乳児ランゲルハンス細胞組織球症の標準治療の確立と新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201128033A
報告書区分
総括
研究課題名
乳児ランゲルハンス細胞組織球症の標準治療の確立と新規治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-072
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森本 哲(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児科))
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所 臨床研究センター)
  • 石井 榮一(愛媛大学 医学部小児医学)
  • 今村 俊彦(京都府立医科大学 医学部小児発達医学)
  • 塩田 曜子(国立成育医療センター 固形腫瘍科)
  • 福田 冬季子(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児科) )
  • 吉川 一郎(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児整形外科) )
  • 五味 玲(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児脳神経外科) )
  • 上出 利光(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
  • 工藤 寿子(静岡こども病院 血液腫瘍科)
  • 東條 有伸(東京大学 医科学研究所血液腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,304,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は主として乳児期に発症する病因不明の希少疾患である。予後不良で認知度の低いLCHの治療成績を向上させることを目的とする。
研究方法
①全国規模での症例登録、中央病理診断、患者検体保存システムの運用。②標準治療の確立のための調査と臨床試験計画書の作成。③病態解明による新規治療法の開発。④社会への啓発。⑤長期フォローアップ。⑥成人多病変型の実態解明と治療指針の提示。
結果と考察
①症例登録、中央病理診断、検体保管システムa)日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)の疫学研究の症例登録システムを利用し、小児LCHの登録を行った。b)登録例について、成育医療研究センターで中央病理診断、余剰検体の保存を開始した。②標準治療の確立のための調査と臨床試験計画書の作成a)JLSG-02の登録例の解析結果を学会発表した。b)「小児ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)に対するリスク別臨床研究計画書」(LCH-12)を完成させた。c)韓国との共同研究に着手した。③病態解明による新規治療法の開発a)オステオポンチン(OPN)が炎症性骨疾患に関連することを明らかにした。b)未熟樹状細胞から破骨細胞への分化にOPNが関与することを見出した。c)RAS経路のシグナル伝達分子SHP-1の活性化を見出した。④社会への啓発a)日本LCH研究会のホームページに医師向けの最新学術情報を掲載した。b)日本LCH研究会のメールアドレスを通じ患者からの受診相談に対応した。c)医師向けにLCHの教育講演を行った。d)LCH患者会でLCHについての解説、病状相談を行った。e)日本LCH研究会と共同でLCH学術集会を開催した。f)LCHの総説および教科書を執筆した。g)特異な経過をとった小児LCHの症例を報告した。⑤長期フォローアップa)長期フォローアップガイドラインを作成した。b)JLSG-96/02臨床研究に登録された小児LCH例の晩期障害の調査結果を学会発表した。c)最も頻度の高い不可逆的病変である中枢性尿崩症の調査結果を論文発表した。⑥多病変型成人LCHの実態解明と化学療法a)成人下垂体-視床下部LCHの調査結果を論文発表した。b)JLSG-02に登録された多病変型成人LCHの解析結果を学会発表した。
結論
症例登録・中央病理診断・検体保存のシステムの運用が開始され、新規治療ターゲットの候補がみつかり、標準的治療の基となる臨床研究計画が完成し、社会への啓発が進み、長期フォローアップが確立し、多病変型成人LCH治療への足がかりがつかめた。以上によりLCHの治療成績向上のための基礎が構築できた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128033B
報告書区分
総合
研究課題名
乳児ランゲルハンス細胞組織球症の標準治療の確立と新規治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-072
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森本 哲(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児科))
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター 臨床研究センター)
  • 石井 榮一(愛媛大学 医学部小児医学)
  • 今村 俊彦(京都府立医科大学 医学部小児発達医学)
  • 塩田 曜子(国立成育医療センター 固形腫瘍科)
  • 福田 冬季子(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児科) )
  • 吉川 一郎(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児整形外科) )
  • 五味 玲(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児脳神経外科) )
  • 上出 利光(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
  • 工藤 寿子(静岡こども病院 血液腫瘍科)
  • 東條 有伸(東京大学 医科学研究所血液腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は主として乳児期に発症する病因不明の希少疾患である。予後不良で認知度の低いLCHの治療成績向上を目的とする。
研究方法
①全国規模での症例登録、中央病理診断、患者検体保存システムの確立。②病型別の治療指針、標準治療の確立に向けた臨床試験計画書の作成。③新規治療開発を目指した病態解明。④ホームページなどによる社会への啓発。⑤長期フォローアップ基準の作成とそれに基づく長期経過観察。⑥成人多病変型の実態解明と治療指針の提示。
結果と考察
①日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)の疫学研究を用い、症例登録、中央病理診断、検体保存システムを確立し運用を開始した。日本の小児血液疾患を診療する施設のほとんどすべてがJPLSGに参加しており、正確に診断された小児LCHのほぼ全例が把握できると考えられる。②治療法や予後に関する後方視的な調査を基に、病型別の治療指針、頭蓋骨および椎体のLCHに対する診療ガイドラインおよび前方視的臨床研究計画書を作成した。これによって治療の均てん化と標準的治療の確立が期待される。また、韓国と統一した治療レジメンで臨床研究を将来行うことを目指し共同研究に着手した。③オステオポンチンが未熟樹状細胞から破骨細胞への分化に重要な役割を果たすこと、SHP-1の活性化が認められることを明らかにした。これらはLCHの治療ターゲットになる可能性がある。④ホームページや学術集会、患者会、教育講演、総説・教科書の執筆、特異な経過をとった症例の発表により啓発を行った。これによって、極端に不足しているLCHに関する正しい情報の提供ができた。⑤長期フォローアップガイドラインを作成した。JLSG-96/02登録例の追跡調査で、中枢性尿崩症に代表される不可逆的障害はLCH発症後年々増加することが判明した。長期経過観察の基礎ができ、その重要性がさらに明らかとなった。⑥成人の下垂体-視床下部LCHと多病変型LCHに対する治療結果を発表し、肺単独以外の成人例が小児例以上に「難病」であること、その治療法を提示した。
結論
①症例登録、中央診断、検体保存のシステムが確立され、②新規治療ターゲットの候補がみつかり、③適切な治療指針、標準的治療の基となる臨床研究計画が完成し、④啓発が進み、⑤長期フォローアップ基準が確立し、⑥多病変型成人LCH治療への足がかりがつかめた。以上によりLCHの治療成績向上のための基礎が構築できた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
破骨細胞活性化因子・炎症性サイトカイン/ケモカインが病態形成に深く関与すること、オステオポンチンが未熟樹状細胞から破骨細胞への分化に重要な役割を果たすこと、SHP-1の活性化が認められることを明らかにした。これらはLCHの治療ターゲットになる可能性がある。成果は国際組織球症学会で報告し、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)の疫学研究を用い、症例登録、中央病理診断、検体保存システムを構築し運用を開始した。日本の小児血液疾患を診療する施設のほとんどすべてがJPLSGに参加しており、小児LCHのほぼ全例が把握できると考えられる。治療法や予後に関する後方視的な調査を基に、前方視的臨床研究計画書(LCH-12)を作成した。これによって標準的治療の確立が期待される。韓国と統一した治療レジメンによって、将来、臨床研究を行うことを目指し共同研究に着手した。
ガイドライン等の開発
「乳児LCH病理診断ガイドライン」、「乳児LCH治療ガイドライン」、「頭蓋骨LCH診療ガイドライン」、「椎体LCH診療ガイドライン」、「乳児LCH長期フォローアップガイドライン」、「中枢神経変性LCHフォローアップガイドライン」を作成した。
その他行政的観点からの成果
JLSG-96/02登録例の追跡調査で、中枢性尿崩症に代表される不可逆的障害はLCH発症後年々増加することが判明した。長期経過観察の重要性をさらに明らかにした。成人の下垂体-視床下部LCHと多病変型LCHに対する治療結果を発表し、肺単独以外の成人例が小児例以上に「難病」であること、その治療法の確立が重要性であることを提示した。
その他のインパクト
日本LCH研究会を支援し、LCH学術集会を開催し、LCHの症例検討、教育講演を行った。LCH患者会を支援し、LCH全国患者会を開催し、LCHについての解説、病状相談を行った。ホームページによる文献紹介や総説・教科書の執筆、特異な経過をとった症例の発表により、極端に不足しているLCHに関する正しい情報の提供をおこなった。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
第33回日本LCH研究会学術集会、第5回LCH全国患者会、第6回LCH全国患者会、日本LCH研究会ホームページ(http://www.jlsg.jp/)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kudo K, Ohga S, Morimoto A, et al.
Improved outcome of refractory Langerhans cell histiocytosis in children with hematopoietic stem cell transplantation in Japan.
Bone Marrow Transplantation , 45 (5) , 901-906  (2010)
原著論文2
Imamura T, Sato T, Shiota Y, et al.
Outcome of pediatric patients with Langerhans cell histiocytosis treated with 2 chlorodeoxyadenosine: a nationwide survey in Japan.
International Journal of Hematology , 91 (4) , 646-651  (2010)
原著論文3
Morimoto A, Shioda Y, Imamura T, et al.
Nationwide survey of bisphosphonate therapy for children with reactivated Langerhans cell histiocytosis in Japan.
Pediatric Blood and Cancer , 56 (1) , 110-115  (2011)
原著論文4
Shioda Y, Adachi S, Imashuku S, et al.
Analysis of 43 cases of Langerhans cell histiocytosis (LCH)-induced central diabetes insipidus registered in the JLSG-96 and JLSG-02 studies in Japan.
International Journal of Hematology , 94 (6) , 545-551  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128033Z