文献情報
文献番号
201128041A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性活動性EBウイルス感染症の診断法及び治療法確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-080
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 成悦(独立行政法人国立成育医療研究センター 母児感染研究部)
研究分担者(所属機関)
- 森尾友宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
- 清水則夫(東京医科歯科大学難治疾患研究所ウイルス治療学)
- 新井文子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
- 木村宏(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 脇口宏(高知大学教育研究部医療学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性活動性EBウイルス(EBV)感染症(CAEBV)の治療実態の解明、患者とモデルマウスにおける詳細な病態解析、骨髄非破壊的造血幹細胞移植の臨床研究、発症要因における遺伝的素因の探索などを目的とした。
研究方法
治療実態解明は、約2,000の診療科に対するアンケート調査によった。患者における病態解析は、名古屋大学で診断されたCAEBVを含むEBV関連T/NKリンパ増殖性疾患患者108例について前方視的解析を行った。CAEBV及びEBV関連血球貪食性リンパ組織球(EBV-HLH)モデルマウスは、患者末梢血単核細胞をNOGマウスに移植して作成した。骨髄非破壊的造血幹細胞移植の効果検討は、東京医科歯科大学において移植を受けた7例を対象とした。遺伝的発症要因の解析は、エクソーム解析によった。
結果と考察
1. 近年のCAEBV治療について、造血幹細胞移植を受ける患者の増加、死亡率の減少、骨髄非破壊的移植の増加が示唆された。2. CAEBVでは主にCD4+T細胞或いはNK細胞、EBV-HLHでは主にCD8+T細胞、蚊刺過敏症では主にNK細胞、種痘様水疱症では主にγδT細胞に感染していることが示された。8歳以上の発症、肝障害が生命予後不良因子であり、移植を受けた患者は生命予後がよかった。移植時の年齢および疾病の活動性が低い患者の生存率が有意に高かった。3. EBV感染CD8+T細胞が全身で増殖し、高サイトカイン血症、出血病変などを呈するEBV-HLHモデルマウスが作成された。4. CAEBVに対する骨髄非破壊的造血幹細胞移植は、移植時の病態が非活動性であった症例で有効であった。5. 原発性免疫不全症に合併して発症したCAEBV患者1例から、有力な原因遺伝子候補が同定された。6. 一部のCAEBV患者において、単一のEBV感染細胞に由来するクローンでありながら、T細胞とNK細胞にまたがる幅広いフェノタイプを示す細胞が認められたことから、CAEBV患者ではT細胞とNK細胞が分化する以前の極めて未熟なリンパ球にEBVが感染する可能性が示された。7. EBV感染T及びNK細胞の生存と増殖に、TNF-αやIL-6などのサイトカインが重要な役割を果たすことが示された。
結論
CAEBVを含むEBV関連T/NKリンパ増殖性疾患では、EBV感染細胞のフェノタイプが病態と強く相関していた。また、発症時年齢などの予後因子が明らかになった。CAEBVに対する骨髄非破壊的造血幹細胞移植は、病勢が非活動性の時期に施行すると良い結果が得られた。TNF-αなど新規治療の標的となりうる分子が同定された。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
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