新生児・乳児胆汁うっ滞症候群の総括的な診断・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201128025A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児・乳児胆汁うっ滞症候群の総括的な診断・治療に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-064
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松井 陽(国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 工藤 豊一郎(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療研究センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新版便色カードを用いたBA(以下、BA)のスクリーニングシステムを開発し、同時にその他の新生児・乳児うっ滞症候群について記述疫学研究を行い、診断・管理指針を作成する一助にする。
研究方法
1)宮城、神奈川両県で、新版便色カード(第2版)を母子手帳に挟みこんで配布し、BAに特徴的な淡黄色便(1,2,3、4番)の児を検出するスクリーニングするシステムを実施して、その効果を評価する。
2)厚生労働省科学研究小児慢性特定疾患治療研究事業の年次報告書・集計データ、日本肝移植研究会登録症例、日本臓器移植ネットワー(JOTNW)のウエブサイトから、BA以外の新生児・乳児胆汁うっ滞症候群症例についての情報を入手して検討する。
結果と考察
1)宮城県は東日本大震災の影響で便色カードの配布が遅れたため、現在までに宮城県でカードの配布を受けた児の中からはBAの患児は出ていない。神奈川県では1名の患児が生後1か月以内に発見されて、葛西手術を受けた。
①行政の理解および協力体制整備、②BAという病気の重篤さ・早期発見の重要性についての保護者の理解、③BAに遭遇したことがない大多数の医師への医療情報の提供、④産科と小児科・小児外科の連携強化、⑤地域内の基幹病院や三次医療機関の連携強化、⑥行政と医療の連携強化が必須課題であることが明らかとなった。
2)0歳未満のレシピエントに対する臓器提供が2012年2月までに22例と急増していた。18歳未満に対する死体肝移植、初回移植は10例あり、うち8例がBA、1例が原発性硬化性胆管炎、1例が急性肝不全例であった。
結論
本年度、新版便色カードを用いたBA早期発見のためのスクリーニングシステムを、神奈川県の他に宮城県に新規導入し、パイロット・スタディを開始した。この間に明らかになった問題点を急遽、整理して平成24年度から開始された全国的規模のスクリーニングシステムの確立、BA以外の新生児・乳児胆汁うっ滞症候群の診断・管理指針の策定に努める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128025B
報告書区分
総合
研究課題名
新生児・乳児胆汁うっ滞症候群の総括的な診断・治療に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-064
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松井 陽(国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 工藤 豊一郎(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療研究センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新版便色カードを用いた胆道閉鎖症(以下、BA)のスクリーニングシステムを開発し、同時にBAおよびその他の新生児・乳児うっ滞症候群について記述疫学研究を行い、診断・管理指針を作成する一助にする。
研究方法
1)宮城・神奈川両県において、便色カードを利用したBAのマス・スクリーニングの効果の検証調査を実施した。
2)厚生労働省科学研究小児慢性特定疾患治療研究事業の年次報告書・集計データ、日本肝移植研究会登録症例、日本臓器移植ネットワー(JOTNW)のウエブサイトから、BA及びその他の児・乳児胆汁うっ滞症候群症例についての情報を入手して検討した。
結果と考察
1)宮城県は東日本大震災の影響で便色カードの配布が遅れたため、カード配布を受けた児の中からはBAの患児は出ていない。神奈川県ではパイロット事業期間中に参加地域で本症と診断された児は3名で、参加者は2名、非参加者は1名であった。参加者2名の診断時日齢は平均40.5日、手術時日齢は平均49.5日と早期診断・治療が可能であった。
厚生労働省は平成24年度から私どもの開発した便色カードを、母子手帳の19頁に掲載することを各市区町村に義務付けた。全国的規模でこのスクリーニングを行うための変更点は以下の通りである。便色番号が1番から3番のどれかである場合、軽度でも黄疸があれば、1日も早く小児外科医または小児科医を受診とした。また便色番号が4番の場合、経過観察中に4番から3番に近づく時に小児外科医または小児科専門医受診とした。
2)0歳未満のレシピエントに対する臓器提供が2012年2月までに22例、2009年までに12例行われて、2011年に臓器提供は急増していた。また、22例のうち11例は分割肝を提供されていた。肝移植研究会によれば2009年までに18歳未満に対する死体肝移植、初回移植は10例あり、うち8例がBA、1例が原発性硬化性胆管炎、1例が急性肝不全例であった。成人を含めたBAの死体肝移植後の生存率は1年、3年、5年、10年とも91.7%であった。
結論
新版便色カードを用いたBA早期発見のためのスクリーニングシステムを、神奈川県の他に宮城県に新規導入し、パイロット・スタディを開始した。その問題点を整理して24年度から開始された全国的規模のスクリーニングシステムの確立、類似疾患の診断・管理指針の策定に努める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
胆道閉鎖症の患児を早期発見し、その生体試料を入手することにより、疾患の本態である胆道系の硬化性胆管炎の成因を明らかにする可能性の拡大が期待される。
臨床的観点からの成果
小児難治性肝胆道疾患である胆道閉鎖症の早期発見・早期治療の実現に効果が期待される便色カードを用いたマス・スクリーニング・システムを開発し、全国的規模での施行に結びつけた。
ガイドライン等の開発
「胆道閉鎖症早期発見のための便色カードマニュアル」平成23年度厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業 小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究(研究代表者 松井 陽)
その他行政的観点からの成果
厚生労働省は平成24年度から、コンピューター制御による印刷技術を用いて私どもが独自に開発した、胆道閉鎖症早期発見のための便色カードを、全ての母子健康手帳の法令部分に綴じこむことを各市区町村に義務付けた。母子健康手帳は全ての出生児に交付されるので、このことは世界で3番目に全国的規模で胆道閉鎖症のマス・スクリーニングが開始されたことになる。今後はスクリーニングの効果を感度、特異度、陽性適中率、早期手術率、黄疸消失率などから評価する。
その他のインパクト
記事掲載:「第39回日本マス・スクリーニング学会学術集会報告」特殊ミルク情報2012,48:74-5、「胆道閉鎖症と便色カード」月刊母子保健2012,636(4):p8-9、胆道閉鎖症の発見へ母子手帳にとじ込み~便カラーカード~公明新聞 2012年12月18日号P4、母子手帳に便色カード Kyodo Weekly No.26 2012年6月26日号、その他に中国新聞など17紙。市民公開講座「新生児マス・スクリーニングをもっと知ろう」2012年8月25日東京
 

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
全ての母子健康手帳に便色カード掲載(厚生労働省令による)
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128025Z