ミクリッツ病およびIgG4関連疾患の診断および治療方法の更なる推進に関する研究

文献情報

文献番号
201128040A
報告書区分
総括
研究課題名
ミクリッツ病およびIgG4関連疾患の診断および治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-079
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
苗代 康可(札幌医科大学 医療人育成センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋裕樹(札幌医科大学 医学部)
  • 山本元久(札幌医科大学 医学部)
  • 氷見徹夫(札幌医科大学 医学部)
  • 田村保明(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミクリッツ病や自己免疫性膵炎をはじめとしたIgG4関連疾患の病態を解明し、疾患概念を広め、効果的な診断・治療法を確立・普及する。
研究方法
過去に慢性顎下腺炎などの診断のもと摘出された腫瘍組織の染色からミクリッツ病の頻度を検討する。ミクリッツ病患者およびIgG4関連疾患患者の治療前後の血液から、治療前後で発現変化する標的分子を同定する。またリアルタイムPCR, ウエスタンブロッティング、プロテインアレイなどを行い再現性を確認し、病態形成へのかかわりを検討するとともに診断治療へのマーカーへの応用を行う。
結果と考察
われわれは、ミクリッツ病治療前後の血液を収集し、核酸の発現プロファイルをDNAアレイにより包括的に比較した。 DNAアレイ解析では治療後発現減少(1/2以下)する分子を検討した結果、検討したミクリッツ病3症例全てにおいて治療後発現減少する66分子を同定した。 また治療後増加(2倍以上)する分子についても、検討したミクリッツ病3症例全てにおいて治療後発現減少する43分子を同定した。発現変化の再現性を確認し、ミクリッツ病患者顎下腺組織内に特異的に発現する分子を同定した。またシェーグレン症候群患者組織中に特異的に発現する分子も同定しており、シェーグレン症候群とミクリッツ病の病態の違いを決定付ける分子として注目している。
結論
同定された分子にはアレルギー関連分子が多く含まれ、ミクリッツ病との病態解明への一助になると考えられ、診断マーカーとしての期待がもたれる。 またシェーグレン症候群およびミクリッツ病患者組織中に発現している分子の違いから両者病態の違いを明らかにするものと考えられ、両疾患が明らかに異なるものであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128040B
報告書区分
総合
研究課題名
ミクリッツ病およびIgG4関連疾患の診断および治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-079
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
苗代 康可(札幌医科大学 医療人育成センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋裕樹(札幌医科大学 医学部)
  • 山本元久(札幌医科大学 医学部)
  • 氷見徹夫(札幌医科大学 医学部)
  • 高野賢一(札幌医科大学 医学部)
  • 吉田英昭(札幌医科大学 医学部)
  • 田村保明(札幌医科大学 医学部)
  • 野島正寛(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミクリッツ病や自己免疫性膵炎をはじめとしたIgG4関連疾患の病態を解明し、疾患概念を広め、効果的な診断・治療法を確立・普及する。
研究方法
Ⅰ. DNAアレイ解析
ミクリッツ病患者、シェーグレン症候群患者および健常人ボランティアの血清と血球を対象とし、核酸、タンパク質の発現比較をDNAアレイにて包括的に行う。
Ⅱ. 全国疫学研究
IgG4関連ミクリッツ病に関し、行政施策など、さまざまな対策を行う場合、日本におけるミクリッツ病の実態を把握しておくことが重要と考えられ、ミクリッツ病に関する全国疫学調査を行う。
Ⅲ. 顎下腺摘出症例の切除標本の収集とIgG4陽性例検討
慢性顎下腺炎と診断された過去の顎下腺摘出例に関し、それらの中にはミクリッツ病であった可能性がある。これらの標本を用い、IgG4陽性例を検討することで、有病率を推定し、その後の病状変化をレトロスペクティブに検討する。
結果と考察
Ⅰ. DNAアレイ解析では治療後発現減少(1/2以下)する分子を検討した結果、検討したミクリッツ病3症例全てにおいて治療後発現減少する66分子を同定した。 また治療後増加(2倍以上)する分子についても、検討したミクリッツ病3症例全てにおいて治療後発現減少する43分子を同定した。発現変化の再現性を確認し、ミクリッツ病患者顎下腺組織内に特異的に発現する分子を同定した。またシェーグレン症候群患者組織中に特異的に発現する分子も同定しており、シェーグレン症候群とミクリッツ病の病態の違いを決定付ける分子として注目している。
Ⅱ. 全国の病院において診断がなされているミクリッツ病患者数は、441名であった。 二次調査より詳細な情報が得られた患者数は256名であった。一次調査の結果をもとに全国の患者数を推計すると1079人であり、潜在患者数は相当数いると推測され、疾患そのものに対する概念も含め普及させていく必要があると考えられる。
Ⅲ. 過去の顎下腺摘出症例の検討では100症例のうち6症例においてIgG4強陽性を認めミクリッツ病の概念が不足しているために適切な治療が施されなかったと考えられる症例が存在した。
結論
本研究により、ミクリッツ病とシェーグレン症候群における病態の違いを説明しうる分子を同定した。またミクリッツ病は認知の広がりとともに患者数は増加すると考えられる。ミクリッツ病患者は世界的に存在しており、日本同様シェーグレンと診断され適切な治療が施されていないことが予想され、今後も国際学会での報告や論文による国外への情報発信を積極的に行い、世界的に認知されるよう努力する必要があると考えられる。 

公開日・更新日

公開日
2013-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128040C

成果

専門的・学術的観点からの成果
われわれは従来シェーグレン症候群と診断されていた患者の中に涙腺・唾液腺の持続性腫脹を呈する一群を見出し、ミクリッツ病として報告した。シェーグレン症候群とミクリッツ病の病態の相違を分子生物学的に明らかにすることで改めて両者を区別する意義が明らかになった。
臨床的観点からの成果
ミクリッツ病の疾患概念を普及させてきた結果、全国的にミクリッツ病症例数が着実に増加してきている。さらに早期発見例および疑い例が、速やかに診察、診断されることで受診時における重症度も低下している。 このように、われわれの活動は確実に患者の保健・医療・福祉の向上に寄与し、無意味な外科手術や無用な薬物の投与の抑制により医療費を抑制していると考えられる。
ガイドライン等の開発
ミクリッツ病の診断は日本シェーグレン症候群学会のIgG4関連ミクリッツ病診断基準(2008年)の作成に関与するほか、札幌医科大学付属病院第一内科における治療指針の作成をおこなった。
その他行政的観点からの成果
IgG4関連疾患の疾患概念普及に伴い、国内外の監視が高まりその診断意義が高いことが改めて認知されてきており、医師国家試験にも出題されるようにもなってきている。早期発見、治療により無意味な外科手術や無用な薬物の投与の抑制により医療費を抑制していると考えられる。
その他のインパクト
各種教科書、医学書への掲載をおこなった。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山本 元久 , 高橋 裕樹 , 篠村 恭久
IgG4関連疾患の検査と診断 (IgG4関連疾患)
臨床検査 , 55 (8) , 741-747  (2011)
原著論文2
高橋 裕樹 , 山本 元久 , 苗代 康可
IgG4関連疾患
アレルギー , 60 (6) , 687-691  (2011)
原著論文3
山本 元久 , 高橋 裕樹
IgG4関連症候群 (特集 薫風吹く膠原病診療--臨床を駆ける進歩の風) -- (病態理解の進歩)
内科 , 107 (4) , 653-657  (2011)
原著論文4
amamoto M, Tabeya T, Naishiro Y, Yajima H et al.
Value of serum IgG4 in the diagnosis of IgG4-related disease and in differentiation from rheumatic diseases and other diseases.
Mod Rheumatol.  (2011)
原著論文5
Yamamoto M, Takahashi H, Tabeya T, Suzuki C, Naishiro Y et al.
Risk of malignancies in IgG4-related disease.
od Rheumatol.  (2011)
原著論文6
Yamamoto M, Takahashi H, Suzuki C, Naishiro Y et al.
Evaluation and Clinical Validity of a New Questionnaire for Mikulicz's Disease.
Int J Rheumatol.  (2012)
原著論文7
Yamamoto M, Takahashi H,Naishiro Y et al.
Relapse patterns in IgG4-related disease.
Ann Rheum Dis.  (2012)
原著論文8
amamoto M, Nishimoto N, Tabeya T, Naishiro Y et al.
Usefulness of measuring serum IgG4 level as diagnostic and treatment marker in IgG4-related disease.
Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi.  (2012)
原著論文9
Takahashi H, Yamamoto M, Tabeya T, Suzuki C, Naishiro Y, Shinomura Y, Imai K. et al.
he immunobiology and clinical characteristics of IgG4 related diseases.
J Autoimmun.  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128040Z