ゲノム解析による原発性アルドステロン症の原因診断学の再構築

文献情報

文献番号
201128017A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム解析による原発性アルドステロン症の原因診断学の再構築
課題番号
H22-難治・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 均(京都大学 薬学研究科医薬創成情報科学講座システムバイオロジー分野)
研究分担者(所属機関)
  • 笹野 公伸(東北大学 医学系研究科)
  • 河野 雄平(国立循環器病研究センター)
  • 神出 計(大阪大学 医学系研究科)
  • 江本 憲昭(神戸薬科大学 薬学部)
  • 成瀬 光栄(国立病院機構・京都医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
26,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原発性アルドステロン症(PA)は難治性高血圧の代表的な疾患の一つであるが、その診断には難渋することが多い。本研究は、煩雑で難しい原因不明なPAのゲノム・分子診断法が確立し、内分泌学的なスクリーニング、画像診断、副腎静脈血採血等の医療コストの大幅な軽減と確定診断率の向上を目指すものである。中心となるのは、我々の発見した、ヒト及びマウスでアルドステロン産生細胞に特異的に発現する新しいタイプの 3betaHSD(Nature Med, 2010)である。またゲノム診断を補足するために、キーエンザイムであるヒト新型3betaHSD(HSD3B1)の蛋白質情報を利用した新しい診断法を模索する。
研究方法
 ゲノム解析対象としての血液・組織サンプル収集は、各研究機関での倫理委員会の承認を済ませ解析中である。また、副腎腺腫摘出術を今年施行した例については手術時副腎組織サンプルも得た。昨年以前に手術を行った症例は病理に保存してある標本から未染色標本を病理で解析用に作成した。
結果と考察
 血液サンプルよりゲノム解析にて、前年のゲノム解析のデータを補完でき、今後のゲノム解析が期待された。原発性アルドステロン症の血圧日内変動に関する56例での検討では、46名(82%)がnon-dipperで、日中の平均血圧は145.8±15.8/ 87.0±11.4 mmHg、夜間血圧は140.2±19.4/ 82.2±13.3 mmHgであった。3betaHSDアイソザイムに対する高親和性抗体の作成実験においては、昨年にHSD3B1特異的なモノクローナル抗体が採取されたのに続き、我々が今回作出したモノクローナル抗体(12E4)はHSD3B2を特異的に認識する抗体であることが分かった。
結論
 新たに収集した多数のPA患者の血清を用いた、HSD3B1遺伝子のDNAシークエンスの多型解析の進展が期待される。PAの血圧日内変動に関する検討では、夜間降圧の減弱している頻度が多いことを明らかにした。遺伝素因の解明についての検討は進行中であるが、今後、同疾患の遺伝素因の関与を明らかにし、遺伝子解析を導入することでより正確で簡便な診断方法の確立を目指したい。さらに新たな特異抗体によるHSD3Bのサブタイプ特異的抗体による、PAの腫瘍性(APA)と特発性(IHA)というPAの二大病型への鑑別診断への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128017Z