に2-20人程度である。2008年に抗IL-6受容体抗体が、全身型JIAの症例に著効することが、研究分担者・横田らにより報告された(Lancet, 2008)。本研究班は、JIAの遺伝的な原因解明を行うことを目的とした。
研究方法
全身型JIA 50例を対象に高密度オリゴDNAアレーを用いた全ゲノムCNV解析を開始した。その過程でCASP10の13 Kbにわたる遺伝子内欠失を同定した。CASP10とその関連分子であるCASP8の全身型JIA症例50例における変異解析を行った。さらに新規責任遺伝子探索のため高密度マイクロアレーを用いた全ゲノムの染色体微細構造異常解析を行った。
結果と考察
CASP10及びCASP8の変異解析でCASP10の13 Kb欠失以外に病的な異常は同定できなかった。高密度アレー解析で1例において染色体19番上に両親には認めない約77 Kbと622 Kbの不連続なde novo重複を認めた。この域内には約30の遺伝子が存在し、免疫系に関与する興味深い遺伝子も多数包含され(NLRP遺伝子クラスター等)、HRM法を用いてこれらの遺伝子の変異解析を行った。NLRP2, PTPRH, PPP6R1, HSPBP1, SUV420H2, IL11, FIZ1, EPN1, NLRP9, 及び NLRP11を有力候補遺伝子として変異解析を行うも病的異常は同定できなかった。
結論
当初有力な候補遺伝子と想定されたCASP10の異常は最終的には解析した50例のうち1例にのみ認められる異常で全身型JIAを広く説明する責任遺伝子である可能性は低いと考えている。全ゲノムアレー解析を通して新たに77 Kbと622 Kbのde novo重複を同定しこの領域中に存在する10個の遺伝子を有力な候補遺伝子と考え解析を進めたが明らかな遺伝子変異は同定されず、全身型JIAの有力な候補遺伝子特定に至らなかった。
公開日・更新日
公開日
2013-03-10
更新日
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