文献情報
文献番号
201128042A
報告書区分
総括
研究課題名
細網異形成症の診断と治療に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-081
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 今井 耕輔(東京医科歯科大学 小児・周産期地域医療学講座)
- 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門・疾患再現研究分野)
- 森尾 友宏(東京医科歯科大学 発生発達病態学分野)
- 小原 收(財)かずさDNA研究所 ヒトゲノム研究部)
- 小島 勢二(名古屋大学 小児科)
- 山口 博樹(日本医科大学 第三内科血液内科)
- 塩谷 彰浩(防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
細網異形成症は骨髄系細胞、リンパ系細胞、内耳細胞など多系統の細胞分化障害を来す難病である。細網異形成症の診断法、スクリーニング法、至適造血幹細胞移植法の確立、iPS細胞を用いた病態解析と、遺伝子治療の基盤研究を行い、本疾患を根治し、患者に益することを目的とした。
研究方法
申請者が構築した先天性免疫不全症の中央診断・登録システムPIDJを応用して疫学調査を行った。本症の確定診断法確立を試みた。新生児スクリーニング法確立を試みた。患者造血幹細胞の分化障害をin vitroで解析した。AK2ノックアウトマウスを作製し解析した。患者由来iPS細胞を作製し各血液免疫系細胞の分化異常をin vitroで解析した。レトロウイルスベクターを用い、正常AK2遺伝子を患者由来iPS細胞に導入してヒト免疫系・血液系分化の正常化を検討し、遺伝子治療の基盤研究とした。造血幹細胞移植による治療成績調査を行い、治療ガイドライン作製を試みた。
結果と考察
AK2のWestern blot, DNA 解析などによる診断法を確立し、診断基準を作製した。PIDJによる疫学調査で新規患者を見出した。本症患が新生児乾燥濾紙中TREC測定でスクリーニング可能であることを示した。患者骨髄血コロニー解析を行い、骨髄系細胞の分化が障害されていること、単球系への分化は起きることを示した。AK2ノックアウトマウスを作製し、胎児造血障害を認めた。難聴モデルモルモットを作製し、内耳細胞のアポトーシス誘導へのAK2の関与を示した。患者由来iPS細胞を作製した。これを用い、血液免疫系細胞への分化実験を行い、AK2欠損によりもたらされる血球分化障害をin vitroで再現した。さらにiPS細胞を用いた遺伝子治療の基盤研究として、正常AK2を組み込んだレトロウイルスベクターを作製し、患者由来iPS細胞に導入し分化が正常化することを確認した。造血幹細胞移植成績調査を行い、前処置の軽減、非血縁臍帯血移植、感染症のコントロールにより成績が良くなることが判明した。これをもとに治療ガイドラインを作製した。患者会ホームページを開設し、説明会を行った。
結論
確定診断法を確立し診断指針を作製できた。また、PIDJ登録システムを用いて、新規患者を見いだすことが出来た。患者由来iPS細胞を樹立し、血液免疫系細胞の分化異常と、正常AK2遺伝子導入による分化の正常化を示すことが出来た。将来的なiPS細胞を用いた病態解析、遺伝子治療への応用の基礎的かつ重要なデータを示すことが出来た。また、患者の状況を把握し、これにより治療指針が作製できた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
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