血球貪食症候群の病態・診療研究

文献情報

文献番号
201128032A
報告書区分
総括
研究課題名
血球貪食症候群の病態・診療研究
課題番号
H22-難治・一般-071
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安友 康二(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 榮一(愛媛大学 医学部)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター)
  • 安川 正貴(愛媛大学 医学部)
  • 河 敬世(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 金兼 弘和(富山大学 医学部)
  • 大賀 正一(九州大学 病院)
  • 湯尾 明(国立国際医療センター)
  • 北村 明子(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血球貪食症候群(HPS)は原発性と二次性に大別され、多様な原因によって発症する疾患群である。本研究班では、HPSの病態を解明し、新たな診断方法および治療法を開発するために基盤を形成することを目指す。さらに、従来行われてきたHPSの診断と治療法について、データ解析を実施することで修正が必要とされるポイントを抽出することを目標とする。さらに、HPS症例、特に家族性症例のサンプルを集約化して保存する体制を整えることも目的とした。具体的には、以下の研究項目についての研究を実施した。
(1) FHLの原因遺伝子について、近親婚家系を用いて同定する。
(2) 従来実施されてきたFHLの治療法についての修正ポイントを抽出する。
(3) HPSのより正確な診断方法を整える。
(4) HPSのサンプルを保存する体制を構築する。
研究方法
(1) 近親婚家系のFHL症例についてエクソーム解析を実施する。
(2) FHLの治療法と予後についての検討を行う。
(3) FHLサンプルの保管体制を実施するための体制を構築する。
(4) 血球貪食症候群の診断方法について検討する。
結果と考察
(1) 近親婚家系のFHL症例を用いてエクソーム解析を実施し、候補遺伝子の同定に成功した。
(2) 日本では FHL に対してその80%の症例が非血縁臍帯血移植が行われ、骨髄非破壊的前処置の使用により安全に移植が行われていることがあきらかになった。また移植による予後は60%以上であった。
(3) CTLの細胞傷害活性低下の程度は、FHLのサブタイプによって異なることが明らかとなった。
(4) 国立成育医療センターにFHLサンプルの保管体制を構築した。
結論
(1) FHLの新たな候補遺伝子を同定することに成功した。
(2) 非血縁臍帯血移植はFLU+MELによる骨髄非破壊的前処置を用いた成功例が増加してきた。
(3) CTL細胞傷害活性の程度はFHLのサブタイプで異なることが明らかになった。
(4) 継続的なFHLのサンプル保管体制が構築できた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128032B
報告書区分
総合
研究課題名
血球貪食症候群の病態・診療研究
課題番号
H22-難治・一般-071
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安友 康二(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 榮一(愛媛大学 医学部)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター)
  • 安川 正貴(愛媛大学 医学部)
  • 河 敬世(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 金兼 弘和(富山大学医学部)
  • 大賀 正一(九州大学 病院)
  • 湯尾 明(国立国際医療センター)
  • 北村 明子(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血球貪食症候群(HPS)は多様な原因によって発症する疾患群であり、原発性と続発性に大別される。本研究班では、HPSの発症数および診断・治療の実態を解明するとともに、FHLの原因遺伝子を同定することによってHPSの病態を解明し、新たな診断方法および治療法を開発するために基盤を形成することを目指す。さらに、HPS症例、特に家族性症例のサンプルを集約化して保存する体制を整えることも目的とした。具体的には、以下の研究項目についての研究を実施した。
(1) FHLの原因遺伝子を、エクソーム解析法を用いて同定する。
(2) 従来実施されてきたFHLの治療法についての修正ポイントを抽出する。
(3) HPSのより正確な診断方法を解析する。
(4) それ以外の、HPS診療における問題点を抽出する。
(5) HPSのサンプルを保存する体制を構築する。
研究方法
(1) 近親婚家系のFHL症例について連鎖解析・エクソーム解析を実施する。
(2) FHLの治療法と予後についての検討を行う。
(3) 血球貪食症候群の診断方法について検討する。
(4) FHLサンプルの保管体制を構築する。
結果と考察
(1) 近親婚家系のFHL症例を用いて連鎖解析・エクソーム解析を実施し、候補遺伝子の同定に成功した。
(2) 日本では FHL に対して非血縁臍帯血移植が行われ、骨髄非破壊的前処置の使用により安全に移植が行われていることがあきらかになった。また移植による予後は60%以上であった。
(3) CTLの細胞傷害活性低下の程度は、FHLのサブタイプによって異なることが明らかとなった。
(4) JPLSGとの連携構築にあたって、これまで用いられてきたJPSLGの診断フローチャートを改訂した。診断フローチャートについては、本研究班で独自に開設したホームページ(http://hlh-fhl.basic.med.tokushima-u.ac.jp/index.html)に掲載し誰でもがアクセスできる環境を構築した。
(5) 国立成育医療センターにFHLサンプルの保管体制を構築した。
結論
新しいFHLの原因遺伝子の同定に成功したことから、今後HPSのこれまで知られていなかった病態解明と、新しい視点からの治療法の開発が期待できる。FHLのサンプル保管体制が構築できたことから、今後の症例の蓄積によってHPSの診断および治療法の検討が可能になると思われる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では、家族性血球貪食症候群(FHL)の原因遺伝子の同定を目指した研究を実施し、近親婚家系を用いた解析により、候補遺伝子の同定に成功した。本結果は、血球貪食症候群の発症機構の解明と同時に、新たな治療法の開発にも寄与する重要な発見であると思われる。また、研究期間中に海外のグループから報告されたFHL5について、日本人FHL5の遺伝子変異検索を実施し、これまで原因不明であった症例について確定診断をつけることができた。
臨床的観点からの成果
FHLでは、早期の幹細胞移植が必要とされるが、Flu+Melのみでは移植後に生着不全の可能性が高いため、前処置には適切な強度が必要であるという知見が得られた。また、日本では骨髄非破壊的前処置が1/4と臍帯血移植が約半分に行われていたが、骨髄非破壊的前処置後臍帯血移植例は少なく臍帯血移植の時期と方法についてはさらに検討が必要であるとの地券も得られた。
ガイドライン等の開発
初年度には、HPSの実態を把握する目的でJPLSGとの連携体制を構築して、HPSの実態を把握することにつとめ、各診断項目の見直しを実施した。JPLSGとの連携構築と各項目の検討によって、これまで用いられてきたJPSLGの診断フローチャートを改訂した。診断フローチャートについては、本研究班で独自に開設したホームページ(http://hlh-fhl.basic.med.tokushima-u.ac.jp/index.html)に掲載し誰でもがアクセスできる環境を構築した。
その他行政的観点からの成果
これまで、FHLサンプルはいくつかの施設に散在して保管されており、その保管・管理体制の集約が望まれていた。本班では、JPLSGへの症例登録と連携して、FHLのゲノムサンプルを保存する体制を国立成育医療センターに構築した。そこで継続的にサンプルを集積し保管することによって、貴重なFHLサンプルが集約的に保管されることになり、今後のHPS研究および診療の発展に大きく役立つと思われる。
その他のインパクト
これまでHPSの研究については、本班のように基礎研究者と臨床研究者が共同でその病態と診療についての研究に取り組んだことはなかった。本研究班によって、両者が相互作用することにより新しい研究の方向性が生まれた例もあり、また共同研究が実施された例もある。2年間の限られた期間の組織であったが、将来のHPS研究に向けて重要な研究組織として機能したと思われる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
48件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishi M, Nishimura R, Suzuki N 他
Reduced-intensity conditioning in unrelated donor cord blood transplantation for familial hemophagocytic lymphohistiocytosis.
Am J Hematol , 87 (6) , 637-639  (2012)
原著論文2
Kudo K, Ohga S, Morimoto A,他
Improved outcome of refractory Langerhans cell histiocytosis in children with hematopoietic stem cell transplantation in Japan
Bone Marrow Transplant , 45 (5) , 901-906  (2010)
原著論文3
Shiraishi A, Ohga S, Doi T 他
Treatment choice of immunotherapy or further chemotherapy for Epstein-Barr virus-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis
Pediatr Blood Cancer (in press)  (2011)
原著論文4
Kanegane H, Yang X, Zhao M 他
Clinical features and outcome of X-linked lymphoproliferative syndrome type 1 (SAP deficiency) in Japan identified by the combination of flow cytometric assay and genetic analysis
Pediatr Allergy Immunol  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128032Z