筋萎縮性側索硬化症の分子病態解明と新規治療法創出に関する研究

文献情報

文献番号
201128016A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の分子病態解明と新規治療法創出に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 成人(財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能分野)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 治彦(財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能分野 認知症プロジェクト)
  • 野中 隆(財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能分野 病態細胞生物研究室)
  • 新井 哲明(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻 精神病態医学)
  • 亀谷 富由樹(財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能分野 病態細胞生物研究室)
  • 細川 雅人(財団法人東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能分野 認知症プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ALS患者剖検脳脊髄に蓄積するTDP-43の解析を基に病態を再現する試験管内、細胞、動物モデルを構築し、ALSの分子病態を解明し、異常TDP-43を標的とする新たな治療法を創出することを目的とする。
研究方法
患者脳の解析はFTLD-TDPの剖検脳または脊髄よりサルコシル不溶性画分を調製し、イムノブロットにより解析した。細胞モデルは全長TDP-43のプラスミドを一過性に発現したSH-SY5Y細胞にALS患者脳より調製した不溶性画分を導入し、抗リン酸化TDP-43抗体を用いて解析した。マウスモデルはGRN-KOマウスとTDP-43 (G298S) Tgとの交配を行いその解析をした。
結果と考察
患者剖検脳の全例に異常リン酸化された全長および断片化TDP-43が検出され、C末断片のバンドパターンは神経病理学的分類に一致した。一人の患者については脳のいずれの部位でもそのパターンは同じであった。患者脳不溶性画分を細胞に導入することにより、プラスミド由来の全長TDP-43がリン酸化を受けて細胞内で凝集した。細胞にはC末端断片が蓄積し、そのバンドパターンはALSと類似し、凝集体形成細胞において細胞死が認められた。PGRNノックアウトマウス(12、24ヶ月齢)の大脳、脳幹、脊髄にTDP-43陽性構造は認められなかったが、p62陽性の顆粒状構造が視床に認められた。脊髄においても、24ヶ月齢のKOにのみ神経細胞内にp62陽性のskein様構造が認められた。TDP-43 (G298S)/PGRN+/-マウスにおいてサルコシル不溶性画分のTDP-43の増加が期待されたが変化はみられなかった。
結論
TDP-43のC末端バンドパターンは神経病理学的分類に一致して異なるバンドパターンを示した。トリプシン、キモトリプシン耐性バンドの解析から、C末端バンドパターンの違いはTDP-43の重合様式の違いによるものと考えられる。ALS患者脳の不溶性TDP-43を凝集核とし、細胞内にTDP-43の凝集体を効率よく作製することに成功した。これらは患者脳における異常TDP-43の封入体と極めて類似し、患者脳の異常を再現するよい細胞モデルといえる。マウス脳ではPGRNの発現低下によりALSおよびFTLD患者脳に出現する細胞内封入体の構成成分であるp62の蓄積が生じた。TDP-43 proteinopathyモデルマウスの確立が急務である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128016Z