慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究

文献情報

文献番号
201128028A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
課題番号
H22-難治・一般-067
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中島 淳(横浜市立大学 附属病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 本郷道夫(東北大学・ 消化器内科、総合医療学 )
  • 藤本一眞(佐賀大学 ・消化器内科 )
  • 大和 滋(国立精神・神経医療研究センター・消化器内科)
  • 正木忠彦(杏林大学・消化器外科)
  • 松橋信行(NTT東日本関東病院・消化器内科)
  • 佐藤 元(国立保健医療科学院政策技術評価研究部)
  • 稲森正彦(横浜市立大学 ・消化器内科 )
  • 杉原健一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・腫瘍外科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性の経過で機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腸管蠕動運動の低下による腸内容輸送の障害で腸閉塞症状を引き起こす慢性偽性腸閉塞症は、これまで患者の希少性から系統的調査研究がされておらず医師における認知が低く、診断・治療も何が適切なのかが調査検討されてこなかった。また、その病態については未解明の部分が多く、明確な診断基準や治療法も定まっていない。本邦初の本研究班では当該疾患の我が国における疫学実態の解明、診断率向上を目指して診断基準作成、適切な外科、内科治療法を明らかにすること、病理学的な異常の解明などを目的として研究を行った。
研究方法
1.疫学調査:疫学的手法により国内の患者数等の疫学数値の推定を行った。2.診断基準の改定:平成22年度診断基準案の国内、海外専門家からの批判を受け、改訂をした。3.病理解析:免疫染色によってmyopathy, neuropathy, mesenchymopathyの別の鑑別をどう行うかを検討した。4.新しい診断モダリティーの開発:我が国で普及しているMRIを用いた小腸運動異常の検査方法の開発を行った。5.ガイドラインの作成:診療ガイドの刊行した。6.小児との連携:小児ヒルシュスプリング類縁疾患調査研究班と連携を行った。7.研究成果の発信:ホームページの充実を行った。
結果と考察
1.疫学調査:推計される年間受療患者数は1142人。2.診断基準の改定:平成22年度診断基準案に、我々の研究班で新しく小腸の運動異常を解析できる方法としてMRIを診断基準に盛り込んだ。3.病理解析:まずHuC/D抗体染色でNeuropathyを診断し、ここで異常なければ次はCD117染色でMesenchymopathyを診断、残りをHE染色を用いてMyopathyであることの確認する。4.新しい診断モダリティーの開発:我が国で普及しているMRIを用いた小腸運動異常の検査方法の開発を行った。5.ガイドラインの作成:診療ガイドの刊行を行った。6.小児との連携:小児ヒルシュスプリング類縁疾患調査研究班と連携を行った。7.研究成果の発信:ホームページの充実を行った。
結論
慢性偽性腸閉塞症の年間受療患者数は、クローン病(2006年の特定疾患医療受給者証の交付件数では約25700人)に比較すると少ないが、PSC(2007年の疫学調査で約1200人)と同等であり、決して稀な疾患ではないと言える。2009年に行った消化器内科・外科系施設へのアンケートでも認知度が低く、症状がありながら診断確定に至っていない症例が相当数いると推定される。更なる疾患概念の啓蒙が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201128028B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
課題番号
H22-難治・一般-067
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中島 淳(横浜市立大学 附属病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 本郷道夫(東北大学・ 消化器内科、総合医療学 )
  • 藤本一眞(佐賀大学 ・消化器内科 )
  • 大和 滋(国立精神・神経医療研究センター・消化器内科)
  • 正木忠彦(杏林大学・消化器外科)
  • 松橋信行(NTT東日本関東病院・消化器内科)
  • 佐藤 元(国立保健医療科学院政策技術評価研究部)
  • 稲森正彦(横浜市立大学 ・消化器内科 )
  • 杉原健一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・腫瘍外科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性特発性偽性腸閉塞症は現在では慢性偽性腸閉塞症と呼び原発性と続発性に分類される。本疾患はその希少性ゆえに病名の認知がないことや消化器専門医であってもどのように診断・治療をしていいのかがわからないのが我が国における現状であった。本研究班ではこのような希少性難治性疾患に起因する問題点を解決することを目的として調査研究を行い、当該疾患の診療レベルの向上を目指した研究を行った。
研究方法
調査研究は3年間に以下の手順で進めた。
1.国内外の成書による疾患の情報収集
2.国内の当該疾患の症例報告を収集して本邦における疾患像や問題点、臨床増の把握を行った
3.国内の消化器内科、消化器外科専門医への郵送による診療の現状の調査を行った。
4.当該疾患の手術症例の治療上の問題点を調査した。
5.診断基準の作成
6.疫学的手法による国内の患者数の把握
7.研究班による国内の手術検体の収集と病理解析
8.新しい診断モダリティーの開発
9.治療法のアルゴリズムの検討
10.診療ガイドラインの作成
結果と考察
慢性特発性偽性腸閉塞症は希少疾患ゆえに研究者も少なくその実態はおろか、病態、診断治療に関してはどのようにすべきかが全く明らかにされてこなかった。また欧米では当該疾患の診断にマノメトリーなど本邦で実施可能な施設がきわめて限られる検査方法が用いられている点も本疾患の確定診断に難渋する問題点であった。今回の研究では、疫学、診断基準作成と改定、非侵襲的新規診断方法の開発、外科治療の成績調査による外科治療指針作成、病理診断の指針作成、ホームページによる成果の国民への発信、診療のガイドラインの作成を通して3年間という短い期間であったが非常に大きな成果を上げることができた。
結論
本研究により慢性特発性偽性腸閉塞症のわが国における疫学の調査、診断基準の作成と疾病の認知向上、治療法のコンセンサス、新規診断方法の開発などを行う大きな成果を上げることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
3年間という短い期間で、疫学、診療の実態調査、診断基準の作成と改定、外科治療の有効性と望ましい在り方に関しての調査報告、病理解析、新しい診断モダリティーの開発ができ、少ないながらも海外に論文として発信をすることができた。
臨床的観点からの成果
1.診療のガイドラインおよび手引きの作成を行った。2.厳密な国内の疫学調査を完了して推定患者数等のわが国初の成果を得られた。3.診断基準を英文論文で発進した。4.新しい診断モダリティーとしてMRIを用いた小腸運動異常の診断方法の開発を行った。4.国内より取集した病理検体の検討を行い病理診断の指針を作成した。5.外科治療の成績で、我が国の検討でも小腸が罹患されている場合は腸管切除は効果がないことを論文にて発信した。
ガイドライン等の開発
「慢性偽性腸閉塞症のガイド」を平成24年3月1日発刊した。慢性特発性偽性腸閉塞症に関する書籍の数は多くはなく、また、日常臨床ですぐに役立つものは少ない。そうした状況を踏まえ、第一線の臨床医の先生方が、日常診療で慢性特発性偽性腸閉塞症に遭遇されたときに、身近において活用していただけるものとして、今回の手引きを作成した。
その他行政的観点からの成果
慢性特発性偽性腸閉塞症は食道から直腸までの全消化管を罹患対象とし時間的空間的にその罹患部位を変化させながら罹患腸管において蠕動能の著明な低下をきたし、器質的閉塞がないのに機械的腸閉塞様症状を呈する慢性の疾患である。希少疾患ゆえに系統的調査研究が本邦では全くなされていなかった。今回、研究を行ったことで実態が明らかになってきたため、今後は、患者会の発足や特定疾患への認定などの行政施策に影響を与えると考えられる。
その他のインパクト
ホームページを用いたCIP疾患概念の医師・研究者および一般市民への普及活動と、それに対する他医療施設からの紹介、患者自身の直接来院が多数あった。当該疾患の潜在的な患者の掘り起しと早期介入のためにも、実地臨床に当たる医師への疾患概念普及と一般市民への啓蒙活動の継続が必要である。今後も引き続き、改良の上で医師、一般市民,患者への情報発信を行う。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
18件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tadahiko Masaki, Kenichi Sugihara, Atsuhi Nakajima et al.
Nationwide survey on adult type chronic intestinal pseudo-obstruction in surgical institutions in Japan
Surg Today , 42 (3) , 264-271  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128028Z