重症度別治療指針作成に資すHAMの新規バイオマーカー同定と病因細胞を標的とする新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201128022A
報告書区分
総括
研究課題名
重症度別治療指針作成に資すHAMの新規バイオマーカー同定と病因細胞を標的とする新規治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
出雲 周二(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 龍文(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 植田 幸嗣(独立行政法人理化学研究所 バイオマーカー探索・開発チーム)
  • 中川 正法(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 原  英夫(佐賀大学 医学部)
  • 久保田龍二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 高嶋  博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 星野 洪郎(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 齊藤 峰輝(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 竹之内徳博(関西医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
48,627,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAMはHTLV-1感染者の一部に発症する稀な難治性疾患で、希少性ゆえに病態研究、治療薬開発不十分で、患者の機能予後は極めて不良であり、重症度に応じた治療指針の作成や根本的治療法の開発研究が急務である。本研究では、HAMの主な発症リスクである生体内での感染拡大の機序や発症病態の解明、オミックス解析による新規治療標的分子探査、臨床的研究として、HAM患者情報のデータベースを構築し、疾患活動性評価や予後予測、治療効果判定に有用なバイオマーカーを検索し、「早期診断、疾患活動性・重症度別治療指針」の作成、新規治療法の有効性検討、診療実態調査を目的としている。
研究方法
九州地区と関東関西の大都市圏で専門外来を持つ各診療施設と、HAMの臨床病態の研究に実績を有する研究者、プロテオミクスによるバイオマーカー探索の実績を有する研究チーム、難病疫学研究者により研究組織を構成した。HAM診療に実績を有する全国の専門診療施設の各々の情報を共有できるデータベースを作成し研究基盤を確立し、臨床研究を進めた。
結果と考察
本年度の研究成果として、マイクロアレーデータのパスウェイ解析により、アポトーシスに関連するシグナル伝達遺伝子X、HTLV-1マイナス鎖にコードされるHBZやgp46-197など、複数の治療標的分子の候補が見いだされた。さらに、髄液のプロテオームプロファイリングより、重症度を反映するバイオマーカー候補として86ペプチドが同定された。病態解析からは患者CD4+T細胞でTCRシグナルが低下し、広範な免疫不全状態が生じていること、発症していないキャリア脊髄でもHTLV-1を標的とする細胞性免疫応答が生じていることが示された。臨床的にはデータベースを活用して疾患活動性マーカーや治療実績の再評価がすすめられ、今後、「早期診断、疾患活動性・重症度別治療指針」の作成をすすめる。感染拡大を標的とした新規治療薬候補として、イカ軟骨由来のコンドロチン硫酸プロテオグリカンが見出された。プロスルチアミンは経口剤での医師主導の臨床試験が開始され、その有用性が確認された。診療実態調査からは、大都市圏でのHAM患者増加傾向、高齢での診断例の増加、新規発症患者が毎年30名前後あり、減少傾向は無いことが明らかにされた。
結論
HAM患者の病態に関与し、治療の標的となる複数の分子が同定された。疾患活動性のマーカーに関する新知見を分析して、エビデンスに基づいた「重症度別治療指針」を作成し公開する。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128022Z